採択プロジェクト

2026年3月31日

  • 加速支援

子どもを中心とした課題リスク発見・支援と地域資源拡充の 統合エコシステム構築

プロジェクト名

子どもを中心とした課題リスク発見・支援と地域資源拡充の統合エコシステム構築

代表者

山野 則子(現代システム科学研究科) ※2025年度時点

共創メンバー(※以下、所属についてはすべて2025年度のものです)

学内

氏名 所属
中島 智晴 情報学研究科
黄瀬 浩一 情報学研究科
石丸 翔也 情報学研究科
小林 哲 経営学研究科
宮本 貴朗 情報学研究科
北垣 和彦 企画部企画戦略課
曽根 裕文 URAセンター

学外

氏名 所属
下村 聡 株式会社EDUCOM
小久保 知成 パナソニックコネクト株式会社 西日本営業部
松谷 頼人 株式会社アットマーク・ソリューション
川口 一八 TOPPANデジタル株式会社 地域創生ビジネス推進部会津オフィス
竹森 洸征 takeforest株式会社
吉田 真治 大阪府福祉部
芳野 和宏 大阪府教育庁市町村教育室
狩野 俊明 大阪府スマートシティ戦略部

活動内容

本加速支援期間(2025年度)においては、子どものリスク・課題の早期発見と包括的支援の実現に向け、技術開発、人材育成、事業化準備、共創基盤の形成に関する取り組みを段階的かつ相互連関的に実施した。

第一に、「子どものリスク・課題の発見・支援パッケージ」α版の検討として、関係企業との検討会議を複数回実施した。また、学校における児童生徒のスクリーニングデータ(33項目の観察値)を入力として受け取り、機械学習モデルにより21カテゴリの対応方法(支援分類)を確率値で判定するAIモジュールの開発を進めた。あわせて、株式会社EDUCOMの校務支援システムとYOSSの統合・社会実装を見据えたJSTプロジェクトへの申請準備を行った。

第二に、地域資源との接続に向けては、大阪府が運営するORDENとの連携のもと、こども食堂・学習支援施設・相談支援センター等、子どもの健全育成に資する地域資源情報の収集・整理に取り組んだ。

第三に、人材育成については、YOSSマイスター養成講座を2025年8月および12月の計2回開催するとともに、学校コラボレーション講座「フライデーナイト」を前期・後期あわせて全12回実施した。これらの講座では、理論的背景の理解に加え、実務における会議運営や支援策立案のプロセスを重視した内容とし、教育・福祉・行政関係者が実践的に学ぶ機会を提供した。

第四に、資金調達手法の検討として、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)の活用可能性について、関係者との意見交換や制度的枠組みの整理を行い、成果指標の設定、評価手法、インセンティブ設計等に関する基礎的検討を実施した。

第五に、事業化に向けた取り組みとして、当初想定していた株式会社(ベンチャー)ではなく、公益性の観点から一般社団法人を設立した。あわせて、未導入自治体へのヒアリング調査、顧客候補の整理、営業資料の作成等を通じて、導入に向けた営業基盤の整備を進めた。

第六に、「こどもの未来共創サミット」等の共創イベントを2回開催し、のべ130名以上の参加者に対して、学校・地域・民間事業者が参加する対話の場を創出することで、関係構築および連携可能性の検討を行った。

活動成果

本支援を通じて、子ども支援に関する取り組みは、個別の試行的検討の段階から、社会実装を見据えた統合的基盤の形成段階へと大きく進展した。

第一に、EDUCOMの校務支援システムとYOSSの統合・社会実装をテーマとしたJSTプロジェクトに採択され、約7,000万円規模の外部資金を獲得した。これにより、実証および実装に向けた具体的フェーズへと移行するための財政的基盤が確立された。

第二に、地域資源情報の収集・整理の成果として、こども食堂・学習支援・若者自立支援センター等を集約した「こどもつながるマップ」が大阪府公式デジタルマップとして公開・実装された。府民がスマートフォン・PCから実際に利用できる形での社会実装が実現した点は、行政との協働モデルの具体的成果として特筆に値する。今後のYOSSとの連携においても、学校現場で支援が必要と判断された子どもに対して地域資源を接続する重要な基盤となる。

第三に、人材育成プログラムの継続的な実施を通じて、教育・福祉・行政を横断する実践的人材の育成とコミュニティ形成が進展した。現場における支援実践の担い手が着実に拡大するとともに、分野横断的な協働の基盤が醸成された。

第四に、SIBの検討を通じて得られた知見が、CSVの観点を踏まえた研究構想へと発展し、基盤研究(A)の採択に至った。当初想定していた5市・総額5億円規模のSIB組成には至らなかったものの、中長期的な研究開発の推進基盤が確立された。

第五に、公益性を重視した組織形態として2025年4月に一般社団法人を設立したことにより、YOSS事業のサポートを担う実行主体が明確化された。大学における研究機能と社会実装を担う事業機能を適切に分離しつつ連携させる体制が確立されたことは、持続可能な社会実装モデルの構築に向けた重要な基盤となる。

第六に、共創イベントの開催により、産官学の関係者間のネットワークが形成され、共同プロジェクト創出に向けた土壌が整備された。単発的な連携にとどまらず、継続的な協働関係の構築が可能となった。

以上の成果により、本プロジェクトは構想段階から実装準備段階へと確実に移行し、社会実装に向けた実効性の高い基盤を確立した。

活動内容を発表する山野教授

山野 則子教授

概念図

概念図

今後の活動計画

今後は、本支援により構築された基盤を踏まえ、「研究開発の深化」と「社会実装の加速」を両輪として取り組みを推進する。

研究室としては、JST「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(SOLVE for SDGs)」や基盤研究(A)を中核に、YOSSを中心とした子ども支援モデルの高度化を図る。具体的には、教育・福祉・健康データの統合分析手法の精緻化、AIモジュールの開発、支援効果の可視化および定量評価に向けた指標設計を進める。また、複数自治体との連携による実証研究を展開し、モデルの汎用性および再現性の検証を通じて、学術的知見と社会実装の接続を強化する。

一方、一般社団法人としては、YOSSの社会実装を担う主体として、自治体導入の拡大と運用支援体制の確立を推進する。校務支援システムとの連携実装、「こどもつながるマップ」を活用した地域資源ポータルの運用拡大、導入自治体への伴走支援、研修プログラムの提供を通じて、現場における実装モデルの確立を図る。

また、産官学連携の枠組みを強化し、企業・自治体・研究機関との共同研究および実証事業を拡充することで、広域的な展開を視野に入れた事業モデルの確立と社会実装のスケール化を図る。

これらの取り組みが実現した際に期待されるソーシャルインパクトは多岐にわたる。

第一に、YOSSの早期スクリーニングと地域資源との接続により、従来は見過ごされがちであった子どものリスクを早期に発見・対応することで、不登校・虐待・貧困等の深刻化を未然に防ぐ効果が期待される。第二に、教育・福祉・行政にまたがる分断された支援体制が一元的に統合されることで、支援の漏れや重複を解消し、限られた社会資源のより効率的な活用が可能となる。第三に、早期発見・早期介入の実現により、長期的な福祉・医療費等の社会的コストの削減に寄与するとともに、子どもの将来的な自立・社会参加の促進を通じた人的資本の向上が見込まれる。第四に、分野横断的な支援人材の育成と実践コミュニティの形成を通じて、地域全体で子どもを見守る社会基盤が醸成され、「子どもを社会全体で育てる」という共創型の地域モデルが全国に普及することが期待される。