採択プロジェクト
2026年3月31日
- 設立支援
学校・行政・民間との連携によるOMU人権研修プログラムの構築
プロジェクト名
学校・行政・民間との連携によるOMU人権研修プログラムの構築
代表者
廣岡 浄進(人権問題研究センター/国際基幹教育機構/現代システム科学研究科)
共創メンバー
【学内】
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 新ヶ江 章友 | 人権問題研究センター/国際基幹教育機構/都市経営研究科 |
| 坂東 希 | 人権問題研究センター/国際基幹教育機構/現代システム科学研究科 |
| 吉田 博美 | 人権問題研究センター/国際基幹教育機構/現代システム科学研究科 |
| 川越 道子 | 人権問題研究センター/国際基幹教育機構 |
| 松波 めぐみ | アクセシビリティセンター/国際基幹教育機構 |
| 金澤 真理 | 人権問題研究センター/法学研究科 |
| 除本 理史 | 人権問題研究センター/経営学研究科 |
| 伊地 知紀子 | 人権問題研究センター/文学研究科 |
| 明戸 隆浩 | 人権問題研究センター/経済学研究科 |
【学外】
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 林田 光弘 | 一般社団法人Peace Education Lab Nagasaki/合同会社Mazatte |
| 高 正子 | 大阪コリアタウン歴史資料館 |
| 鄭 栄鎭 | 特定非営利活動法人 トッカビ |
| 石元 清英 | 全国大学同和教育研究協議会 |
- 大阪府大阪府府民文化部人権局人権擁護課
- 大阪市市民局ダイバーシティ推進室
活動内容
人権問題研究センターを中心に、国際基幹教育機構、法学・経営学・文学・経済学研究科等の教員が参画し、学内横断的な体制を構築するとともに、大阪府・大阪市の人権担当部署、NPO、歴史資料館関係者等の学外メンバーと連携しながら活動を展開した。
具体的活動としては、第一に、行政・学校・企業等へのヒアリングや協議を通じて、現場における人権・コンプライアンス・ダイバーシティ研修のニーズを把握し、大学の専門知を活かした体系的研修プログラムの設計を行った。内容は、「人権とは何か」という基礎理論を起点に、部落問題、外国人、障害、貧困、公害、ジェンダー/セクシュアリティ、ハラスメント等の各論を組み合わせたモジュール型構成とし、対面・オンライン・ハイブリッド形式での提供を想定した。
第二に、HR(人権)副専攻をはじめとする学生を事業に接続する構想を具体化し、学生と社会人がともに学ぶ教育研究連動型モデルを検討した。人権問題研究センターでは前身の同和問題研究室から年々続けてきた現地調査の蓄積があり、これを基盤として学生や卒業生の参加を受けいれる形で、人権フィールドワーク研修の実現可能性を模索した。また、ショート・レクチャーと対話を組み合わせたワークショップ形式で社会人と学生とが共に学ぶ研修も、セクシュアリティとジェンダーをテーマにして試験的に開催し、今後その手法を洗練させていくことで参加者の満足度をさらに高めていくことが期待できることを確認した。
第三に、研修動画制作やホームページ整備など発信基盤の整備にも着手し、将来的な有料研修化や外部委託事業への展開を視野に入れた体制づくりを行った。具体的には、大阪府内の被差別部落4地区を拠点とする太鼓集団の合同演奏会「花開け! 若き打ち手たち!」を共催で開催し、そのプログラムに青年のトークセッションを入れることで企画それ自体に社会教育の性格を持たせるとともに、これを録画で記録して、編集による教材としての活用をめざした。
和太鼓公演とミニトーク『花開け!!若き打ち手たち』を実施|人権問題研究センター
また、人権問題研究センターのウェブサイトに地域連携として都市シンクタンク事業のページを新たに設けて、成果を発信するとともに人権研修プログラムの構築実施についての相談を受け付けることとした。
さらに、第四に、学生や若者が性暴力の被害にも加害にも傍観者にもならないための包括的セクシュアリティ教育(特に性暴力と安全確保)にかかわる研修づくりをめざして、特定非営利法人性暴力救援センター・大阪SACHICO(Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka)との共同研究に着手した。大阪府松原市内の同和地区(被差別部落)に大阪府の補助を受けて建てられた阪南中央病院を拠点に2010年に発足したSACHICOは、24時間体制で性犯罪・性暴力被害の相談に対応してきたのであり、その蓄積を活かすためのデータ整理をまず今年度は進めた所である。 以上の活動を通じて、本事業は単発の講演依頼型事業から脱却し、大学の専門知と社会実践を結びつけた持続可能な人権教育研修モデルの創出に向けた基盤を構築した。

廣岡 浄進教授
活動成果
本支援により、OMU人権・コンプライアンス・ダイバーシティ教育研修事業の事業化に向けた基盤整備が大きく進展した。
