物性物理学講座

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物性物理学は、一個の大きさが、オングストローム( 10-10m)スケールの原子や分子の構成要素が、~1023 個という膨大な個数集まり、人間のスケール(1m程度)に凝集した物質系を研究対象としています。このような体系は、巨視的体系(マクロな体系)と呼ばれています。巨視的体系では、個々の原子や分子の世界を支配している法則だけではとらえきれない、多彩な物理現象が観測されます。物性物理学は、このような物理現象の中から、巨視的体系に固有な基本法則、基本概念を探求する学問分野です。ここで得られた成果は、私たちの自然認識に多大な影響を与え、新しい物理学的概念の形成に寄与してきました。また、その成果の応用は、現代のハイテクノロジーの基盤を与え、私たちの生活に大きな影響を与えています。

物性物理学の研究対象は、私たちの身の周りにあるごくありふれた、鉄や銅、金や銀等の金属、ゲルマニウム、シリコン等の半導体から、ヘリウムなどの不活性ガスに至るまでの単元素物質から、水や氷、ガリウムヒ素に代表される化合物半導体、有機物質、生体物質にいたるまで、途方もなく広大です。またこれらの物質は、例えば、超低温における超伝導や超流動の発現など、置かれた環境によって様々な姿をとります。その有様を、環境を制御することによって調べることが、物性物理学の主な研究課題となります。

物質系は、光(電磁波)、電場、磁場、圧力などによる外部からの働き掛けに対して、様々な応答を示します。物性物理学のもう一つの大きな研究課題は、これらの応答を拠りどころにして、物質の構造や、物質内部でおこるエネルギー変換、緩和現象、非線形現象などを調べることです。

そのなかで、私たちの「物性物理学講座」では、素励起物理学、電子相関物理学、非線形物理学、量子動力学、生体光物理学、生体・構造物性物理学、光エレクトロニクス物理、光物性、レーザー量子物理学、超低温物理学、極限物性、分子磁性、構造物性、熱電物性、などの分野の実験的、理論的研究が行なわれています。

当研究室では、低温物性理論、特に超流動ヘリウムや冷却原子気体などの量子流体における量子流体力学、量子乱流などの研究を行っています。

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電子相関物理学研究室

教員: 小栗章 教授西川裕規 講師、寺谷義道 特任助教

研究テーマ:固体中に存在する莫大な数の電子は、相互作用を通し互いに相関し、その結果として、超伝導、磁性などの相転移、および近藤効果や分数量子ホール効果などの多彩な量子状態が実現されることがこの半世紀の間に明らかになってきました。本研究室では、場の理論に基づく解析的方法、および計算機を用いた数値的方法を駆使し、多電子系の量子現象の根本に係わる問題に取り組んでいます。

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研究内容: 非線形物理学では線形な方程式では表しきれない多様な現象を取り扱います.非線形性は複雑な時系列や美しい構造など豊かな現象を生み出すことでも知られています.生き物や社会現象など,いわゆる普通の”物理”では相手にしなさそうな対象を取り扱う柔軟さもあります.研究を進める上で,理論や数値モデルも大事なツールですが,実データの解析も重要です.

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私たちは非平衡量子緩和のダイナミクスについて理論的研究を行なっています。非平衡状態とは、外界からエネルギーや粒子が物理系に流れ込み、さらに物理系から外界へ再放射される状態で、私たち人間を含めた生物系はその典型例です。わたしたちは、散逸効果を取り込んだ新しい量子論の枠組みを開拓し、非平衡状態の緩和過程を明らかにしています。特にスペクトルの特異点に起因する非平衡状態の緩和過程の特徴を明らかにしています。光と物質の相互作用の緩和過程の解明、ナノ電子系における電子移動現象、場の量子論を用いた量子真空不安定性に関する研究を行っています。

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生物物理と光流体科学の融合により、ミクロな生体物質間の相互作用と揺らぎからマクロな秩序構造が形成する過程を研究しています。特に、光濃縮による多様な生命機能の制御原理の解明から新技術創成にも展開します。

