フィールドでの研究


教育研究フィールドを利用して行われている研究について紹介します。

(1)SDGs駆動型都市農業の社会実装に向けた取り組み

農業の担う将来的な分野は,食料生産のみならず,エネルギー生産に始まり,工学・医療・福祉といった分野にも急速に拡大し続けてきている。また,SDGs の理念に則った農学の社会実装も急務となっている。本学農場は,大都市に併設されており,次世代都市農業の新しい農業形態のモデルと発信元とならなければならない。新大学での農場は,農学分野の新しい可能性を示し,次世代都市型農業を牽引する人材の育成の場としてあるべきである。

日本一大きな公立大学法人にある「日本一小さな農場」を看板とした取り組みにより,持続可能な再生可能エネルギー自律型都市農業(小規模,多品目,周年,再生可能エネルギー自律型)のモデル・拠点化を目指す。本学での人材育成をはじめ,新しい生産方法を開発・提示し,生産物は「大阪ブランド」として世界に発信する。また,大阪府下の初等・中等教育現場(児童,教職員,保護者)への環境教育による啓蒙活動と環境モニターへの活用(教材の開発と普及,データの収集)も同時に行う。

(2)C4植物である雑穀アワの新品種育成・普及とモデル植物化

健康食品ブームを迎え、雑穀が五穀米などと呼ばれて脚光を浴びはじめているが、現在の製品は在来品種を元にした現行の品種の栽培によるものが殆どで有り、新品種の育成や詳細な種子可食部、油脂の成分分析などは殆ど行われていないのが現状である。また、マーカー育種などの優良品種作出のための技術開発も岩手県のみが行っているような不十分な状態で、分子生物学的な解析アプローチも殆どなされていない。本研究は、「雑穀アワ」に再びスポットを当て、「スーパーフード」として大きく飛躍させる研究を実行し、大阪から世界に雑穀の有用性を発信・普及させること、アワをC4植物の研究のモデルとする目的で行う。この研究による成果は、栽培植物の多様性の拡大(植物育種分野)、健康食品の更なる高機能化(食品分野)、介護食としての利用(医療・介護分野)、耕作放棄地の有効利用(都市計画分野)、非可食部のバイオマス利用(循環型農業分野)、大生産地と大消費地とのマッチング(経済分野)、などのように非常に広い領域で影響力を持つという意義のある研究である。また、得られた成果を広く一般に公開し、トウモロコシに続くC4植物としてのモデル化の可能性を探究する。

(3)糠に含まれる機能性成分γ-オリザノールを高含量に含むイネ品種の育種

近年、食文化の変化から日本人のコメ離れが進んでおり、コメの消費量・需要量の減少に伴い、生産量も減らさざるを得ない状況となっている。日本の文化的作物でもあるコメの需要を向上させ、生産量を確保することは農業の重要な課題である。γ-オリザノールは、血行促進、自律神経失調症や脂肪異常症の改善、抗酸化作用、,紫外線防御作用などの多くの効果があるため、医薬品、化粧品、食品添加物などに利用されている。開花後や発芽後の種子における継時的なγ-オリザノール合成量は既に調査され、γ-オリザノールの合成はフェルラ酸とステロール類がアシル化され合成されると考えられている。しかし、γ-オリザノールの植物に対する作用機作や含量調節因子など、多くのことが未解明のままである。本研究では、γ-オリザノール含量を調節する因子の解明と種子中のγ-オリザノール含量と相関のある植物体の表現型を元にした形態マーカーの開発を目指す。