動物社会学研究会のご案内

2025年12月22日

  • 研究会(2025年度)

第6回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第6回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2025年12月26日(金) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟108会議室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

Neolamprologus pulcherの顔識別能力は知覚的狭小化によって身近な顔模様に特化するのか? 河田 真輝(M2)

知覚的狭小化とは、乳幼児期のヒトの幅広い刺激を識別する能力が、発達とともに特定の情報(見慣れた顔、母語の音)に特化し、それ以外の刺激の識別能力が失われる現象である。ヒトの幼児は生後半年まで異人種やサルの顔識別ができるが、その後は自人種の識別に特化する。しかし、ヒト以外の個体識別能力の発達過程は未解明な部分が多い。カワスズメ科魚類Neolamprologus pulcher(プルチャー)は、初対面の「未知個体」と隣接する「既知個体」とを顔の模様で個体識別し、dear-enemy関係を築く。また、顔の模様に地域変異があり、異人種効果が知られている。本研究ではプルチャーのdear-enemy関係を応用し、孵化仔魚を異なる社会環境で育てることで、見慣れた顔に特化するかどうか検証した。まず、プルチャーの仔魚を、同地域個体・別地域個体・他種個体・空の水槽を提示する4条件で3ヶ月育てた。次に、稚魚に顔の模様が発達した段階で、同地域・別地域・他種群それぞれの既知・未知個体の写真を提示し、攻撃時間の違いを調べた。その結果、同地域・別地域・他種群は見慣れた顔模様に特化しなかったが、他個体により攻撃的に振舞った個体ほど、既知よりも未知をより多く攻撃する傾向が見られた。一方、空水槽群では既知と未知への攻撃時間に違いがなかった。以上より、他個体を見る機会の阻害が、稚魚の顔認知能力の発達に負の影響を与えることが示唆された。また、実験結果より、本種は同地域個体や資源を奪い合う他種の見た目や関係性の情報などを先天的に持ち、別地域の個体情報は先天的に持たない可能性が考えられた。空水槽群が通常よりも攻撃的になったことは、隔離飼育したラットの先行研究と一致していた。研究会では以上の結果を詳細に紹介し、魚類における知覚的狭小化について議論する。

ハリヨの弁別学習過程を観察するための実験系の考案と正答率の推移 清水 詠多(B4)

ヒト以外の動物の行動の多くは、生得的解発機構や刺激と報酬の強化による連合学習のような固定的な仕組みにより決定されると考えられてきた。しかし近年、鏡像を自己と認識する鏡像自己認知の能力が魚類でも示され、自分の意思で行動する能力が脊椎動物に広く備わることが示唆された。動物が自分の意思で行動できるのなら、連合学習過程においても、ヒトのように刺激と報酬の因果関係を理解して突然「ひらめく」可能性がある。しかし、従来の学習研究では、複数個体の平均正答率の推移に基づいて学習を漸進的な過程として解釈してきたため、個体ごとの急激な変化は見落とされてきた可能性がある。よって学習過程における個体レベルでの行動を詳細に解析する研究が必要である。動物行動学のモデル生物として有名なトゲウオは、近年、鏡像自己認知の能力を持つことが当研究室にて実験的に示され、これまで考えられてきた以上に高い認知能力を持つことが示唆された。本研究では、トゲウオの一種ハリヨに青色および黄色の板を選べば餌を獲得できることを習得させ、個体ごとに正答率及び行動の変遷を解析することでひらめきの検証を試みた。個体レベルで正答率だけでなく選択時間や遊泳速度などの行動に急激な変化が見られれば、動物で従来想定されてきたように徐々に学習するのではなく、ヒトと同様に因果関係を理解してひらめいた可能性を示す重大な証拠となる。研究会では、色弁別学習課題の実験装置の開発と予備的な実験結果について報告する。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

森(研究会渉外担当) sq25261i★st.omu.ac.jp


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