事業の目的・概要

1.本事業の目的

世界各国が協力しながら地球規模の課題解決をするためのSDGsの達成と日本経済の発展と社会的課題の解決を両立するSociety5.0の実現に向けて、わが国では新たな社会を支える人材の育成として初等中等教育の段階からのSTEAM教育が推進されています。
一方で、20年程前から児童生徒の理科離れが問題化されています。未来の科学分野を担う人材を育成するためには、科学分野への意欲、能力を有する中学生に対して発展的な学習機会と研究指導により、科学に対するモチベーションの継続と、科学への探求心をさらに高める機会を提供することが必要です。

未来の博士育成ラボラトリーは、科学的視点で国内外の様々な社会課題を捉え、SDGsの達成とSociety5.0の実現を目指す未来社会を支える高度専門人材・イノベーターを育成することを目的としています。高度な人材と設備の整った大学ならではの多彩なプログラムにより、受講生が、自ら考え、自ら手を動かし、広い視野から探求し、得られた結果を正しく伝えられる力が身に付くように活動をしています。更にこの活動を通して、以下の高度専門人材・イノベーターの科学的能力・資質を獲得することを目指しています。

  1. 科学に対する強い探求意欲を持ち、高度で未知の課題に主体的に挑戦する能力
  2. 自ら創意工夫し、主体的に独創的な研究を推進できる能力
  3. 論理的な思考力と優れたプレゼンテーション能力
  4. 個を尊重しながら共同で科学研究を進めていく能力

2.本事業の概要

①本学教員による横断的指導体制と高度で多様なSTEAMプログラムの実践

中学1年~3年生の多才・多様な受講生を対象に本学の横断的理系教員組織によるSTEAMプログラムを実践し、幅広い分野をカバーする高度な知識や能力の獲得を支援します。

②大阪公立大学が有する「総合知」の活用

2022年4月に開学した大阪公立大学は、「現代システム科学域」「文学部」「法学部」「経済学部」「商学部」「理学部」「工学部」「農学部」「獣医学部」「医学部」「看護学部」「生活科学部」の1学域11学部を有する我が国最大規模の公立総合大学です。自然科学、人文・社会科学、そして医学・獣医学の有機的シナジー効果が生み出す「総合知」を活用し、科学に関心が高い中学生に授業では学べない科学の楽しさや科学の本質を伝えるSTEAMプログラムの拡大と多様化を推進します。
また、受講生は年齢の近いティーチングアシスタント(TA)の大学生や大学院生のサポートを受け研究者に親近感やあこがれを持つことができます。

③共同実施機関との連携

工学系の5年間一貫教育機関である大阪公立大学工業高等専門学校や、大阪府の環境の保全と農林水産業の振興、食品産業の支援、農業者の育成等、様々な取り組みを行う研究機関である大阪府立環境農林水産総合研究所と連携し、最新のものづくりに関わる活動や社会的課題等を学ぶ活動を通じて受講生の科学を捉える視野を広げています。

④受講生受入システム
堺市教育委員会・堺市教育センターと連携し、堺市内の小学6年生を対象とする理科・科学実験活動組織「堺サイエンスクラブ(SSC)」で1年間実験活動に取り組んだSSC修了生や、堺市学校理科展覧会優秀賞受賞者を対象に募集を行い、選抜して本事業受講生として受け入れるスキームを構築しています。
また、2024年度からは、大阪市立科学館が運営する「ジュニア科学クラブ」で実験活動に取り組んだ小学6年生の修了生も募集対象に加え、同様に応募者の受け入れを行っています。

⑤継続受講システム

本事業は、希望すれば中学3年生まで3年間継続して活動に参加できます。長期間に渡り実験・研究活動に取り組めることから、科学リテラシーの継続的な伸長に加えて、多様な個性・能力を有する受講生の中でコミュニケーション能力やリーダーシップ、個々の多様な意見を集約しながら実験・研究成果をまとめる能力などを育成できる点も大きな特徴です。さらに高校生となった本事業修了生は、フェローコースとして在籍し、中学生である受講生のサポートをしながら共に活動を継続することができます。

⑥次世代理系人材育成プログラム助成事業への採択

本事業は、2023年度から公益財団法人中谷医工計測技術振興財団の次世代理系人材育成プログラム助成事業に採択され、「総合知で持続可能な未来社会を創る高度人材育成プログラム」として活動をしています。

⑦SDGsへの貢献

未来の博士育成ラボラトリーはSDGs17の目標のうち、「4:質の高い教育をみんなに」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「17:パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献しています。

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3.本事業の主な年間プログラム

①基礎実験(5月~6月)
本事業の導入部で実施し、実験への取り組み方やラボノートへの記録など科学に携わる者にとって必要な基本姿勢や基礎知識を身につけます。

②探求課題(7月~8月)

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本事業前期の中核となる連続プログラムです。本学教員が企画した研究・実験テーマごとに68名程度のグループに分かれ、大学の研究室で担当教員及び本学大学院生(TA)の指導を受けながら、45回の研究活動に取り組みます。受講生は教員やTAとディスカッションしながら大学の設備を用いて、先端の研究にチャレンジしていきます。このプログラムにより科学に対する強い探求心を喚起し、高度な課題にも自主的に挑戦していく能力の育成を図っています。
探求課題活動実績

③演示実験開発プログラム(10月~11月) 

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本事業後期の中核となる連続プログラムです。身近な実験テーマを効果的に演示できる装置の考案と製作を行います。テーマ別少人数グループで、自ら考え、手を動かし、チームで協力して4回程度かけて装置を作製します。創意工夫する独創力と、実験テーマの基本原理や法則等について理解し、説明する能力を育むことを狙いとしています。
演示実験開発プログラム活動実績

④実験・研究活動発表会(9月、2月)

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探求課題、演示実験開発プログラムとも、その活動成果を発表する発表会を実施しています。担当教員、TAが適宜指導しながら実験・研究の成果を各グループでまとめて、発表します。実験・研究結果等を科学的・論理的に考える能力、分かりやすく説明するための工夫、口頭で説明するプレゼンテーション能力を身につけることを目指しています。

⑤施設見学会(8月)

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大阪府立環境農林水産総合研究所等の公的研究機関の施設や民間企業の工場等を見学し、科学を捉える視野の拡大と現場の研究者の役割を理解する場としています。

⑥大阪公立大学工業高等専門学校実験プログラム(12月)

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大阪公立大学工業高等専門学校の教員、高専生による実験活動です。高専の科学技術に触れ、実験や工作を体験します。また高専生との交流を通じて、高専での学びや研究について知ることもできます。

⑦理系大学院生による実験企画(12月)

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本学の理系大学院生が企画した演示実験やプレゼンテーション、交流会を通じて科学への関心を高めるとともに、身近なロールモデルに接して科学者へのあこがれを醸成します。

⑧講演会
本学教員や研究者等による研究紹介等の講演です。最新の研究成果の紹介だけではなく、研究のプロセス、科学者にとって大事な点なども含めた啓発的な講演を行っています。大阪公立大学の「総合知」を活かしSDGsSciety5.0、気候変動、生物多様性、社会課題等に対する視野も育成します。
講演会実施一覧

                                                                  

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