動物社会学研究会のご案内
2024年1月8日
- 研究会(2023年度)
第7回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第7回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2024年1月13日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
Neolamprologus pulcherは概念を持っているのか? 〜そして「動物が概念を持つ」とは?〜 安藤 芳人(M1)
概念とは物事を抽象的に捉えたもので、概念を扱う者はあらゆる事象に対し一般的にあてはまる事実を導き(帰納)、この事実を使い個々の事象に対し推測を立てる(演繹)。個体がある瞬間に捉える刺激の種類は膨大で、かつ様々な原因により次の瞬間には先ほどとは異なる膨大な種類の刺激を捉える。このような状況では、帰納・演繹によりある物事に対する経験を別の物事に応用する必要がある。これはヒト以外の動物にも言え、実際様々な種が概念を持つことが報告されてきたが、対象個体の行動が学習・般化で生じた可能性を否定できず、概念を真に示した例はないと言える。Neolamplorogus pulcherは他個体に対し個別に応答を変えるが、これは他個体の概念を持つからだと考えられている。だが相手の各姿を個別に学習・般化した可能性もある。もし各姿を異なるが同じものと抽象的に捉えることを示せたなら概念を持つと言える。そこで、対象個体に他個体Aの全身を1週間遠目に見せた後、Aの右半身の写真にDear Enemy(DE)を作らせ、次に①Aの右半身、②Aの鰭を立てた左半身、③他個体Bの右半身の写真を見せた。対象がDE前にAの姿を学習した場合、③のみに攻撃し、DE後に学習した場合、①に攻撃せず②、③には攻撃するだろう。Aの姿概念を持つ場合、①、②に攻撃せず③に攻撃するが、鰭を立てた②には①と違い若干警戒を示すと予測される。結果、本種は①に攻撃せず③には高い攻撃性を示したが、②には初めだけ攻撃しすぐにやめた。この結果は本種がAの右、左半身を個別に学習・般化したのではなく、異なるが同じものと抽象的に捉えたことを示唆する。
大阪の都市緑地に生息する鳥類相の長期的な変化 〜2000年と2022年の比較〜 寺嶋 健(M1)
都市における生物の分布と環境との関係性を明らかにすることは、動物生態の解明においても都市生態系の保全においても重要である。また都市内にある緑被や都市の構造的構成は時間とともに変化する動的なものであるため、時間が都市生物の個体数やコミュニティに与える影響も考慮する必要がある。すなわち時間的な変化どのような規模で、生物種それぞれの分布にどのように影響を与えるかを明らかにすることが重要である。本研究では都市生態系の基盤となりうる都市緑地に注目し、鳥類相と都市環境の関係性とその長期変化の分析を目的とする。2022・2023年に大阪の都市緑地120か所において繁殖期の鳥類の生息状況を調査し、先行研究である橋本ら(2003)の2000年のデータを比較対象として、鳥類相と都市環境の関係性の変化を分析した。分析にあたり、緑地の環境要因に加えて周辺環境の影響も考慮するために緑地周辺の様々な距離内のバッファにおける環境要因も定量化した。これらを説明変数とし、各鳥種の在不在を応答変数とする一般化線形モデルを構築してモデル選択を行うことで、鳥類が最も影響を受けている環境要因と空間スケールを各年について検討した。各空間スケールの景観要素を変数としたモデル選択の結果、時代間で鳥種の生息を説明する要因や影響を受ける空間スケールが種ごとに変化していることが示された。本発表ではこれに加えて、2022年度冬季の調査データに基づき、繁殖期と越冬期の鳥類相の比較も行って議論する。
過去の研究会の発表者と発表要旨
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