採択プロジェクト

2026年3月31日

  • 加速支援

クリーンな空気による感染症に強い都市づくり

プロジェクト名

クリーンな空気による感染症に強い都市づくり

代表者

山﨑 伸二(大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科)

共創メンバー

【学内】

氏名 所属
掛屋 弘 大阪国際感染症研究センター/医学研究科
金子 幸弘 大阪国際感染症研究センター/医学研究科
堀江 真行 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
日根野谷 淳 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
畑中 律敏 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
アワスティ・シャルダ・プラサダ 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
綿野 哲 大阪国際感染症研究センター/工学研究科
秋吉 優史 大阪国際感染症研究センター/工学研究科
朝田 良子 大阪国際感染症研究センター/工学研究科

【学外】

氏名 所属
朝野 和典 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所
島崎 数喜 ダイキン工業株式会社
佐藤 知子 株式会社Local Power
向田 祐樹 株式会社Local Power
三浦 孝典 大幸薬品株式会社
Do Thai Hung ニャチャン・パスツール研究所(ベトナム)
  • 鉄道事業者

活動内容

    1. 鉄道車両空間内がどの程度微生物に汚染されているかについて調べた。空間中にどのような細菌、ウイルスが存在するのかを空間中の空気を回収する方法とエアコンフィルターの埃を培養法とメタゲノム解析により調べた。また、プラズマクラスター搭載車と非搭載車では検出された細菌数に有意差が認められるのかどうかを調べた。検出される細菌やウイルスに季節性があるのかないのかについても調べた。検出された細菌はどのような菌種であるかについても調べた。
    2. 室内環境に於けるエアロゾル挙動を評価する場合、実験だけではなく計算機シミュレーションによる評価が不可欠であるが、実験体系とのマッチングが取れていなかった。具体的には、評価装置の吹き出し口付近は気流が複雑であり、風速計による測定ではシミュレーションの際の境界条件を与えることが困難であった。このため、シーザーシート光源と PIV ソフトウェアを導入し、ある平面を通過する気流ベクトルがシミレーションの結果と一致するか評価した。
    3. 大阪公立大学 高度微生物教育・研究センターが4月に完成した。関係者への複数回の見学会を開催し、その後、厚労省の立ち入り検査を受け、いくつかの指摘事項があり、その改善を行なった。バイオリスク委員会・実験動物安全委員会への施設認定申請を行った。2月に動物実験の申請を行い、承認を得た後、3月からSARS-CoV-2株の実験動物に対するLD50を決めるための実験を開始した。
    4. ダイキン工業とは、6回打ち合わせを行い、社会実装を見据え様々な角度から議論を進めてきた。環境・コストに配慮し、またビジネスモデルに配慮した戦略について検討し、ダイキン工業単独では対応できない部分については他社の協力得ることとなり、株式会社島津製作所や株式会社ダルトンなどにも議論に加わってもらった。病室や高齢者施設のみならず、様々な閉鎖空間での使用についても議論した。
    5. ベトナムのニャチャン・パスツール研究所を訪問し、大阪国際感染症研究センターの構成や活動について紹介し、我々が取り組む空間中の病原体の不活化法の共同研究を依頼し、また、共同研究ラボの設置を依頼した。
活動内容を発表する野村教授

山﨑 伸二教授

活動成果

    1. 鉄道車両空間内がどの程度微生物に汚染されているかについて調べた結果、空間中の細菌は、プラズマクラスター搭載車と非搭載車では検出される細菌数に有意差は認められなかった。また、車両空間中で検出される細菌は夏場に多い傾向が認められた。検出された細菌はヒトの皮膚常在菌(ブドウ球菌やミクロコッカス属菌)や土壌細菌(バシルス属細菌)であり、菌種レベルでヒトに日和見感染を引き起こす細菌が含まれていたが、ヒトに強い病原性を示す菌は検出されなかった。しかしながら、エアコンのフィルターの埃から薬剤耐性遺伝子やウイルス遺伝子が検出され、空間中を薬剤耐性菌や病原性のあるウイルスが浮遊している可能性が考えられ、免疫力の低下したヒトにはリスクがあることがわかった。
    2. 計算機シミュレーションと実験系とをマッチングさせることにより、エアロゾルの動的挙動を正確に解析することが可能となった。コロナ陽性者を模倣した人体模型から排出されるエアロゾルの動的挙動を正確に解析することが可能となった。また、ウイルスの個数濃度から、室内空間における局所的な感染確率を算出することに成功した。
    3. 高度微生物教育・研究センターが完成し、厚労省の立ち入り検査後の指摘事項の改善を行い、最終的に厚労省から使用許可が下りた。具体的な指摘事項として、内部が観察できるカメラの設置、ねずみ返しの設置や立ち入り制限に関わる表札などがあったが、全て対応した。バイオリスク委員会・実験動物安全委員会への施設認定申請・承認、動物実験の申請・承認を得て、3月からSARS-CoV-2株の動物に対するLD50を決めるための実験を開始した。
    4. ダイキン工業とは、現在までに6回打ち合わせを行い、社会実装を見据え様々な角度から議論を進めてきた。環境・コストに配慮し、また、ビジネスモデルに配慮した戦略について検討し、株式会社島津製作所や株式会社ダルトンなどにも議論に加わってもらい、病室や高齢者のみならず幅広い空間での使用や病原体検出センサーを開発し、センサー付きの新規空気清浄機の開発について検討することとなった。
    5. ベトナムのニャチャン・パスツール研究所を訪問し、大阪国際感染症研究センターの構成や活動について紹介し、我々が取り組む空間中の病原体の不活化法の共同研究を申し出て、承諾してもらえた。さらに国立大学法人長崎大学が保有するような大阪公立大学ラボの設置を依頼し、こちらも承諾を得た。

概念図

概念図

概念図

概念図

今後の活動計画

クリーンな空気による感染症に強い都市づくりプロジェクトは、①幅広く様々な閉鎖空間あるいは人が密集する空間にどのような病原体が存在するかをモニタリングし、②病院、高齢者施設や保育園、幼稚園、学校など易感染性宿主が集まる空間を感染症に罹患しにくくするための換気法、空間除菌法を構築することを目指している。

そのためには、今後、(1)病室や高齢者施設などの易感染性宿主がいる空間中の病原体をモニタリングし、(2)数理シミュレーションによる空間中の病原体微粒子の挙動を解析し、それらを喚起で排除、あるいは何らかの不活化法で病原体粒子を排除する効率的な方法を構築し、(3)高度微生物教育・研究センターを用いて、動物実験で塩素系消毒薬の噴霧が動物間の感染を阻止できるかどうかについて明らかとする。(4)企業との共同で病原体検出センサーを開発し、空気清浄機等と組み合わせ環境とコストに配慮した装置を開発し、(5)ベトナムのニャチャン・パスツール研究所と連携し、実空間での空間除菌について証明していく予定である。これらを事業化することができれば、日頃から感染症にとらわれず、人々が自由に行動することが可能となる。また、入院病棟や高齢者施設での感染リスクを軽減でき、易感染性宿主や医療関係者にとって朗報となる。 また、幼稚園や学校などにも適用することで学級閉鎖の軽減や、感染症を自宅に持ち帰り、家族にうつすリスクも軽減することができる。その結果、働き手となる成人が感染症に罹患し、職場を休むことも少なくなり、社会活動の維持や経済的にも大きなメリットがある。さらに、ベトナムで実装実験を展開することで、本技術をベトナムに導入することも容易となる。さらにベトナムからASEAN諸国、さらにはわが国を含む先進国にも拡大することが可能となり、大きなビジネス展開が期待できる。