抄読会

CD70 identifies alloreactive T cells and represents a potential target for prevention and treatment of acute GVHD.
CD70は同種反応性T細胞を識別して急性GVHDの予防・治療の標的となり得る
Verma K, et al. Blood Adv. 2024 Sep 24;8(18):4900-4912.

移植片対宿主病 (GVHD) は同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)において克服すべき課題である。
本研究ではAllo-HSCT後患者の血液サンプルを解析したところ、CD70陽性T細胞が一過性に増加していた。
さらに急性GVHD患者ではCD70陽性CD4陽性/CD8陽性T細胞が特に増加しており、TCRレパトアもskewしていた。
VitroではCD70陽性T細胞は同種抗原に特異的に反応し、抗体阻害によって増殖や活性化が低下した。
CD70陽性T細胞は同種特異的で、CD70-CD27(CD70のリガンド)の阻害はaGVHDの予防や治療に有用な可能性がある。

2025年01月06日 長﨑譲慈

A randomized phase 2 trial of oral vitamin A for graft-versus-host disease in children and young adults.
小児および若年成人における移植片対宿主病に対する経口ビタミンAの無作為化第2相試験
Khandelwal P, et al. Blood. 2024 Mar 21;143(12):1181-1192.

ビタミンAは腸管の恒常性維持に重要な役割を果たし、腸管に常在するマクロファージを免疫寛容性の表現型へ導く。造血幹細胞移植を受けた80人のレシピエントを、移植前に高用量のビタミンAを投与した群とプラセボを投与した群に1:1で無作為に割り付け、前向き無作為二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。ビタミンAは、前処置前に単回経口投与した。ビタミンA群で急性移植片対宿主病(GVHD)の発生率が有意に減少し、慢性GVHDの発生率もビタミンA群で有意に減少した。唯一、ビタミンA投与群で30日目に無症候性高ビリルビン血症(Grade 3)を認めたが、その後自然改善した。腸管へのT細胞輸送を反映するCCR9+ CD8+エフェクターメモリーT細胞は、造血幹細胞移植後30日目においてビタミンA投与群で少なかった。炎症促進作用のあるビタミンA輸送タンパク質である血清アミロイドA-1量が、ビタミンA投与群で低かった。ビタミンA投与群では、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6、IL-8の血中濃度が低く、さらに、腸内細菌叢と短鎖脂肪酸がより良好であった可能性を示唆する結果が得られた。造血幹細胞移植前のビタミンAの経口投与は、安価で毒性が低く、GVHDの発症を減少させる効果がある。

2024年12月23日 北辻 千展

Comparative outcomes of various transplantation platforms, highlighting haploidentical transplants with post-transplantation cyclophosphamide for adult T-cell leukaemia/lymphoma.
成人T細胞白血病リンパ腫における移植プラットフォームの比較 ―PTCYハプロに焦点を当てて―
Yoshimitsu M, et al. Br J Haematol. 2024 Oct 19;():.

本邦でのATLに対する様々な同種移植プラットフォームの転帰を後ろ向きに比較した。
対象患者はTRUMPに登録されている、2016年~2021年に初回の移植を受けたATL患者700名。ドナーソースは、PTCYを用いたHLA半合致血縁 (PTCY群) (n=121),HLA一致血縁 (MRD群) (n=91),HLA一致非血縁 (MUD群) (n=160),臍帯血(CBT群)(n=328)。フォローアップ期間中央値は794日であった。
2年OSは、PTCY群 48.1%,MRD群 48.8%,MUD群 48.4%,CBT群 34.6%であった。2年累積再発率は、PTCY群 37.1%,MRD群 47.5%,MUD群 33.9%,CBT群 45.1%で、非再発死亡は、PTCY群 24.2%,MRD群 19.8%,MUD群 24.7%,CBT群 27.3%であった。
PTCY群では、MRD群,MUD群と比べて血小板の生着が遅延した。重症 acute/chronic GVHDの増加は認めなかった。またPTCY群においてPS不良はOS低下と関連しており、輸注CD34+cells <5×10E6/kgは生着遅延と関連していた。
PTCYを用いたハプロ移植は、ATLに対して安全かつ有効なプラットフォームと結論づけられる。

2024年12月09日 八木 尚子

Clinical Impact of Cytokine Release Syndrome on Prolonged Hematotoxicity after Chimeric Antigen Receptor T Cell Therapy: KyoTox A-Score, a Novel Prediction Model.
CAR-T療法後の血液毒性遷延予測スコアリングシステム: KyoTox A-Scoreの検討
Nakamura N, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Apr 1;30(4):404-414.

血液毒性が遷延することは、CAR-T療法における最も一般的な長期有害事象である。CAR-T輸注後の炎症状態が血球減少遷延に及ぼす影響を評価するため、単一施設の後方視的研究を行った。輸注後90日目に解析した90例のうち、累積発症率は好中球減少が57.5%、貧血が36.7%、血小板減少が49.8%であった。CRSを経験した患者では、血球減少遷延が有意に高く、その期間も長かった。さらに、グレード1のCRS患者のうち、CRS関連症状が5日以内に消失した患者(m-CRS G1a)よりも、CRS関連症状の持続期間が長い患者(m-CRS G1b)の方が、有意に発症率が高く、血球減少遷延期間が長いことがわかった。多変量解析により、m-CRSのグレードが高いこと、CRPのピーク値が高いこと、CRP上昇期間が長いこと、血清無機リン濃度が低下している群では、血球減少の累積発症率が有意に高かった。これらの因子を用いて、我々は新たな血液毒性遷延の予測スコアリングモデルであるKyoTox a-scoreを開発した。KyoTox a-scoreは、輸注後の臨床経過に応じて、遷延性血液毒性の発生率と持続期間の予測を更新し、輸注必要量、G-CSF投与量、投与期間を推定して治療スケジュールを最適化するために使用することができる。この研究は、CAR-T輸注後のCRSの重症度と炎症バイオマーカーに基づくKyoTox a-scoreモデルが、その後の血液毒性長期化を正確に予測することを示している。

2024年12月02日 田中 静大

Clostridium butyricum MIYAIRI 588 contributes to the maintenance of intestinal microbiota diversity early after haematopoietic cell transplantation.
C. butyricum MIYAIRI 588は造血幹細胞移植後早期に腸内細菌叢の多様性の維持に寄与する
Fukushima K, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Jun 1;59(6):795-802.

