ORGEL Column

2026年1月14日

文系の研究者なんて食っていけない?

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担当:おかゆ
おかゆ

会社を辞め、大学院に進学したあたりから、このような言葉を言われるようになった。

「お勉強が好きなんやねえ」「えらいねえ」

べつにお勉強が好きなわけではないので、ふだんは苦笑いで返すのだが、これを母親に言われると、どうしても昔のことを思いだしてしまう。

 中学生のときに、両親に将来の夢を聞かれて、ケルト神話の研究者になると答えた。児童文学きっかけだったか、当時、ちょっとはまっていたのだ。アイルランドも好きになって、紀行文もよく読んでいた。だから、そのまま答えたのだが、返ってきたのは怒声だった。

「文系の研究者なんて、食べていけるわけないでしょう!!」

近しい親族に研究者はいない。どうやったらなれるのかもよくわかっていなかった。それは両親もそうだったのだろう。大学院進学時も、やや反対されたので、働いて貯めたお金と奨学金でどうにかするから!と啖呵をきって勝手に進学した。なのに「えらいねえ」などと言ってくるのは、いったいどういう心境なのかと思わなくもないが、結婚したので一安心というところなのだろう。じっさい、修士課程のあいだに結婚したからか、博士課程進学については何も言われなかった。

私が大学院に進学してから、五年ほどが経とうとしている。まだ研究者になったわけではないが、その卵にはなった今の自分なら、かつての自分になんと言ってあげられるだろうか。

「大学を卒業したあと、大学院というところに進学するといいよ。」

「博士課程に行ったら、論文を書いて学会誌に投稿して、最後には博士論文を書くよ。博士論文は書籍化を目指そう。」

「大学院を卒業したあとは、非常勤講師の仕事をしたり、給付金とかに応募したりしながら、大学や研究機関での就職先を探す人が多いよ。」

「他の仕事をしながら研究を続けている人もいるよ。」

「働きながら、子育てをしながら大学院に来ている人もたくさんいるよ。」

職業研究者になるのは狭き門かもしれないけど、研究「をする」なら方法はたくさんある。たしかに、金銭面はとても大きい問題ではあるので、それが解決した方が安心して進学できるのは事実ではある。私の場合は、いざとなったら専業主婦になれるという保険と、もし離婚しても(その会社がつぶれない限り)新卒で入った会社にいつでも再就職できるという保険があるのは大きい。ほかにも、教員免許やその他専門的な資格をもっている人もいる。

だから、それ以上に大きな問題になるのは、「自分が何を研究したいか」「なぜそれを研究したいか」ということだと思う。もし、両親がとても理解があって当時から応援してくれていたとしても、私はケルト神話では研究はつづけられなかっただろう。「どうしても自分がケルト神話を研究したい」という気持ちがきっと足りなかった。私のばあいはフェミニズムとの出会いが重要だったし、それが重要だと思えるには就職するしかなかった。結果として遠回りにはなったが、必要な遠回りだったと思う。

「そのときどきで、やりたいことをやってたらいいよ。これが研究したいと思えることに出会ったら、研究の道に舵をきってもいい。いきなり大学院が難しかったら、科目等履修生とか研究生っていう制度もある。その世界にはいつでも飛び込める。」

当時の自分にはこう言ってあげたい。