古代史ゼミ

古代史ゼミ

(1)古代史関係の授業科目

【学部】
 毎年開講されている古代史関係の科目は、「日本史講読A」と「日本史演習A」いうものです。
 「日本史講読A」は2回生を対象とした科目で、入門編と位置づけています。
 ゼミ形式でおこないますので、報告者になった人はあらかじめ用意してきたレジュメを参加者に配布し、それをもとにしながら口頭報告をしてもらいます。他の参加者は、報告の終了後に質疑応答に参加して、理解を深めていきます。
 例年、『続日本紀』という、奈良時代の歴史をまとめた歴史書をテキストとしています。この史料は漢文で書かれていますので、レジュメには読み下し文や語注、関連する先行研究の概要などをまとめ、最後に報告者の私見を提示してもらいます。
 こうしたゼミを半年間積み重ねることで、日本古代史の史料読解に関する基礎的知識を身につけていきます。『続日本紀』は優れた注釈書などがそろっていますので、初学者であっても対応できる史料です。
 3回生になると、「日本史演習A」を受講します。これもゼミ形式の科目です。
 この科目では、『類聚三代格』という平安時代の法制史料をとりあげます。『続日本紀』のように注釈書などがそろっていないので、少し難易度は上がりますが、前年度の「日本史講読A」で学んだことを生かし、読解にチャレンジしてもらいます。
 以上のように、古代史関係の科目は、『続日本紀』や『類聚三代格』といった史料を実際に読解することを中心にしています。この他にも、「日本史通論」や「日本史特講」など、ゼミ形式ではない講義形式の科目で、古代史の概説や専門的な研究を講じる科目も用意しています。

【大学院】
 大学院の古代史関係の科目は、「日本史学研究A」と「日本史学研究演習A」となります。
 前者では、源俊房という平安時代後期の貴族の日記である『水左記』を読み進めています。平安時代の貴族の日記は、「古記録」とも呼ばれますが、読解には専門的な知識と経験が必要となります。
 「日本史学研究A」では、自身の研究の幅を広げる目的で、こうした古記録の読解力を身につけることを目指しています。
 後者の「日本史学研究演習A」では、各自が日頃おこなっている研究成果をまとめて報告し、参加者全員でその内容についての討議を行います。ここでの報告・議論を、修士論文や博士論文の執筆につなげてもらうことを意図しています。

 以上が古代史関係の授業科目の概要です。いずれの場合も、史料の読解に重きを置くとともに、参加者全員による自由闊達な議論を尊重しています。

(2)古代史研究会の活動

 上記の授業科目とは別に、「古代史研究会」を開催しています。
 この研究会は、古代史の興味がある、あるいは古代史をテーマに卒論や修論を書きたいと思っている人が、自主的に参加するものです。主な活動は次の通りです。

【類聚三代格の輪読会】
 毎週1度、教員(磐下)と希望者が集まり、『類聚三代格』を輪読しています。
 参加者が順番にテキストの読み下し、現代語訳をおこないます。個々の史料をじっくり読み込むというよりは、数をこなして漢文史料に慣れ親しむことを目的としています。
 予習をしてくる人もいれば、その場でぶっつけ本番に臨む人もいます。特に予習は必須ではなく、各人が可能な形で参加し学ぶ場となっています。

【卒論・修論の相談会】
 卒論や修論の執筆に取り組んでいる人が、作業の経過報告などをして、教員や他の参加者のアドバイスを受ける場です。卒論の場合は、概ね月に1回開催し、完成までのサポートをおこないます。

【遠足・旅行】
 古代史研究会では、年3回の遠足と、年1回の旅行を実施しています。
 遠足については、まず5~6月に、平城宮跡をメインとして奈良方面の遺跡や寺社・博物館を見学します。そして10月には、奈良国立博物館で開催されている「正倉院展」の見学とともに、その他の博物館や遺跡などをめぐります。年度末の2~3月にも同様の巡見をおこなっています。
10月の正倉院展の遠足には、卒業生なども参加することが多く、賑やかな回となります。
 旅行は、9月の夏期休業期間中に、2泊3日の予定で遠方の遺跡や寺社、博物館等の見学に赴きます。
 これらは研究会参加者が中心となって行程を組みます。可能であれば、博物館のバックヤードや、発掘現場、出土品、貴重資料の見学の機会も設けています。