【目的】造血幹細胞移植において、腸内細菌叢は予後や移植結果、GVHDなどの合併症に重要な役割を果たしている。過去の研究では、移植患者は健常者と腸内細菌叢が大幅に異なっていることが明らかになっている。本研究は、16S rRNAアンプリコンシーケンス法を用いて、生菌製剤であるClostridium butyricum MIYAIRI 588株(CBM588)の予防的投与が移植後の腸内細菌叢に及ぼす影響を評価することを目的として行われた。【方法】大阪大学医学部附属病院および東海大学医学部附属病院で同種造血幹細胞移植を受けた40人の患者が対象となり、糞便回収は移植7日前(前処置開始前)から移植後35日目まで1週間ごとに行われた。【結果】37名の患者から196の糞便サンプルが回収された。CBM588を投与しなかった患者ではα多様性が大幅に減少したが、投与した患者のα多様性は一定に保たれた。β多様性の解析は、CBM588が移植後7~21日目の腸内細菌叢の構成を変化させないことを示す結果であった。急性GVHD発症患者では、移植前から細菌叢の構成が変化し、急性GVHD発症前である移植後14日目にはその変化が顕著になった。Enterococcus属は急性GVHD患者で著しく優勢となり、Bacteroides属は移植前後で維持された。CBM588を投与した患者では、Enterococcus属とBacteroides属はともに相対的に少ない傾向であった。【結語】これらの結果は、移植前からのCBM588投与が腸内細菌叢のバランスを維持する上で有益である可能性を示唆している。

2024年11月25日 八重 秀克

Impact of Age on Pharmacogenomics and Treatment Outcomes of B-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia.
B細胞性急性リンパ性白血病における薬理ゲノミクスと治療成績に及ぼす年齢の影響
Yoshimura S, et al. J Clin Oncol. 2024 Oct 10;42(29):3478-3490.

ALLはあらゆる年齢層で発症する可能性があり,成人に比べて小児の治癒率が際立って高いことが知られている.しかし,年齢による薬理学的な治療反応の違いは依然として不明である.
複数の施設において新規に診断されたB-ALL患者(小児:767人,成人:309人)を対象に,21種類の薬剤に対する白血病細胞の生体外感受性を調査した.また,23のALL分子サブタイプをRNA配列決定により同定した.小児,青年・若年成人,高齢者における薬物反応とALLゲノムとの関連を解析し,年齢に関連した遺伝子発現の特徴がALLの治療成績に及ぼす影響を評価した.
7種類のALL治療薬(asparaginase, predonisolone, mercaptopurine, dasatinib, nelarabine, daunorubicin, inotuzumab ozogamicin)が小児と成人との間で活性の差を示し,そのうち6種類は年齢によって白血病の分子サブタイプが異なることによって説明された.若年成人は小児より高齢者に近い薬剤耐性パターンを示した.mercaptopurineは小児において分子サブタイプに依存しない高い感受性を示した.遺伝子発現プロファイルにより,CRLF2, DUX4, KMT2A再構成ALLにおいて,年齢と細胞障害性薬剤耐性に関連する遺伝子発現のサブクラスターが認められた.細胞障害性薬剤に抵抗性の成人様ALLを有する小児では,予後不良であった.
この結果は,ALL治癒率における年齢に関連した差に関する薬理ゲノム学的知見を示すものであり,年齢層を超えて治療を個別化するための白血病予後の特徴を明らかにするものである.

2024年11月18日 川添 麻衣

Neurologic Complications of the Central Nervous System after Allogeneic Stem Cell Transplantation: The Role of Transplantation-Associated Thrombotic Microangiopathy as a Potential Underreported Cause.
同種幹細胞移植後の中枢神経合併症:潜在的に過小評価される原因としてのTA-TMAの役割
Sala E, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Jun 1;30(6):586.e1-586.e11.

同種移植後中枢神経合併症は重篤な合併症として移植後死亡と関連している. 本研究では, 同種移植後中枢神経合併症の潜在的なリスク因子, 特にカルシニューリン阻害薬(CNI)との関連に焦点を当て, TACとCsAを比較した. 単施設後ろ向き研究として1999年12月~2019年4月にドイツのUlm大学において初回の同種造血幹細胞移植を受けたの739名を解析した. 中枢神経合併症の累積発生率は17%で, 中枢神経合併症の発生はOSの短縮およびTRMの増加と関連した.
原因として, CNI関連(42%)および感染症(30%)が順に多かった. 多変量解析では, 中枢神経合併症の発生において, 年齢, TBI, 重症aGVHD, 慢性GVHDといった既報告と一致するリスク因子に加えて, CSAの使用に比してTACが独立したリスク因子として同定された. 一方で, TACの使用は重症急性GVHDに対して保護的に働くことで, 結果的にNRMを減らしOSを改善する結果であった. TACに関連する中枢神経合併症は中枢神経症状を伴うTA-TMA(neuro-TA-TMA)と関連していたが, TA-TMAの発生はTAC, CsA群で同程度であった. 以上の結果より, TACの使用により, TA-TMAの表現型として神経症状を伴いやすく, 結果としてCSAと比較して中枢神経合併症発生のリスク因子となりうることが示唆された.

2024年11月11日 仲子 聡一郎

HLA evolutionary divergence (HED) informs the effect of HLA-B mismatch on outcomes after haploidentical transplantation.
HLA evolutionary divergence(HED)は、ハプロ一致移植後のHLA-B不一致がアウトカムに与える影響を示す指標となる
Solh M, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Oct 1;59(10):1433-1439.

Graft-versus-Tumor効果は、HLAを介してドナーT細胞に提示される腫瘍関連抗原(TAA)に依存している。個人内のHLA evolutionary divergence(HED)は、TAAを提示する能力を左右する可能性があるが、HEDの効果はハプロ移植においては研究されていない。(注:HEDはグランサム距離というアミノ酸の置換の影響を定量化するための距離尺度を用いて計算される。分子量、極性、体積の3つの因子を元にアミノ酸間の距離が計算され、タンパク質の進化や機能的な影響を調べる際に用いられる。)
本研究では、ハプロ移植後の移植成績に対するHEDの影響を調査していた。
322組の連続したレシピエント/ドナーペアを分析した。HLAクラスIおよびクラスIIのペア間において、HLA-B, -DRB1, -DQB1が平均HEDに最も寄与していた。平均HEDは、クラスIが6.85(HLA-Aが7.08, -Bが8.24, -Cが5.07)、クラスIIが8.58(HLA-DRB1が10.97, -DQB1が10.06, -DPB1が4.06)であった。
クラスI不一致のレシピエント/ドナーハプロタイプにおける高いHEDは、DFSの悪化(HR 1.11, P=0.02)および再発(HR 1.11, P=0.02)と有意に関連していた。また、HLA-B不一致ハプロタイプにおける高いHEDは、OSの悪化(HR 1.07, P=0.02)、DFSの悪化(HR 1.09, P=0.002)、再発の増加(HR 1.10, P=0.003)と関連していた。多変量解析でも、HLA-B不一致ハプロタイプにおける高HED(≥7.8 vs <7.8)は、DFSの悪化(HR 1.53, P=0.01)、再発の増加(HR 1.61, P=0.02)と関連した。
この結果は、HLA-Bアリルの免疫ペプチドーム提示が、ドナーT細胞が教育されたHLA-Bアリルとは異なるペプチド結合特性を持つことにより、障害されることに起因する可能性がある。
HEDの重要性はHLA一致移植と異なっている可能性があり、今後も検討していく必要があると考える。

2024年10月28日 森口 慎

CAR T cells vs bispecific antibody as third- or later-line large B-cell lymphoma therapy: a meta-analysis.
大細胞型B細胞リンパ腫における3次治療以降の治療として、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体はどちらが良いか:メタアナリシス
Kim J, et al. Blood. 2024 Aug 8;144(6):629-638.

