所属教員と研究テーマ

安房田 智司 (教授)

 魚類の繁殖戦略について研究しています。海や湖での潜水観察や川での調査など、フィールドに出て行う研究に重きを置いていますが、水槽実験や遺伝子解析、生理実験など様々な手法を取り入れて、行動・進化生態学的研究を行っています。

 最近は北の海の魚であるカジカ科魚類を対象として、雄と雌の繁殖戦略に焦点を当てて研究を行っています。雄では精子に注目し、種間系統比較分析の手法を用いて、交尾行動や保護行動の有無と精子形態の多様性との関係を調べ、精子の進化過程の解明を目指しています。雌では、ホヤやカイメン専門に卵を産む(卵寄託)種に注目し、同所的に生息する卵寄託種の種間関係やカジカとホヤ・カイメンの種間関係、そして産卵管の進化について研究しています。カジカ以外でも、奄美大島に生息する絶滅危惧種リュウキュウアユについて、保全手法の提案を目指し、生態学の観点から研究を行っています。

 大阪市立大学では、カジカやリュウキュウアユだけでなく、サンゴ礁魚類やタンガニイカシクリッドの興味深い繁殖生態や認知についても研究を進めていく予定です。

Satoshi Awata

吉川 徹朗 (准教授)

  鳥類をはじめとした動物と植物との相互作用を研究しています。動物たちは種子や花粉を運ぶことで植物の繁殖を助けて森林や草原を支えるなど、両者の相互作用は生態系の維持にも大きな役割を果たし、興味の尽きない研究対象です。研究のアプローチとしては、フィールド調査を基本としつつ、文献などの既存データの活用、DNA分析や化学分析など幅広い手法も取り入れて進めています。

  現在、集中的に研究しているのは、毒をもつ植物と、その毒に耐性をもつ動物との相互作用です。これまでの調査から、シキミなどの植物は猛毒を持つにもかかわらず、鳥類・哺乳類・昆虫など、思いがけず多くの動物と関係をもっていることが見えてきました。こうした特異な相互作用がそれらの動物の生態と進化にどのような影響を与えているのか、さらには生物群集にどのように波及していくのかについて解明を進めています。

  また気候変動および都市開発などの人間活動が生物群集やその中の生物間相互作用に及ぼす影響についても研究を進めています。動物・植物双方を対象として、応用生態学な観点も取り入れ生物多様性の保全につながる成果を目指しています。

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Tetsuro Yoshikawa

幸田 正典 (特任教授)

 アフリカのタンガニイカ湖の魚や珊瑚礁魚などを主な対象に、ダイビングをしたり、研究室で水槽実験をしたりして研究しています。モットーは、独創的な発想や着想による面白い研究をすることです。

 最近の主な研究テーマは、(1)意思決定、認知様式や洞察力など(行動)、(2)魚類の繁殖戦術や共同繁殖(動物社会)、さらに(3)種多様性の高い熱帯水域での多種共存機構(群集)、の解明です。非血縁ヘルパー(協同的一妻多夫)を伴う共同繁殖魚3種は、我々が魚類では世界で始めて発見し、かつ実験により雌による父性の操作の重要性を示したものであり、世界的に注目されています。現在はこの魚を使い、魚の洞察力を調べています。Aが自分より強い魚BがCに負けるのを見ただけで、Cが自分より強いとAは認識できるのです。このような洞察力は類人猿やイルカでは知られていましたが、種類によっては魚もこのくらいできるのです!

 面白いテーマはいくつでもあります.興味がある方はどうぞご連絡ください.

Masanori Kohda

特任教員

近藤 湧生(特任助教)

 雄が状況に応じて1回の配偶あたりの射精量を調節する繁殖戦略は「精子配分戦略」(Sperm allocation)と呼ばれます。これまで、ミナミメダカをモデルに体外受精種である魚類の精子配分戦略について行動生態学的な視点から研究をしてきました。今後は、モデル生物であるメダカの利点を活かした生理学や遺伝学的な手法を取り入れたアプローチやメダカ以外の魚種を使った精子配分戦略の検証実験を進めることで、「有限な精子」という制約がもたらす生物の生き様を知りたいと考えています。 興味のある方は気軽にご連絡ください。