動物社会学研究会のご案内
2024年2月6日
- 研究会(2023年度)
第11回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第11回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2024年2月10日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類の鳴音の記載とその役割の解明 井上 諒一(D1)
動物はディスプレイや化学信号など様々な方法を利用して、他個体に情報を伝えている。陸上動物は、音声を使って単純な情報だけでなく、餌の位置や捕食者の接近など、より複雑な文脈も伝える。水中では音の伝達効率が非常に高く、音声は視界が制限されるような環境においてその威力を発揮するため、水棲生物が音声を活用する利点は大きいと予測される。近年魚類が様々な音声(以下:鳴音)を有することがわかってきたが、研究例は少なく、コミュニケーションに音声を用いているかは不明である。魚類は脊椎動物の中でも祖先的な分類群であり、高度な認知能力や複雑な社会を有するため、音声コミュニケーションの進化史を俯瞰する上で魚類の音声研究は重要である。タンガニイカ湖固有のカワスズメ科魚類は、その婚姻形態や子育ての多様性から、脊椎動物の社会進化を考える上でのモデルシステムであるが、鳴音に関する研究はほとんど存在しない。そこで、タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類の鳴音の特徴や生態的な役割を調べるため、2023年8月から12月にタンガニイカ湖で野外調査を実施した。今年度は、これまで知られていた8種に加え、新たに7種のカワスズメ科魚類の鳴音の録音に成功した。これらの種では、鳴音は威嚇や突進、求愛などの特徴的な行動と同時に発せられていた。本研究会では、7種の鳴音の音響特徴の紹介に加え、鳴音がどのような役割を持ち、生態や行動と関わっているのかについて議論する。
協同繁殖魚Julidochromis ornatusのサイズヒエラルキー社会 安房田 智司
東アフリカ・タンガニイカ湖固有のカワスズメ科魚類は、婚姻形態と子育てが最も多様化した魚類の一つで、その多様性と進化の研究はヒトを含めた高等脊椎動物の社会を理解する上で極めて重要である。魚類では珍しく稚魚が大きくなるまで子育てするため、婚姻形態と子育ての関係は鳥類と良く類似している。実際、鳥類でよく知られる協同繁殖は魚類ではタンガニイカ湖産魚類で主に知られ、その中でも極めて珍しい共同的一妻多夫で繁殖する種がいる。Julidochromis属はこのような珍しい魚類の一つで、最大サイズが雌であったり、性役割が逆転する傾向があったり、一夫一妻での繁殖グループも半分ぐらい出現したり、タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類でも珍しい特徴を持つが、一方で、同様の婚姻形態を持つ鳥類とはよく似た特徴である。その中でも、Julidochromis属はサイズヒエラルキー社会を持ち、共同的一妻多夫であっても一夫一妻であってもサイズ差(サイズ比)が繁殖するメンバーで一定に保たれている。この特徴は、体サイズが力関係に影響する動物全般に当てはまり、クマノミやダルマハゼのグループでもサイズによる順位が社会の維持に重要であることが示されている。本発表では、Julidochromis ornatusのサイズ差(サイズ比)を詳細に検討するとともに、順位、成長、繁殖、個体の入れ替わり、個体間のaggressionやsubmissionから、本種のサイズヒエラルキー社会の維持機構について考えてみたい。
過去の研究会の発表者と発表要旨
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