課程長・課程運営責任者の挨拶
社会の予防・治療を実践する看護の力
〜感染対策と感染症診療を架橋するCNICの育成〜
課程長 兼 課程運営責任者 掛屋 弘
(大阪公立大学 大阪国際感染症研究センター長 兼 人材育成部門長)

2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、医療現場に立つ私たち一人ひとりに、かつてない緊張と葛藤、そして大きな責任を突きつけました。患者さんを守ること、仲間を守ること、そして自分自身を守ること、そのすべてを同時に求められる日々のなかで、感染症は決して一つの病室の中だけで完結する問題ではなく、地域全体、さらには社会そのものと深く結びついた課題であることを、多くの医療従事者が実感されたのではないでしょうか。
近年、CNICの役割は大きく改訂されました。対象は目の前の患者にとどまらず、患者・家族・医療従事者、さらには地域社会へと広がり、実践・指導・相談の活動範囲も一層拡大しています。感染管理はもはや施設内に閉じた業務ではなく、地域医療や社会と連動しながら展開される高度な専門実践であることが明確に示されたのです。
本課程は、特定行為を視野に入れた課程として設計されており、特定行為研修を通じて、より高度な判断力と実践力を養います。とりわけ抗菌薬適正使用(Antimicrobial Stewardship)においては、感染管理の視点と臨床的視点を併せ持つの役割は今後ますます重要になります。感染対策の徹底に加え、適切な培養採取、治療効果の評価、薬剤選択への助言など、感染症診療の質そのものを支える存在としての活躍が期待されています。
大阪公立大学大阪国際感染症研究センター(OIRCID)は、感染症を「社会の疾患」と捉えています。医学的対策にとどまらず、貧困や差別、格差といった社会的要因にも目を向け、それらを含めて克服していくことを“社会の予防・治療”と位置づけています。この視点は、日々の看護実践のなかで患者さんの生活や背景に寄り添ってきた看護師だからこそ、深く理解し、現場で体現できるものです。
こうした理念のもと、OIRCIDは日本看護協会の認定を受け、感染管理認定看護師教育課程課程(特定行為研修を含む)を開設しました。本課程では、科学的根拠に基づく感染管理の知識と技術を体系的に学ぶとともに、感染対策と感染症診療を架橋する視点を養います。そして、現場で迷ったときに立ち止まり、考え、周囲を巻き込みながら前へ進む力を育むことを大切にしています。
将来のパンデミックは、いつ起こっても不思議ではありません。その備えとして最も重要なのは、平時から感染対策と感染症診療の質を高め続けることです。本課程での学びが、皆さまの看護をより確かなものとし、そしてご自身のキャリアを新たなステージへと導く契機となることを、心より願っています。