1)光濃縮のハイスループット化の原理解明とバイオ応用

2)生化学反応の光誘導加速の原理解明と生体計測

3)フォトサーマルフルイディクス(光熱流体力学)に基づく流体制御と新規物性物理

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研究内容:自然の鋳型を利用しつつ、色素構造を改変した人工の光合成色素蛋白複合体の創成、構造解析と世界最速クラスの超高速レーザー分光計測を駆使した光機能性の評価に関する研究。

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研究内容:光が主役となる半導体等の素子を動作させた際の物理を実験的に研究しています。

  1. 有機物質のLEDや太陽電池を動作させた際の電子状態変化を分光により追跡
  2. 有機LEDを動作させた際の電子スピン物性を追求
  3. 磁気共鳴計測によりスピン流の物性を追求
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研究内容:物質の光学的性質(光と物質との相互作用)を実験的に研究しています。

    1. 新機能を有する新奇光物性材料の探索と作製
    2. 光と物質との相互作用を分光学的に研究
    3. 超高速現象を対象とした光物性の研究
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レーザー量子物理学研究室

教員: 井上慎 教授、堀越宗一 准教授、加藤宏平 特任助教

当研究室では、レーザーなどを用いて絶対零度(マイナス273度)近くまで冷却した原子気体を用いて、未知の物性を探索する実験を行なっています。冷却原子気体は磁場を用いて相互作用を自在に制御できるので、さまざまな物質の量子シミュレーション実験が可能になります。混合超流動体の相分離や中性子星のシミュレーションなど、幅広い物理現象の解明に貢献する実験を行なうだけでなく、基礎物理定数の時間変化など、精密実験も行なっています。
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研究内容:絶対零度(マイナス273℃)の極限に近い超低温度で、液体ヘリウムおよび金属の性質を調べる実験研究。特に、量子統計性の異なる超流動ヘリウム3・超流動ヘリウム4中の渦・粘性・音波・核磁気共鳴(NMR)を研究。 我々の研究室では、超低温度まで冷却した超流動ヘリウムを用いて、巨視的量子凝縮相の研究を行っています。量子凝縮相はすべてのヘリウム原子が一つの波の性質へと凝縮する状態で、例えば流れの循環は波の位相が2πの整数倍に量子化されます。最近我々は、超流動ヘリウムで大きな渦の流れ(写真)を作成することに成功し、超流動の波の性質や流れの量子化の解明に取り組んでいます。

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研究内容:当研究室では 50 T という、地磁気の 100 万倍に相当する強烈な磁場を一瞬のパルス強磁場として発生し、新奇物性を探し求めています。とくに断熱消磁法による 0.1 K の極低温と 50 T のパルス強磁場の組み合わせは世界初の試みであり、その複合極限環境を実現すべく挑戦しています。研究対象は主として量子スピン系の物性研究です。

1) パルス強磁場と極低温の複合極限環境の創製

2) 量子スピン系および強相関電子系における極限環境下物性研究

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研究内容:分子の多様性・設計性を利用した様々なスピン空間構造をもつ新しい磁性体の合成と、新しい磁性現象の観測

分子磁性

当研究室では、X線結晶構造解析により求めた原子や分子、電子の空間的分布を基に、物質の物理的・化学的性質を解明する研究をしています。主にSPring-8の高輝度放射光を利用してX線結晶構造解析のためのX線回折実験を行っています。物質の結晶構造は温度や圧力、磁場などによって変化し、物質の性質や機能と深い関わりを持っています。私たちは、原子や分子の間の距離や電子分布の偏りなどを詳しく見ながら物性や機能の発現機構を調べ、物質科学の発展に貢献します。

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研究内容:我々の研究室では、物質科学から熱電変換工学にまたがる幅広い研究を様々な視点でみつめ、物事の本質を明らかにし、熱電変換技術に貢献する事を目指しています。

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