Disease and Treatment
疾患と治療
食道はのど(咽頭)と胃の間をつなぐ筒状の臓器で食物を胃に送る働きをしています。われわれ食道外科チームは、食道に発生する食道癌をはじめとする食道疾患に幅広く対応し、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供することを目指しています。食道癌は、診断から治療、さらに術後の生活支援に至るまで、多角的かつ高度な医療を必要とする疾患です。われわれのチームでは外科的治療を中心に、他科との連携による集学的治療を行うとともに、歯科、栄養サポートチーム、リハビリテーション科など多職種との協力を強化することにより、手術の安全性向上や合併症の予防、治療後の生活の質の改善に取り組んでいます。
また、治療方針は患者さんの病状や全身状態、社会的背景を十分に考慮し、カンファレンスによる検討を経て決定しています。その結果、最新の知見に基づいた質の高い医療を、個々の患者さんに合わせて提供することが可能となっています。私たち食道外科チームは、常に患者さんに寄り添い、安全で確実、そして温かみのある医療を実践してまいります。
胃外科では、胃がんのほか、GISTなどの粘膜下腫瘍に対する手術療法に加え、最近では、高度肥満症に対する減量代謝改善手術もおこなっております。当科では、チーム医療を大切にし、胃外科医だけでなく、消化器内科医、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士など、患者さんの治療に関わるすべてのスタッフの連携をはかり、最善の治療を提供できるよう心がけています。胃の手術後は、体重減少があり、食事制限も必要となることがありますが、入院中だけでなく、術後外来通院中にも定期的に栄養指導をおこない、食事や栄養状態について医師や管理栄養士に相談できる体制を整えています。
また、胃がんやGISTに対する薬物療法にも積極的に診療をおこなっております。当院にはがん薬物療法専門医が在籍しており、定期的なカンファレンスを開催することで、抗がん剤治療についても最新のエビデンスに基づいた治療を提供しています。
近年、胃がんの治療は手術が高難度化し、抗がん剤治療も複雑化していることを背景に、2022年から日本胃癌学会により施設認定制度が開始となりました。当院は2025年9月現在、認定施設Aに認定されており、豊富な診療実績や専門医のもと質の高い胃がん治療を提供しています。
大腸は小腸から肛門まで続く消化管の終末部に位置し、水分や電解質を吸収して便を形成・排出する重要な役割を担っています。われわれ下部消化管チームは、大腸がん・直腸がんを中心とした悪性疾患に加え、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、憩室疾患や良性腫瘍など多様な疾患に対して高度な治療を行っています。
大腸がんは日本で最も罹患数の多いがんの一つであり、早期例には内視鏡治療が選択されますが、進行例では外科手術と抗がん剤・放射線治療を組み合わせた集学的治療が必要です。特に直腸がんの手術は、骨盤深部という限られた空間での操作が求められ、根治性と排尿・性機能、さらには排便機能の温存を両立させる高度な技術が必要です。われわれはロボット支援手術や鏡視下手術を積極的に導入し、低侵襲で高精度な治療を実現しています。
また、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IPAA)や、難治性クローン病に対する外科治療など、炎症性腸疾患に対しても消化器内科と密接に連携しながら最適な治療戦略を提供しています。さらに臨床研究や基礎研究にも力を入れており、全国規模の多施設共同研究や腫瘍微小環境に関する先端的研究を通じて、新たな治療法の開発にも取り組んでいます。
当グループは、安全性と根治性、そして術後の生活の質を重視し、多職種チームと協力して患者さん一人ひとりに最適な医療を提供することを使命としています。