このメタアナリシスでは再発/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)に対するCAR-T療法および二重特異性抗体の有効性と安全性を評価する。r/r DLBCLの3次またはそれ以降の治療ラインとして、CAR-T療法とCD20×CD3二重特性抗体を評価した。2023年7月までの試験について、MEDLINE, Embase, Cochraneのデータベースを検索した。random-effects modelを用いて関連する共変量を調整し回帰分析を行うことで完全奏効率(CRR)と副次的項目を推定した。1,347人の患者を対象とした16件の研究が統合解析に含まれた。二重特異性抗体のpooled CRRは0.36であったのに対し、CAR-T療法のpooled CRRは0.51であった(p<0.01)。二重特異性抗体群内のCAR-T療法未治療患者と比較してもCAR-T療法の方が優位であった。多変量メタ解析でdouble-hit lymphomaの割合を調整しても、CAR-T療法がより有効と考えられた。1年の無増悪生存も、二重特異性抗体が0.32 vs CAR-T療法0.44 (p < .01)と同様であった。grade≥3の有害事象については二重特特異性抗体でCRS 0.02、神経毒性 0.01、感染症 0.10、CAR-T群でCRS 0.08、神経毒性 0.11、感染症 0.17と、最初の2つのカテゴリーで有意差が観察された。CAR-T療法は、重篤な有害事象が増加するが、より高いCRRを達成し、二重特異性抗体を上回る。

2024年10月21日 堤 美菜子

Molecular and clinical presentation of UBA1-mutated myelodysplastic syndromes.
UBA1変異骨髄異形成症候群の分子像と臨床像
Sirenko M, et al. Blood. 2024 Sep 12;144(11):1221-1229.

VEXAS症候群の疾患定義となるUBA1の変異は、MDSと診断された患者の一部においてみられる。本研究では、MDS患者の代表的なコホートにおけるUBA1変異の有病率と臨床的関連性を検討している。MDSの定義となる遺伝子変異またはWHO分類ではMDSに分類しきれないMDS(やMDS/MPN)男性患者375人を、3323人のMDS患者から選択したコホートA(=UBA1変異をもちそうな群を予想して抽出)を、ddPCRで検討したところ、UBA1 p.M41T/V/L変異を有する患者28人(7%)が特定された。
MDS全体における病的変異率およびp.M41 遺伝子座以外の新規変異を検討するため、MDSコホートB (n = 2027)での UBA1の標的シーケンス解析を行ったところ1.7%にUBA1変異(1%にUBA1病的変異)が特定された。
コホート全体では、UBA1病的/可能性が高い変異を有する患者は40人となり、全員が男性であった(VUS14名には女性3名が含まれた)。63%がWHO 2016年基準によりMDS-MLDまたはMDS-SLDと分類され、病的変異例ではIPSS-M低リスクMDSの割合が多かった。p.M41変異例でVAF2%以上の患者全員に、血液細胞に空胞が見られた。UBA1病的変異に合併する変異は、TET2(n = 12)、DNMT3A(n = 10)が多かった。
UBA1変異MDS患者レトロスペクティブ臨床レビューでは、UBA1病的変異34例中28例(82%)がVEXAS症候群に関連する症状、または炎症(症状または検査所見)を示していた。今回示したMDS患者におけるUBA1変異の頻度から、MDSの管理においてUBA1の系統的なスクリーニングを行うべきであることを示唆した。

2024年09月30日 中前 美佳

Reduced Intensity transplantation vs chemotherapy in CR1. A prospective, pseudorandomized study in 50-70 year old AML patients.
50~70歳の第一寛解期AML患者を前向きに疑似ランダム化行って、強度減弱前処置移植と化学療法のみの予後比較
Brune M, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Dec 1;59(12):1676-1682.

本臨床試験の目的は、50~70歳の中・高リスクAML患者を対象として、強度減弱前処置後の造血幹細胞移植(RICT HCT)と標準化学療法を、ドナーあり対ドナーなしのコンセプトで比較する国際多施設共同前向き疑似ランダム化試験である。パート1では、家族ドナーの可能性がある患者(RD)のみを対象とし、ドナー候補同胞の初めてのHLAタイピング日、もしくはそれ以降であればCR到達日をエントリー日とした。パート2では、同胞ドナーのない患者が組み入れられ、非血縁ドナー(URD)の検索開始日を組み入れ日とした。360例の患者が登録され、309例が解析された。追跡期間中央値は47ヵ月(1-168)であった。全生存期間(OS)にRD群(n=124)と対照群(n=77)の間に差はなかった(p=0.50、3年OS RD群:0.41(95%CI;0.32-0.50)、対照群:0.49(95%CI;0.37-0.59))。主な死因は再発であった(RD群67%、対照群88%)。パート2では、3年OSはURD-HCT(n=86)で0.60(95%CI0.50-0.70)、コントロール(n=20)でそれぞれ0.37(95%CI0.13-0.62)であった(p=0.10)。パート2の移植患者を解析すると、3年後のOSはURD-HCTの方がRD-HCTより高かった(0.67(0.55-0.76)対0.42(0.26-0.57;p = 0.005)。
この研究は、初回CRでRICT HCTを受ける高齢AML患者のドナーとして、高齢HLA同胞を支持するものではない。

2024年09月09日 中嶋 康博

Intensive induction chemotherapy vs hypomethylating agents in combination with venetoclax in NPM1-mutant AML.
NPM-1変異陽性AMLにおける寛解導入療法 強化化学療法 vs VEN/HMA
Bewersdorf JP, et al. Blood Adv. 2024 Sep 24;8(18):4845-4855.

60歳以上のNPM-1変異陽性AML患者に対して強力化学療法(IC; intensive chemotherapy)と低メチル化剤+ベネトクラクス(VEN/HMA)のどちらが優れているかは不明である。
 我々は新規の60歳以上のNPM-1変異陽性AML患者に対する治療効果を比較するために、国際的な多施設における後方視的コホート研究を行った。
 221例(IC 147、VEN/HMA 74)の未治療NPM-1変異陽性AML患者を対象とした。寛解率は同等であった(IC 85% vs VEN/HMA 74%, p=0.067)。 2年全生存率においては、全コホート患者でIC群が良好であったが(IC 59% vs VEN/HMA 38%, p=0.013)、60~75歳の患者(IC 60% vs VEN/HMA 44%, p=0.069)や移植を受けた患者(IC 70% vs VEN/HMA 66%, p=0.56)に限ると有意差は認めなかった。サブグループ解析では染色体異常をもたない患者(IC 65% vs VEN/HMA 40%, p=0.009)やFLT3-ITD変異をもたない患者(IC 68% vs VEN/HMA 43%, p=0.008)ではICの方が良好な成績が得られるかもしれない結果であった。
  多変量解析ではICまたはVEN/HMAの治療選択は全生存率に有意な影響を与えなかった(HR for death VEN/HMA vs IC: 0.71; 95%CI:0.40-1.27, p=0.25)。

2024年09月02日 西本 光孝

Sequential CD7 CAR T-Cell Therapy and Allogeneic HSCT without GVHD Prophylaxis.
CD7CART細胞療法とGVHD予防を伴わない同種移植の逐次療法
Hu Y, et al. N Engl J Med. 2024 Apr 25;390(16):1467-1480.

