機構長挨拶

大阪公立大学が社会から求められ、また社会に提示すべき教育は、以下に示すような能力を備えた人間を育てることであり、国際基幹教育機構ではこれらの能力を身に付けることのできる科目体系を整備しています。すなわち、「教養」「専門的能力」「情報収集・分析力」「行動力」「想像力」「自己表現力」に加えて、確かな論理的能力と豊かな感性、他者と社会に対する共感と倫理的態度を育てることです。

多くの大学において、入学後の初期段階の教育を「初年次教育」「教養教育」「全学共通教育」などと明示する中で、大阪公立大学ではそれを「基幹教育」と称しています。その理由は、我が国の初等中等教育(留学生においては海外の同等課程)から接続した教育としての高等教育への展開、生涯にわたり継続的・発展的な学修を行う態度を身に付けることの実現、世界市民として活躍するために当然に備えるべき教養および専門教育に向けた体系的な準備学修を行うという意味、学士課程教育の大きな基となり教育体系の重要な幹の要素をなすものという意味を込めているからです。

そもそも従来の「教養」という言葉は、世界のそれぞれの文化において、漢詩や古代ギリシャの文化などを基礎として、人文科学、社会科学、自然科学、技術など幅広く積極的に理解すること、また学ぶもの自身の成長を指し示すものでした。しかしながら、現在では身に付けるべき「文化」は一つではなく、成長するのは自分一人ではありません。大学は、異なる文化や社会、またそれぞれに属する個人を含めてともに成長する場であり、異なる文化や思想がぶつかりあう社会において、自ら属する文化への深い理解に根ざしながらも、より実践的な倫理的態度・志向性と他者への共感をもちながら、全ての文化に共通する「知」である論理的能力あるいは創造的な感性を手がかりとして、待ち受ける世界の課題に挑戦できる能力こそが、大阪公立大学の基幹教育で行う「教養」教育です。

すなわち「地域に根差し世界に羽ばたく人の育成」を志向する、多様な世界に通用する新たな教養教育こそが、大阪公立大学の基幹教育の理念です。この理念を達成するために、基幹教育は必要な能力を身に付けて社会の中で発揮できる人間、また卒業後もなお自律して学び続ける姿勢をもち、確かな論理的能力と豊かな感性、他者と社会に対する倫理的態度を持った学生を形成するための入学後の初期段階を中心とする教育の提供と実施を行うことを目的とします。

国際基幹教育機構長
松原 浩