第一に、行政(大阪府・大阪市)、学校関係団体、NPO等との協議を通じて、教育研修ニーズの具体的把握を進めるとともに、協力体制の枠組みを構築した。とりわけ、今年度(2025年度)公益社団法人全国人権教育研究協議会の全国集会である全国人権・同和教育研究大会を本学が後援したことで、大会資料集に本学学長挨拶文を掲載していただくともに、分科会会場を提供するなど、同会およびその加盟団体との連携の可能性が具体化し、人的・制度的ネットワークの可視化が進んだことは大きな成果である。
また、共創研究の参考とするために、全国大学同和教育研究協議会の秋季企画「徳島における被差別部落の歴史・解放運動と部落の現状」、国際芸術祭「あいち2025」(あいちトリエンナーレ)で上演された沖縄近現代史を主題とした伝説的演劇「喜劇『人類館』」の復刻公演、上智大学IGC-SSRI国際シンポジウム「マイクロアグレッションから学ぶ―マイノリティの経験とマジョリティの姿勢への問いかけ」および関係者の非公開ワークショップなどに人権問題研究センター研究員らを派遣して、先行する類似の実踐について情報収集を進め、さらに今後の協力を視野に入れた情報交換のできる関係を構築ないし強化できた。
第二に、人権問題研究センターの研究蓄積を体系化し、「人権とは何か」という基礎理論から各論(部落問題、外国人、障害、貧困、公害、ジェンダー/セクシュアリティ、ハラスメント等)までを包含する研修プログラムの骨格を整理した。対面・オンライン・ハイブリッド形式での提供を想定し、研修動画制作やHP制作など、発信基盤の整備にも着手した。これについては、長崎を拠点に原爆の被爆体験の語りを継承する平和教育に取り組んでいる一般社団法人Peace Education Lab Nagasakiの経験に学びつつ、それを人権研修に応用するための共創研究を開始し、さしあたりの成果として人権問題研究センターのウェブサイトに新たなページを追加して、このような包括的な人権研修についての情報発信とプログラムの構築ないし実施についての相談を受け付ける体制を試行的に発足させた。
第三に、HR(人権)副専攻の学生を本事業に接続する枠組みを検討し、次世代育成を視野に入れた教育研究連動モデルの構想を具体化した。学生と社会人がともに学ぶ場の設計により、大学の教育機能と社会的実践を結びつける構想が明確になった。(なお、学生らの学びについては、以下を参照されたい。
岡田ゆめ他「香川県現地調査の記録(2025年9月):瀬戸内の島々におけるアートと人権を訪ねて」『人権問題研究』23、2026年。
および、江村裕香・除本理史「公害・環境問題を軸とする教育・研修プログラムの検討に向けて:岡山県倉敷市水島地区における活動報告」同前誌) 以上のように、本支援は、単発の講演依頼型事業から脱却し、大学として体系的に社会教育を担う持続可能な研修事業モデルの構築に向けた重要な一歩となった。
概念図

今後の活動計画
2025年度に構築したネットワークおよびプログラム骨格を基盤として、早ければ2026年度には、参加費を外部から徴収する仕組みが大学において整備されることを前提条件として、プレ教育研修を試行的に実施したい。対象は、学校園教職員、行政職員、企業担当者を中心とし、基礎講義・各論講義・フィールドワークを組み合わせたモジュール型プログラムを構築する。参加者アンケートやヒアリングを通じて内容の改善を図り、できれば2027年度には本格実施できるように移行していきたい。事業化の達成時期はひとまず2027年度末を目標とし、有料研修プログラムとして自立的に運営できる体制を整えるものとする。その際、大学教職員の過度な負担を回避するため、外部講師や協力団体との役割分担を明確化し、持続可能な運営モデルを確立する。
もっとも、事業化については、課題も見えてきた。有料化をめぐっては、現状では人権問題研究センターの運営経費に充当されるような大学の制度設計がされておらず、また利益相反の疑いを招かないための仕組みの構築が必要であるという現実が、本年度の検討を通じて、課題として明らかになっているところである。このため、ひとまず、人権問題研究センターのウェブサイトに「地域連携|都市シンクタンク」のページを新設したところであり、研修のモデル構築や個々の課題ごとの研修内容の充実およびネットワーキングと並行して、その効果的な発信のありかたについても、あわせて取り組んでいく。
事業化によるソーシャルインパクトとしては、第一に、専門知に裏打ちされた体系的研修モデルを提示することで、行政・学校・企業における研修の質的向上に寄与することが期待される。
第二に、人権教育を断片的知識の提供にとどめず、「人権とは何か」という根源的問いに立ち返る教育実践を普及させることにより、組織文化の変容に資する。
第三に、学生と社会人の協働的学習の場を通じて、人権課題に対して鋭敏かつ実践的な感覚をもつ次世代人材を育成する。本事業が全国的に展開されれば、OMUが人権教育の拠点大学として認知されるとともに、持続可能な社会教育モデルとして他大学への波及効果も期待される。