再発難治性の血液腫瘍患者の予後は不良である。同種造血幹細胞移植(同種移植)への橋渡しとしてのCART細胞療法は、長期的な腫瘍除去の可能性がある。 しかし、同種移植前の前処置やGVHD予防により残存CAR T細胞を駆逐して抗腫瘍効果を損なう可能性がある。我々は、再発難治性のCD7陽性血液腫瘍患者10人を対象に、CD7 CAR T細胞療法と同種移植を連続的に実施する新規の「オールインワン」戦略を開発し、評価した。CART細胞療法により不完全な血液学的回復を伴う完全寛解(CRi)が得られた後、患者は前処置やGVHD予防なしでHLA半合致同種造血幹細胞移植を受けた。同種移植後13日目に敗血症性ショックとHHV6脳炎で1例が死亡、8例が完全なドナーキメラを獲得し、1例が自家造血を回復した。3例がGr2の同種移植関連急性GVHDを認めた。CART細胞療法後の追跡期間中央値は15.1ヵ月であった。6人の患者が微小残存病変陰性の完全寛解を維持し、2人がCD7陰性の白血病再発を認め、1人が3.7ヵ月目に敗血症性ショックで死亡した。推定1年全生存率は68%(95%CI:43~100)、推定1年無病生存率は54%(95%CI:29~100)であった。今回の所見から、CD7 CAR T細胞療法とHLA半合致同種移植の逐次併用は、安全かつ有効な治療法であることが示唆された。

2024年08月19日 幕内 陽介

Unrelated donor transplantation with posttransplant cyclophosphamide vs ATG for myelodysplastic neoplasms.
MDSに対する非血縁者間移植におけるPTCy vs ATG (EBMTレトロ)
Chalandon Y, et al. Blood Adv. 2024 Sep 24;8(18):4792-4802.

前向きランダム化試験で、非血縁ドナー(UD)からの同種造血細胞移植では、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ベースのGVHD予防のメリットが報告されている。しかし、移植後シクロホスファミド(PTCy)の使用増加により、最適なGVHD予防戦略が最近の課題だ。我々は、EBMTレジストリから、PTCyまたはATGを用いたUD移植を受けたMDS患者960人の結果を報告する。主要結果は、全生存率(OS)と無増悪生存率(PFS)。疾患特徴は両群間で同様だった。 Day28の好中球生着率はATG群で有意に良好(93% vs. 85%、p<0.001)。追跡期間中央値は4.4年 (95% 信頼区間 [CI] 4.2-4.8) で、5年OSはPTCy群で58% (50-65)、ATG群で49% (46-53) (p=0.07)。5年PFSはPTCy群で53% (45-60)、ATG群で44% (40-48)とPTCyが有意に良好 (p=0.043)。Grade II-IV急性GVHDの発生率はPTCy群が有意に低かった (23% [17-29] vs 30% [27-33]、p=0.044)。一方、慢性GVHD の5年発生率には差がなかった。多変量解析では、PTCy群がATG群よりOSとPFSが良好で、ATG群のOSのHRは1.32 (1-1.74)、p=0.05、PFSのHRは1.33 (1.03-1.73)、p=0.03。本研究は、MDSに対するUD移植ではGVHD予防にATGではなくPTCyを使用することが有効な選択肢であることを示唆した。これらの結果を確認するには前向きランダム化研究が必要だ。

2024年08月05日 久野 雅智

Deep learning predicts therapy-relevant genetics in acute myeloid leukemia from Pappenheim-stained bone marrow smears.
メイギムザ染色したAMLの骨髄スメアから治療選択上重要な意味を持つ 遺伝子異常をディープラーニングによって予測する
Kockwelp J, et al. Blood Adv. 2024 Jan 9;8(1):70-79.

AMLの早期治療決定において遺伝子異常の検出は重要である。遺伝子検査は高価で時間がかかるため、迅速かつ利用しやすい検査法によって遺伝子検査の結果を予測することが望まれている。
我々は普通染色した骨髄スメアの単一細胞スキャン画像から直接遺伝子異常を予測する完全自動化end-to-end deep learning pipelineを開発した。我々はこのパイプラインを使用してAML患者408例から200万枚以上の単一細胞画像からなるマルチテラバイトデータセットをコンパイルした。これらの画像は治療選択上重要な意味を持つ遺伝子異常を予測するための畳み込みニューラルネットワークの学習に使用された。さらに、我々はAML患者71例から44.4万枚以上の単一細胞画像からなる検証データセットを作成した。このパイプラインから作成されたモデルは遺伝子異常保有サブグループを有意に予測することがROC解析のAUCから示された。
潜在的な遺伝子型と表現型の関連性を2つの異なる戦略で可視化した。我々のパイプラインは、AMLの治療選択上重要な遺伝子異常をルーチンの普通染色された骨髄スメアから直接スクリーニングするための迅速かつ安価な自動化ツールとして利用できる可能性を秘めている。また、将来的には他の血液疾患に対しても同様のアプローチを開発するための基盤となる。

2024年07月29日 井戸 健太郎

Depleting myeloid-biased haematopoietic stem cells rejuvenates aged immunity.
骨髄偏向造血幹細胞の除去により老化した免疫は若返る
Ross JB, et al. Nature. 2024 Apr 1;628(8006):162-170.

免疫系の老化は、リンパ球産生の減少、適応免疫の低下、炎症の増加、そして骨髄系病変の増加によって特徴づけられる。自己再生能力を持つ造血幹細胞(HSC)の集団における年齢に関連した変化が、これらの現象の根底にあると考えられている。若年期には、リンパ球と骨髄系細胞のバランスの取れた出力を持つHSC(bal-HSC)が骨髄系に偏った出力を持つHSC(my-HSC)よりも優勢であり、適応免疫応答の開始に必要なリンパ球産生を促進し、炎症を引き起こす可能性のある骨髄系細胞の産生を抑制している。老化に伴い、my-HSCの割合が増加し、リンパ球産生が減少し、骨髄系細胞産生が増加する。bal-HSCの移植により豊富なリンパ球と骨髄系細胞が得られ、その安定した表現型は二次移植後も維持される。my-HSCも二次移植後にその産生パターンを保持する。これらの二つのサブセットの起源および潜在的な相互変換は依然として不明である。もしこれらが出生後に別個のサブセットであるなら、老化したマウスにおいてmy-HSCを除去することで老化表現型を逆転させることが可能かもしれない。ここで、老化したマウスにおいて抗体を用いたmy-HSCの除去が、若年期の免疫系の特徴を回復させることを示す。これには、共通リンパ球前駆細胞、ナイーブT細胞およびB細胞の増加、ならびに免疫低下の年齢関連マーカーの減少が含まれる。老化したマウスにおけるmy-HSCの除去は、ウイルス感染に対する一次および二次適応免疫応答を改善する。これらの発見は、my-HSCによって支配される造血系が悪化させる、または引き起こす病気の理解および介入に関連する可能性がある。

2024年07月22日 酒徳 一希

Younger unrelated donors may be preferable over HLA match in the PTCy era: a study from the ALWP of the EBMT.
PTCy時代において若年ドナーはHLA適合よりも優先すべきかもしれない:欧州血液骨髄移植学会急性白血病ワーキングパーティーの研究
Sanz J, et al. Blood. 2024 Jun 13;143(24):2534-2543.

