取り組み事例

2025年5月2日

  • 環境マネジメント推進室

OECMをめざして

「生物多様性の保全に向けた取り組み」

30by30目標とは?

2030年までに陸と海の30%以上を保全する目標」

30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」とは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。

202212月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、2030年グローバルターゲットの一つとして盛り込まれました。これを踏まえ、日本では20233月に「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、2030年までのネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)実現に向けた目標の一つとして30by30目標を位置付けています。

国内外の研究報告で、生物多様性保全のために30by30を目指すことが重要と指摘されています。具体的には、世界の陸生哺乳類種の多くを守るために、既存の保護地域を総面積の33.8%まで拡大が必要ということや、日本の保護地域を30%まで効果的に拡大すると生物の絶滅リスクが3割減少する見込みといわれています。

2021年現在、日本国内では、陸域20.5%と海域13.3%が保護地域として保全されています。

 OECMとは?

30by30目標のカギ、OECMOECMOther Effective Area-based Conservation Measures)は、「国立公園のような保護地域以外で生物多様性保全に資する地域」のことです。環境省では、企業の森や里地里山、都市の緑地など「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する取組を2023年度から開始しました。認定区域は、保護地域との重複を除き、OECMとして国際データベースに登録され、30by30目標の達成に貢献します。

 

30by30に貢献する本法人の施設紹介

①大阪公立大学附属植物園

1_OECM1 大阪公立大学附属植物園は、1950年に大阪市立大学理工学部附属の研究施設として発足しました。この植物園は、一から造成された森の植物園であり、自然に近い樹林を再現・展示しています。植物のコレクションは5,000種類、30,000本もあり、最も力を入れている絶滅危惧種のコレクションは、西日本産の種を中心に50種あります。そして、この植物園の最大の特徴は、北海道から九州にかけて分布する11タイプの森林すべてを見られるということです。これは世界的に見ても類まれな展示です。この樹林型展示は生物多様性の損失を防ぎ、30by30プロジェクトに貢献しています。また環境省から植物園として唯一、認定希少種保全動植物園に指定されているとともに、文部科学省から全国共同利用共同研究拠点に指定されています。重要な役割を担う本植物園では、社会的課題の一つである絶滅危惧種の保全活動に主軸を置いて、絶滅が危惧されている植物の育成に力を入れるとともに、長期モニタリングによって環境変動と植生との関係の実証的な解明に取り組んでいます。

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名波哲先生

大阪公立大学附属植物園園長

名波先生へインタビュー

生態系保全や研究でやりがいを感じることは?

植物や昆虫がもともと好きで、生き物に触れることができるところです。緑の中にいると癒されますし、体を動かすのも好きです。研究では驚くような発見ができたときにとても楽しいと感じます。

学生へのメッセージ

身近な自然に目を向けてほしい!環境保護の対象になるのは、都会から離れた自然が残った場所だけではなく、大学のキャンパス内や、公園や大通りの木々など目の前にもあります。植物だけではなく、そこに集まる生き物同士の関係性にも着目すると面白いと思います。生き物はバラバラに生きているのではなく、複雑な絡み合いの中で成り立っているので、難しいですが、そこが楽しいところでもあります。

②大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス

1_OECM5 中百舌鳥キャンパスは 47 ha の敷地面積をもち、構内には水田や果樹園のほか、多様 な樹木が植栽された緑地帯や調整池、水路などがあり、200 種以上の樹木、約 40 種の 野鳥、40 種以上のチョウ、約 20 種のトンボなどが生息しています。本法人は、この生 物相の豊かな中百舌鳥キャンパス全体を「キャンパス・ビオトープ」と位置づけ、多様な 生物でにぎわい、自然と人間活動の調和を実感できる空間の創造を目指しています。  そして、中百舌鳥キャンパスの豊かな自然は、周辺のため池や古墳群とつながって、自 然のネットワークができています。

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中谷 直樹 先生

大阪公立大学大学院工学研究科

航空宇宙海洋系専攻

OECMに登録するためには、自然が多くあるということだけではダメで、その自然を継続的に維持・管理をしていき、保全ができるかが大切です。そのために、これまで取り組んできた管理体制を整理し、自然を保全するマネジメント を確立させることが必要であります。 OECMの登録や環境報告書を通じて、キャンパスの自然を多くの学生に認知してもらうことで、もっと自然に対する関心が深まっていくと思います。

取材した感想

工学部 4 年生

附属植物園に行ったことがなかったので、この活動で行くことができて良かったです。自然を丸ごと展示しているかのような空間で驚きました。このような大学の施設がOECMに登録され、30by30目標の達成に貢献してくれることを期待しています。

工学部 4 年生

実際に植物園内を周ってみて良かったところは歩いていくご とに植生が変化していく様子を体験できたことです。日本中に散らばっているバイオームを連続して見ることができ、それぞれの特徴や違いを楽しめました。

工学部 4 年生

私は普段、杉本キャンパスで過ごしていて公立大学の他のキャンパス・施設のことはあまり知りませんでした。今回の取材を通して植物園や中百舌鳥キャンパスでの環境への取り組みを知ることができて良かったと思います。

工学部 1 年生

名波先生のお話を伺いながら植物園を周ることができ、非常に貴重な機会でした。身近な自然に目を向けて、そこにある生き物同士の関係を探ってみることの楽しさと大切さを改めて実感しました。

その他本法人の環境パフォーマンス・環境活動は「公立大学法人大阪 環境報告書2024」をご覧ください。

https://www.omu.ac.jp/assets/environment2024.pdf

該当するSDGs

  • SDGs15
  • SDGs17