はじめに

大阪公立大学医学部大学院医学研究科核医学教室

我々の大阪公立大学医学部大学院医学研究科核医学教室は、昭和36年(1961年)に開設された「がんセンター」に発しその後、昭和45年(1970年)に核医学研究室に発展、平成12年(2000年)に核医学教室となり現在に至っています。現在、医学部附属病院では核医学科として、核医学診療(診断・治療)に従事しています。コロナ禍で自粛しておりましたが、令和6年4月8日に教室関係者で開設50周年をお祝いしました。

診断について

診断は、主に、腫瘍、心臓、脳機能の3つの分野が対象です。CTやMRは、形態学的な診断が主ですが、核医学は、ガンマ線やβ線など放射線を放出する放射性同位元素を用いて、生体内の臓器の機能、癌の代謝などを視覚的に定量的に診断します。例えば、がんの検査に欠かせないFDG-PETに用いられるFDGは、生体内のエネルギー源であるブドウ糖の一部にF-18と言うアイソトープを入れたものです。
機器の進歩により、核医学撮像装置に形態診断を行うCTやMRを合わせ持つ、SPECT/CT、PET/CT、PET/MRなどの装置が一般化しており、代謝的な異常が身体のどの部位に存在するか明瞭に診断できるようになり高度な現代医学に不可欠なものとなっています。

治療について

治療は、放射性同位元素が放出するβ線やα線などを用いて悪性腫瘍の治療を行うものです。正常の甲状腺や甲状腺癌はヨードを取り込む性質がありますが、昭和21年(1946年)に米国でβ線を放出して細胞を焼灼する性質を持つI-131を通常のヨードの代わりに細胞に取り込ませるバセドウ病の治療、甲状腺癌の転移に対する治療が行われるようになり、わが国でも昭和27年(1952年)ごろよりI-131の治療が行われるようになりました。当院核医学科では、専用の非密封治療病室3室を運営して年間140名以上に治療を行っています。
現在は、I-131以外にも神経内分泌腫瘍に対するLu-177、治療抵抗性前立腺癌骨転移に対するRa-223による核医学治療も行っています。