方法: 欧州血液骨髄移植学会(EBMT)データベースから急性骨髄性白血病(AML)患者で第一寛解期または第二寛解期の移植データを用いて、10/10適合非血縁ドナー(MUD)と9/10適合非血縁ドナー(MMUD)の移植後成績を後方視的に比較検討した。
結果: 1011人の患者が対象となった。ドナー年齢が30歳以上であることは、再発増加、全生存率(OS)/無白血病生存率(LFS)/無GVHD・無再発生存率(GRFS)低下と関連していた。一方、サイトメガロウイルス(CMV)陰性ドナーは、CMV陰性レシピエントに対して良好なLFSを示した。MMUD(vs MUD)および女性から男性への移植は移植後アウトカムに影響を与えなかった。
結論: AML非血縁者間移植において若年ドナー(30歳未満)の選択は、HLA適合度よりも優先すべきかもしれない。

2024年07月08日 中舎 洋輔

CD19-targeted chimeric antigen receptor T-cell therapy in patients with concurrent B-cell Non-Hodgkin lymphoma and rheumatic autoimmune diseases: a propensity score matching study.
B細胞性リンパ腫と膠原病合併患者に 実施したCART治療 傾向スコアマッチング研究
Wang J, et al. Bone Marrow Transplant. 2023 Nov 1;58(11):1223-1228.

自己免疫性疾患は自己抗体を産生するのみでなく、T細胞機能不全も見られる。B細胞性非ホジキンリンパ腫、自己免疫疾患合併患者に対するCD19標的CART治療の安全性や有効性は不明である。電子カルテのデータベースを集計することで自己免疫疾患合併患者と傾向スコアマッチング実施した非自己免疫疾患患者を比較した。2019年1月から2023年1月の間にCART治療を受けた1363人のうち自己免疫疾患合併患者は58人(4.3%)であった。両群のCRS、ICANSの発症率、重症度、対応は同一であった。また両群の次治療もしくは死亡までの時間、OSも同一であった。CARTと輸注後、自己免疫疾患患者の炎症性マーカーは低下、自己抗体も陰性化し、同じようにステロイドや疾患に応じた治療薬も減量可能となった。結論として、CART治療の安全性や効果は自己免疫疾患には影響を与えないず、さらに膠原病の良好なコントロールを得られた。

2024年07月01日 堀内 美令

A phase 2 study of ibrutinib maintenance following first-line high-dose methotrexate-based chemotherapy for elderly patients with primary central nervous system lymphoma.
高齢PCNSL患者における高用量メトトレキサートベースの一次治療に続くイブルチニブ維持療法のphase2試験
Bairey O, et al. Cancer. 2023 Dec 15;129(24):3905-3914.

PCNSLの約70%が高齢発症であるが、高齢患者はHDC-ASCTなどの高強度の治療は困難でありより若年の患者と比較して予後不良(OS中央値:2年未満、PFS中央値:6~16か月)である。イブルチニブは血液脳関門を通過し、再発難治性PCNSLに活性を有する。
本試験ではHD-MTXをベースとした一次化学療法後のイブルチニブ維持療法が1年および2年PFSの点で高齢PCNSL患者に有益かどうか、また、忍容性があるかを検討した。
60-85歳の新規に診断された非免疫不全のPCNSL患者でHD-MTXをベースとした初回化学療法が奏功(MRIでPRまたはCR)した患者20例を対象にイブルチニブ維持療法(560mg/日を連日経口投与)を行った。イブルチニブは有害事象により継続不可または病勢進行まで継続された。
結果は1年および2年PFSは90%、72.6%、2年OSは89%であった。中枢再発5例、Grade2を中心とした有害事象7例の計12例で投与中止となった。再発5例はすべて死亡した一方、有害事象で中止となった患者は前例生存し、うち再発は中止後30か月後の81歳の1例のみであった。有害事象は中止例を含めてほとんどがGrade2以下であり、神経認知機能およびQOLも少なくとも悪化は認めなかった。
本試験はイブルチニブ維持療法は高齢患者にも忍容性があり、PFSとOSに及ぼす影響についてさらなる評価がなされるべきであるという考えを支持するものである。

2024年06月24日 棚田 悠介

Pretransplant Blinatumomab Improves Outcomes in B Cell Acute Lymphoblastic Leukemia Patients Who Undergo Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation.
移植前のブリナツモマブは同種造血細胞移植を受けたB細胞性急性リンパ芽球性白血病患者の予後を改善する
Sayyed A, et al. Transplant Cell Ther. 2024 May 1;30(5):520.e1-520.e12.

背景
二重特異性モノクローナル抗体であるブリナツモマブは、難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を効果的に制御し、測定可能残存病変(MRD)陰性を促進する。本研究では、B-ALL患者における移植前のブリナツモマブが同種造血細胞移植の転帰に及ぼす影響について検討した。
方法
2010年から2021年の間にトロントのプリンセス・マーガレット病院でB-ALLに対して同種造血幹細胞移植を受けた成人117例を対象に、移植前ブリナツモマブが移植転帰に及ぼす影響を解析した。評価した転帰は、全生存期間(OS)、移植片対宿主病および無再発生存期間(GRFS)、累積再発率(CIR)、および非再発死亡率(NRM)である。
結果
追跡期間中央値は36ヵ月であった。31人(26.5%)がブリナツモマブを投与された。ブリナツモマブ投与群では、高疾患リスク指数、初回導入療法不応の割合が高く、抗胸腺細胞グロブリンによる二重T細胞枯渇療法および移植後のシクロホスファミド投与を受ける割合が高かった。ブリナツモマブ群と非ブリナツモマブ群の2年OS、GRFS、NRM、CIRはそれぞれ以下の通りであった: 65.4%対45.6%(P = 0.05)、42.2%対17.3%(P = 0.01)、3.2%対43.0%(P = 0.007)、34.4%対14.4%(P = 0.02)であった。ブリナツモマブは100日目のグレード2~4およびグレード3~4の急性移植片対宿主病(aGVHD)の発生率の低下と関連していた: それぞれ27.5%対56.7%(P = 0.009)、10.9%対34.7%(P = 0.04)であった。多変量解析により、移植前のブリナツモマブとOSおよびNRMの改善との関連が確認された。
結論
移植前のブリナツモマブは、同種造血幹細胞移植を受けたB-ALL患者におけるOSの改善とNRMのリスク低下と関連しており、これはこの集団における治療関連毒性の負担の低さを反映していると考えられる。この知見を検証するためには、より大規模な前向き試験が必要である。

2024年06月17日 小山 翼

Birtamimab plus standard of care in light-chain amyloidosis: the phase 3 randomized placebo-controlled VITAL trial.
軽鎖アミロイドーシスにおけるBirtamimabと標準治療の併用療法:第3相無作為化プラセボ対照試験(VITAL試験)
Gertz MA, et al. Blood. 2023 Oct 5;142(14):1208-1218.

