動物社会学研究会のご案内

2024年1月29日

  • 研究会(2023年度)

第10回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第10回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2024年2月3日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

従来の手法と鏡を用いた新手法によるホンソメワケベラを用いた魚類において初となるメタ認知の検証 小林 大雅(D2) 

 自分の知識や記憶、自信の有無などを自覚する能力であるメタ認知は言語を用いた思考ができるヒトを象徴する認知能力であると考えられてきた。しかし、自分の判断の確信度に応じて選択を変えられるか検証する uncertainty monitoring や自身の知識や記憶に応じて、必要な情報を求められるか検証する information seeking などの行動からメタ認知の介在を探る方法が確立され、イルカやアカゲザル、類人猿、カラスなど一部の哺乳類や鳥類はメタ認知能力を持つことが示唆された。ところが、他の脊椎動物では検証の試みすらほとんど行われていない。ホンソメワケベラは魚類で初めて自己鏡像を自己と認識する鏡像自己認知できることが明らかにされ、自己意識を持つことが示唆された。本種は自分の内的認知状態を把握することを要し、鏡像自己認知と並び自己意識の証拠のひとつとされるメタ認知の最適な研究対象である。本発表では、ホンソメワケベラを用いて魚類で初めてメタ認知の検証を試みた 2 つの実験を紹介する。1 つは昨春にグレートバリアリーフに位置するリザード島の研究施設で行った uncertainty monitoring である。もう 1 つは鏡像自己認知ができたホンソメワケベラが自分の体長の記憶に対する自信に応じて行動を調節できるか検証する鏡像自己認知を応用した新手法である。どちらも現在進行中の経過報告であるが、複数のアプローチで検証することにより、魚類にもメタ認知を持つ種が存在することをより確かに示すことができる。また、後者の手法は自己心象に基づいたメタ認知の検証であるため、ヒト以外の動物で初めて最高次の自己意識とされる内省的自己意識を持つ可能性にも言及でき、自己意識の進化を解明する上で重要な成果をもたらすことが期待される。

シオマネキにおけるproto metacognitionの可能性 村上 久 (ゲスト:京工繊大) 

 自己意識や反省的意識はヒトを特徴づけるとされてきたが、近年では霊長類をはじめいくつかの分類群もこれらを持ちうると考え始められている。「人間のような」高次の認知の有無をテストする課題に特定の動物はパスできると考えられている。しかし「人間のような」認知の有無を問うのではなく、その進化的起源を辿るには動物の身体を含む生態学的コンテクストを踏まえた実験が必要ではないか。本研究ではシオマネキというカニを対象とし、社会行動と空間認知の関係を検証する実験から、そのヒントを探る。実験の結果としてこのカニは、巣穴位置に関する2種類の記憶(運動に直結する記憶とそれを評価するシステム)を持つことが示唆されている。ここから空間認知と社会行動の共進化の果てに原初的なメタ認知が出現してきた可能性を議論する。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

安藤(研究会渉外担当) se23697g★st.omu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。