 2020年以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、旅行は実施できていませんが、徐々に復活させていく予定です。

 このように、古代史研究会では、学内だけではなく、古代史の舞台となった場所に実際に足を運ぶことも大切にしながら活動しています。
 大阪や奈良、京都は、古代史の中心地といえます。大阪にある大学の地の利を生かして、積極的に現地を訪れるようにしています。

(3)過去の遠足・旅行

【遠足】
・2013年度
 5月12日 平城宮跡、元興寺、頭塔など
 10月31日 正倉院展、飛鳥
・2014年度
 6月14日 平城宮跡、法隆寺など
 11月1日 正倉院展、長谷寺
・2015年度
 6月21日 平城宮跡、飛鳥
 11月8日 正倉院展、東大寺
 3月31日 総持寺(茨木市)、今城塚古墳など
・2016年度
 5月29日 平城宮跡、恭仁京跡
 11月6日 正倉院展、飛鳥
 3月5日 延暦寺
・2017年度
 6月4日 平城宮跡、額安寺(額田寺)
 11月4日 平城宮跡、奈良町
 3月13日 飛鳥
・2018年度
 5月20日 平城宮跡、蟹満寺など
 11月11日 正倉院展、平城宮跡、白毫寺、新薬師寺など
 3月28日 春日山、地獄谷石仏群など
・2019年度
 6月2日 平城宮跡、当麻寺など
 10月27日 正倉院展、薬師寺、唐招提寺、秋篠寺など
 2月23日 栄山寺(藤原武智麻呂墓碑?調査)

2020年度

 新型コロナの影響で実施せず

2021年度

 1114日 難波宮跡、大阪歴史博物館

2022年度

 92122日 宇治、平城宮跡など

 111日 正倉院展、東大寺など

 38日 道明寺、葛井寺、由義宮跡など

【旅行】
・2014年度
 9月9~11日 熊野古道、田辺
・2015年度
 9月17~19日 大宰府関連遺跡、宗像大社など
・2016年度
 9月22~24日 東京国立博物館、下野薬師寺跡など
・2017年度
 9月26~28日 糸島半島(怡台城ほか)、大宰府関連遺跡、九州国立博物館など
・2018年度
 10月12~14日 多賀城跡、平泉など
・2019年度
 9月24~26日 臼杵、宇佐神宮、熊野磨崖仏、豊後国分寺跡など

20202022年度

 新型コロナの影響で実施せず

(4)公大で古代史を学ぶ-学生の声-

古代史の授業では、自分の担当分の漢文史料を読むことで古代史料の扱い方や古代史の基礎的な知識を身につけることができます。史料として扱うのは漢文ですが、『続日本紀』は注釈書を参考に読み下しや現代語訳を作成することができたため比較的取り組みやすかったと感じました。
担当史料に関連した先行研究についても内容をまとめて発表することで史料の理解のされ方や時代背景・前後の出来事について学ぶことができ、より正確に史料を考える材料となったと思います。
ゼミ形式の授業のため、他の人の質問によって自分の理解を深めたり、自分とは違った視点からの指摘を受けたりと、やり取りをすることで自分の認識を確認し、多方面から史料について考察することもできました。
このように、古代史の授業では各自の発表を通じて古代史に関する知識を学び、卒業論文の製作に必要な史料の読解能力を向上させることができると思います。
 
古代史研究会の活動として一番大きいのは週1回の類聚三代格の輪読です。自分だけではよく内容を理解できないことも多いですが、先生による単語の説明や全体の解説によって理解が深まり、古代史における基本知識や物事の考え方を身に着けることができると思います。
また、先行研究や関連事項の紹介によってより深く史料について学ぶ方法が提示されることも多くあり、授業と共に卒業論文製作のための重要な学びの場となっています。
 研究会の遠足や旅行では、実際に遺跡や展示品を見ることで初めて理解できることも多く、より古代史の知識が身につくと思います。特に古代史関連で重要な史跡・寺社等が多い奈良に行く機会が多いということは利点であり、大阪という地理ならではだと感じています。
(長内 菜月)