ALアミロイドーシスは異常免疫グロブリン軽鎖の蓄積により種々の臓器障害を生じる疾患である。Birtamimabは、有害な軽鎖凝集体を中和し、マクロファージによる貪食を介して不溶性アミロイドを除去するヒト化モノクローナル抗体である。本試験では心病変を有する初発ALアミロイドーシス患者260名を、Birtamimab+標準治療またはプラセボ+標準治療の2群に無作為に割付し、Birtamimabの有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、すべての死亡または初回試験薬投与後91日以降での心イベント入院までの時間とした。有害事象は両群で同等であった。症例全体ではBirtamimabの優位性は示されず、試験は早期に終了した。しかし、Mayo stage IVの患者に限った事後解析では、試験薬開始9ヶ月時点においてBirtamimab群で生存率が有意に高かった(Birtamimab群 74%、プラセボ群 49%)。この事後解析の結果を受けて、現在Mayo stage IV患者を対象とした確認的第3相臨床試験(AFFIRM-AL)が進行中である。

2024年06月10日 八木 尚子

Remission induction versus immediate allogeneic haematopoietic stem cell transplantation for patients with relapsed or poor responsive acute myeloid leukaemia (ASAP): a randomised, open-label, phase 3, non-inferiority trial.
再発または治療反応不良急性骨髄性白血病に対する再寛解導入療法と即時移植の比較(ASAP試験)
Stelljes M, et al. Lancet Haematol. 2024 May 1;11(5):e324-e335.

同種移植が予定されている治療反応不良または再発AMLにおいて、移植前に完全寛解をもたらすために投与される大量シタラビンベースの救援化学療法が生存に利点をもたらすかどうかは不明である。今回、同種移植前の救援化学療法の有効性を検証するため、18~75歳の初回寛解導入療法後に寛解に至らなかった、または未治療の再発かつ予後良好群でないAML患者を、大量シタラビンベースの再寛解導入療法群と、即時同種移植を行う対照群に無作為に割り付けた。2015年9月17日から2022年1月12日の間に281人が参加した。対照群に割り付けされた140人のうち、135人(96%)が同種移植に進んだ。再寛解導入群に割り付けされた141人のうち、134人(95%)が救援化学療法を受け、128人(91%)が引き続いて同種移植に進んだ。
主要評価項目は治療成功で、同種移植後 56 日目の完全寛解と定義され、再寛解導入と比較して対照群の非劣性を示すことを目的とし、非劣性マージンを5%および片側検定で第一種の過誤を2.5%とした。主要評価項目はintention-to-treat(ITT)集団とper-protocol集団の両方で解析された。ITT集団において、対照群では140人中116人(83%)で治療成功を認め、再寛解導入群では141人中112人(79%)だった(非劣性検定 p=0.036)。Per-protocol集団では、治療成功は対照群で138人中116人(84%)、再寛解導入群で134人中109人(81%)だった(非劣性検定 p=0.047)。ランダム化から同種移植の間で、対照群は入院期間が中央値で27日再寛解導入群と比較して短く、入院期間中央値はそれぞれ15日と42日だった。治療成功に関して、2.5%の有意水準では対照群の非劣性は示されなかった。幹細胞ドナーのいる治療反応不良もしくは再発AML患者において、慎重な経過観察後、直ちに移植を行う方法は代替戦略となり得る。活動性のあるAMLにおける移植前の適切な治療を定義するため、移植を前提とした更なるランダム化対照試験が必要である。


2024年06月03日 田中 静大

Infection risk and antimicrobial prophylaxis in bendamustine-treated patients with indolent non-Hodgkin lymphoma: An Australasian Lymphoma Alliance study.
低悪性度非ホジキンリンパ腫に対するベンダムスチン治療患者の 感染リスクと予防
Manos K, et al. Br J Haematol. 2024 Jul 1;205(1):146-157.

ベンダムスチン関連の確立された合併症として, 感染症とリンパ球減少が挙げられる. しかし, リンパ球減少の重症度と感染症リスクとの関係, 抗菌薬予防の役割については十分に説明されていない. このオーストラリアでの多施設後方視的研究では, ベンダムスチンを投与された低悪性度非ホジキンリンパ腫302例における感染症と抗微生物薬の薬予防について解析した. 結果, リンパ球減少(<1000 /μL)はほぼ全例に認め, リンパ球回復までの時間はベンダムスチン累積投与量と相関していた. リンパ球減少の重症度と感染症の関連は認められなかった. 感染症発症はオビヌツズマブまたは抗CD20抗体による維持療法, 前治療歴, 病期との関連が認められた. 21症例で24件の日和見感染の発症を確認した. 帯状疱疹/単純ヘルペスウイルスの予防薬は42%の症例で処方され,処方された群で有意に発症が少なかった. ニューモシスチス肺炎(PCP)の予防薬は54%に処方された. PCP発症が全体で1例のみであったため予防と発症の解析は不可能であったが, 予防群では細菌感染においても有意な減少を認めた. 本研究は重要な感染症リスクを報告し, そのリスクを軽減するための予防投与を支持するものである.

2024年05月27日 八重 秀克

A convolutional neural network-based model that predicts acute graft-versus-host disease after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
同種造血幹細胞移植後の急性GVHDを予測するCNNモデル
Jo T, et al. Commun Med (Lond). 2023 May 16;3(1):67.

同種造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(aGVHD)の予測は, 複雑なパラメータとそれらの相互作用のため, 従来の統計的手法では非常に困難である. また, HLA情報も一致/不一致の二値分類に落とし込んでおり, 本来のHLAの情報を使用することが望ましい. 本研究では畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用い, これらを考慮したモデルの開発を行った. TRUMPデータを用いて2008年から2018年の間に同種造血幹細胞移植を受けた成人患者を解析した. HLA情報はWord2Vecを用いてベルトル化し生の情報を説明変数として用いた. 18,763例を対象とした解析で, grade II-IVのaGVHDが42.0%, grade III-IVのaGVHDが15.6%で生じた. 本リスクモデルを用いることで, aGVHDリスクを層別化することができた. 加えて, 我々のCNNベースのモデルは学習過程を可視化した. また, HLA情報以外の移植前パラメータのaGVHDリスクへの寄与が明らかになった. 以上より本研究の結果は, CNNによる急性GVHDリスク予測モデルが臨床における意思決定のための貴重なツールとして役立つことを示唆している.

2024年05月20日 仲子聡一郎

Reduced Cytokine Release Syndrome and Improved Outcomes with Earlier Immunosuppressive Therapy in Haploidentical Stem Cell Transplantation.
ハプロ移植における早期免疫抑制療法によるサイトカイン放出症候群の軽減と移植成績の改善
Tang J, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Apr 1;30(4):438.e1-438.e11.


