動物社会学研究会のご案内
2025年12月10日
- 研究会(2025年度)
第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2025年12月13日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟108会議室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
都市化勾配に沿ったエノキの鳥散布プロセスの変化:地域間・年度間での比較 馬場 新千花(M2)
現在、世界的に進行する都市化は動物群集の多様性や種組成を変化させ、種子散布や花粉媒介といった動植物間の相利的相互作用にも影響を与えている。都市化に伴う散布者群集の変化は示されてきたが、その機能形質の変化に関連する散布プロセスの変容は十分に解明されていない。本研究では、都市化が種子散布者の群集構造と散布プロセスに与える影響を明らかにするため、鳥散布樹木エノキ Celtis sinensis を対象に、2024 年と 2025 年の結実期に、大阪府の北部と東部の都市部から山地に位置する結実木計 94 個体を直接観察し、鳥類との相互作用を記録した。またこれらの地域の鳥類群集の調査として計 50 地点でポイントセンサスを行った。その結果、都市化強度の増加に伴って周辺に生息する鳥類の種数は減少していたが、エノキを訪問し果実食を行った種数および訪問個体数はむしろ増加する傾向が認められた。特に都市環境では、体サイズが大きいカラス類の個体数と訪問頻度が高く、都市内の果実資源パッチに強く集中する傾向が明らかとなった。この利用集中は、散布プロセスの量的側面を押し上げる方向に働き、都市における散布強度が高まる可能性が示唆された。このことからエノキでは、都市化によって鳥類の種多様性が減少したとしても、その種子散布、特に大型鳥類による遠距離散布が強められる可能性が示唆された。さらに、本研究では年度および地域による比較も行い、都市化の影響が一様ではなく、年度的な変化や地域特性と相互作用しながら散布プロセスに影響していることが分かった。
猛毒植物シキミの葉・花・果実をめぐる節足動物群集とその多様性 坂井 俊介(M2)
陸上植物は、葉・花・果実など器官ごとに異なる微小生息場所(microhabitats)を提供し、そこには器官特異的な節足動物群集が形成される。また植物がもつ防御化学物質は植食者の利用可能性を左右し、特定の専門食者のみを許容する“生態的フィルター”として働くことが知られている。しかし、猛毒植物において、季節変動と器官差が組み合わさることで節足動物群集がどのように構造化され、どのようなダイナミクスを示すのかについては、体系的な研究がほとんどない。本研究では、毒濃度の異なる器官ごとに形成される節足動物群集の、季節ごと/部位ごとの変異を明らかにすることを目的とする。
本研究では、シキミの葉を対象に通年調査を行った。葉上群集については出現データを用いて季節および部位間の違いを解析し、希薄化曲線により潜在的多様性を評価した。花ではインターバル撮影により訪花昆虫の来訪パターンを記録し、採集した鱗翅目幼虫を羽化させることで利用者の種同定を進めた。さらに、落下種子のレアリング試験により、種子利用ギルドの構成と食害様式を明らかにした。
その結果、シキミ上には葉・花・果実・種子という器官ごとに異なる節足動物ギルドが形成され、葉では季節および部位に応じて群集構造が大きく変化することが明らかとなった。花器では双翅目や鞘翅目による時間帯別の訪花パターンが観察され、種子では複数種の鱗翅目幼虫の同定に成功した。上より、猛毒植物でありながら多様な群集が成立することが明らかとなった。
(オプション)
今後、これらの群集データに植物器官/季節ごとの毒濃度を重ね合わせることで、毒性植物が生態系内でどのように節足動物群集を“ふるい分け”、利用者の適応や季節動態を形成するのかを、より統合的に理解することが期待される。
過去の研究会の発表者と発表要旨
過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。
連絡先
森(研究会渉外担当) sq25261i★st.omu.ac.jp