HLA半合致同種造血幹細胞移植(ハプロ移植)において、免疫抑制剤と移植後シクロホスファミド(PTCy)の適切な開始時期はまだ明確ではない。移植後のサイトカイン放出症候群(CRS)は予後の悪化と関連しており、その発生率は免疫抑制剤とPTCyの開始時期に影響を受ける。本研究では、異なる時期に免疫抑制剤とPTCyを投与した2群のCRS発生率と移植予後を後方視的に比較した。91例のハプロ移植を受けた患者を対象に、標準的なGVHD予防法ではPTCyをday +3, +4に、FK・MMFをday +5に開始した。修正GVHD予防法ではPTCyをday +3, +5、FKをday -1、MMFをday 0に開始した。その結果、標準法では82%がGrade 1以上のCRSを、修正法では32%が示した。また、Grade 2以上のCRSは標準法で57%、修正法では16%であった。III-IV度のaGVHDと全身型cGVHDの1年発生率は修正法で有意に少なく、修正法は生存率、再発率、GVHD/再発無生存(GRFS)において良好な傾向が見られた。さらに、修正法では抗菌薬の使用期間や入院期間も有意に短縮した。事後解析では、CRSがGRFSの有意な悪化と関連していることが確認された。

2024年05月13日 森口 慎

Molecular MRD is strongly prognostic in patients with NPM1-mutated AML receiving venetoclax-based nonintensive therapy.
ベネトクラクス併用非強化治療を受けたNPM1変異を有するAML患者において分子レベルのMRDは強力な予後因子である
Othman J, et al. Blood. 2024 Jan 25;143(4):336-341.

強化化学療法を受けたNPM1変異を有するAML患者において,定量的RT-PCRによるMRDは強い予後因子である.しかし,ベネトクラクス併用非強化治療においてはその有用性に関するデータはない.ベネトクラクス併用治療を受け,完全寛解(CR)または正常な血液細胞の回復が不完全な寛解(CRi)を達成したNPM1変異を有するAMLの76例の未治療患者を対象に,NPM1のMRDの予後への影響を分析した.ベネトクラクスとの併用薬である低メチル化剤(アザシチジン,デシタビン)と低用量シタラビンとに有意差は認めず,76例のうち, 44例(58%)は骨髄MRD陰性群, 14例(18%)は反応良好群(ベースラインから4 log10以上の減少)であった.2,4,6サイクル終了時の骨髄MRD陰性の累積率はそれぞれ25%,47%,50%であった.4サイクル終了時に骨髄MRD陰性を達成した患者の2年間のOSは84%である一方,MRD陽性では46%であった.多変量解析では,MRD陰性が最も強い予後因子であった.骨髄MRD陰性の寛解を達成した後,中央値8サイクルで治療を選択的に中止した22例において, 2年間の治療フリー寛解率は88%であった.ベネトクラクス併用療法で寛解を達成したNPM1変異を有するAML患者では,NPM1 MRD1が予後について有用な情報となり得る.

2024年04月22日 川添 麻衣

Prediction model for EBV infection following HLA haploidentical matched hematopoietic stem cell transplantation.
ハプロ移植後におけるEBV感染症の予測モデル
Cao XH, et al. J Transl Med. 2024 Mar 6;22(1):244.

Aims:allo-HSCTは血液悪性腫瘍の効果的な治療法であるがウイルス感染、特にEBV感染が頻繁に発生しうる。EBVは複数の組織や臓器を損傷したり移植後リンパ増殖性疾患に進行する可能性があり、予後にも影響を与えうる。そこでallo-HSCT後のEBV感染予測モデルを開発することを目的とした。 Methods:2019年9月~2020年12月にhaplo-HSCTを受けた合計466人を用いた。移植時期によってderivation cohortとvalidation cohortの2つに分けられ、haplo-HSCT後1年以内のEBV感染のリスクを予測するためのgrading scaleを開発および検証した。健常ドナーの骨髄でのsc-RNAseqデータを利用して免疫細胞とウイルス感染に対する年齢の影響について評価を行った。 Results:ドナー年齢、female to male、graft内の単核細胞量、CD8陽性細胞量の4つの予測因子が特定された。EBV再活性化予測スコアシステムが構築され両コホートで識別能力を示し、スコアリングシステムでリスクを群別化すると、EBV再活性化について群間の有意差を示した。sc‐RNAseqデータ解析では、高齢が免疫サブセットの量と質に大きく影響し、EBV感染リスクが上昇する可能性がある。また高齢ドナーのCD8+T細胞で「ウイルス発がん」経路が、CD14+単球で「宿主細胞へのウイルス侵入の調節」経路が豊富であることが示され、 高齢ドナーでウイルス感染を生じやすい可能性を示唆した。  Conclusion:ハプロ造血幹細胞移植後のEBV再活性化を予測するための効果的なスコアリングシステムの開発とその検証を行った。かつ健康なドナーの骨髄のsc-RNAseq解析に基づいて、ドナー年齢が、免疫サブセットとウイルス感染への感受性に対して影響を与えうることを示した。

2024年04月15日 堤 美菜子

Updated comparable efficacy of cord blood transplantation for chronic myelomonocytic leukaemia: a nationwide study.
慢性骨髄単球性白血病に対する臍帯血移植の有効性に関する全国的研究
Kurosawa S, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Jun 1;59(6):742-750.

慢性骨髄単球性白血病(CMML) は予後不良の血液悪性腫瘍であり、同種造血幹細胞移植が唯一の治療法である。HLA適合同胞ドナーが存在しない場合、最適な代替ドナーは未だ確立されていない。CMMLに対する非血縁者間骨髄移植 (UBMT) は広く研究されているが臍帯血移植(CBT) は未だほとんど研究されていない。
今回の全国規模の後ろ向き研究ではCMML患者におけるUBMTと単一臍帯血ユニットを用いたCBTの転帰を比較した。2013~2021年に初回の同種造血幹細胞移植を受けた患者118人が対象となり、このうち50人がBMTを受け(UBMT群)、68人がCBTを受けていた (CBT群)。
主要評価項目は3年全生存率(OS)で、UBMT群(51.0%、95%信頼区間[CI]: 34.1-65.5%)とCBT群(46.2%、95%CI: 33.2-58.1%、P=0.60) で同等であった。IPTWでは、CBTはUBMTと比較して3年生存率に関して有意な転帰の改善を示さなかった(ハザード比0.97 [95%CI: 0.57-1.66]、P = 0.91)。
CBTはCMML患者に対するUBMTの代替療法となり得る。移植戦略を最適化し、CBTを受けたCMML患者の転帰を改善するためには、さらなる研究が必要である。

2024年03月18日 芝野 郁美

Incidence, clinical presentation, risk factors, outcomes, and biomarkers in de novo late acute GVHD.
de-novo後期急性GVHDの発生率、臨床像、危険因子、転帰、バイオマー カー
Akahoshi Y, et al. Blood Adv. 2023 Aug 22;7(16):4479-4491.

後期急性移植片対宿主病(GVHD)は、慢性GVHDの症状を伴わない、同種造血細胞移植(HCT)後100日を超えて発症するde novo急性GVHDと定義される。その特徴、臨床経過、および危険因子に関するデータは、認知度の低さと分類の変更により限られている。われわれは、後期急性GVHDの臨床経過と転帰をよりよく説明するために、2014年1月から2021年8月までの間に、Mount Sinai Acute GVHD International Consortium(MAGIC)の24施設で、初回HCTを受けた連続成人レシピエント3542例を評価した。全身治療を必要とした古典的急性GVHDの累積発生率は35.2%で、さらに5.7%の患者が後期急性GVHDの治療を必要とした。症状発現時、後期急性GVHDは臨床的およびMAGICアルゴリズム確率バイオマーカーパラメーターの両方に基づいて古典的急性GVHDよりも重症であり、28日目の全奏効率が低かった。治療時の臨床的評点とバイオマーカー評点の両方が、それぞれ古典的急性GVHD患者と後期急性GVHD患者の非再発死亡(NRM)リスクを層別化したが、長期NRMと全生存率は古典的急性GVHD患者と後期急性GVHD患者で差がなかった。高年齢、女性ドナー・男性レシピエントの性不一致、強度減弱コンディショニングの使用は後期急性GVHDの発症と関連していたが、移植後のシクロホスファミドベースのGVHD予防の使用は、主にGVHDの時期がずれるために予防的であった。全体的な転帰は同等であったため、確定的なものではないが、今回の知見は、臨床試験の適格性を含め、発症時の臨床症状のみに基づく同様の治療戦略が適切であることを示唆している。

2024年03月11日 中前 博久

Single-center randomized trial of T-reg graft alone vs T-reg graft plus tacrolimus for the prevention of acute GVHD.
急性GVHD予防のためのT-reg移植片単独 vs T-reg移植片+タクロリムスの単施設ランダム化試験
Bader CS, et al. Blood Adv. 2024 Mar 12;8(5):1105-1115.

同種造血細胞移植(HCT)は、血液悪性腫瘍に治癒をもたらしうる治療法であるが、依然として移植片対宿主病(GVHD)が致死的な合併症である。GVHDを予防するためのドナー制御T細胞(Treg)の使用は有望で、筆者らは以前に、CD34+造血幹細胞と高純度Tregを移植した数日後に、従来のT細胞を移植する方法を報告した。ただし、免疫抑制剤を前回のプロトコルから削除できるかどうかは不明のままである。 そこで筆者らは、HLA一致および9/10一致レシピエントの骨髄破壊的HCTにおけるT-reg移植片を調査する非盲検単一施設第2相試験(NCT01660607)の第1段階の結果を報告する。
24人の患者は、T-reg移植片のみ(n = 12)またはT-reg移植片と単剤GVHD予防療法(n = 12)を受ける群に無作為に割り付けられ、T-reg移植片のみが急性GVHD予防において劣っていないかどうかを判定した。すべての患者はフルドナー骨髄キメラを達成した。T-reg移植単独の患者と予防治療を受けた患者では、グレード2~4の急性GVHDの発生率がそれぞれ58%対8%(P=0.005)、グレード3~4の急性GVHD発生率が17%対0%(P=0.149)であった。中等度から重度の慢性GVHDの発生率は、T-reg移植単独群で28%、予防治療群では0%でした(P = 0.056)。T-reg移植と予防治療薬を受けた患者では、移植後にCD4+T細胞対Tregの比率が低下し、遺伝子発現プロファイルではCD4+増殖の低下が示され、完全ドナーT細胞キメラ化の達成が遅れた。
以上の結果から、急性GVHDの予防には、T-reg移植単独よりもタクロリムス単剤併用によるT-reg移植の方が好ましいことが示された。

2024年03月04日 中嶋 康博

Advances towards genome-based acute myeloid leukemia classification: A comparative analysis of WHO-HAEM4R, WHO-HAEM5, and International Consensus Classification.
ゲノムに基づく急性骨髄性白血病分類の進歩:改訂WHO-4版、WHO-5版、国際コンセンサス分類の比較解析
Chen X, et al. Am J Hematol. 2024 May 1;99(5):824-835.

 WHO分類第5版(WHO-5)および国際コンセンサス分類(ICC)が2022年に発表された。両者ともゲノム上の特徴をより強く反映した分類である。本研究では、従来の遺伝子検査や染色体解析に加えNGSやWTSなど高度なゲノム検査も行ったうえで分類を検討した。  
 対象は、改訂WHO4版で診断された1135例のAML。新しい両基準で再分類した結果、WHO-5で89%、ICCで90%において定義的な遺伝子異常が同定された。疾患定義的な遺伝子異常を持たないAML症例(改訂WHO4版およびICCでの名称はAML, NOS、WHO-5での名称はAML defined by differentiation)の割合は、改訂WHO-4分類での24%(n=267)から、WHO-5分類で11%(n=129)、ICC分類で10%へと大幅に減少した。
 AML症例の16%では、新分類間で不一致が認められた。RUNX1変異のみが検出される症例はWHO-5分類では、AML defined by differentiationに分類されるが、ICCではAML with myelodysplasia related gene mutationsに分類されるため相違が生じた。TP53変異を伴うAMLはICC分類では新しい疾患カテゴリとして独立したがWHOでは独立していないため相違が生じた。診断の階層性(定義的な遺伝子異常の診断を優先するかAML-MRの診断を優先するか)、稀な遺伝子変異をどこまで定義するかなどでも違いが生じた。また、AMLを定義する遺伝子異常が同時に検出された場合の診断は不明である。
 新基準はどちらも、遺伝子にて診断される割合が増え、形態や分化程度によって定義される疾患分類の症例数は著しく減少した。しかし、その臨床実施は、ゲノムおよびトランスクリプトームレベルを含む包括的かつ高度なゲノム解析に大きく依存する。上記のWHO-5とICCの間の相違についてもさらなる検討が必要である。

2024年02月26日 中前 美佳

Human herpesvirus 6-specific T-cell immunity in allogeneic hematopoietic stem cell transplant recipients.
同種移植患者における HHV-6特異的T細胞免疫
Noviello M, et al. Blood Adv. 2023 Sep 26;7(18):5446-5457.

HHV-6は同種移植後に再活性化(reactivation)し、時に重篤な症状を引き起こす。同種移植後におけるHHV-6特異的な免疫反応はまだ十分にわかっていない。
我々はHHV-6の再活性化と特異的免疫反応を調べるために同種移植を受けた成人連続208名の前向き観察研究を行った。IFN-γ産生HHV-6特異的T細胞はELISpotで評価した。
HHV-6の再活性化は63%の患者で起こり、その中央値は移植後day25であった。再活性化した患者のうち、40%だけがECILのガイドラインで定義される古典的HHV-6の臓器障害(End-organ disease;EOD)にあたる臨床的に有意な感染であり、その他はHHV-6関連の可能性のある臓器障害であった。多変量解析でHHV-6の再活性化のリスク因子としては、同種移植歴、PT-Cy、ステロイドの導入(時間依存的)が同定された。PT-Cyとステロイドの使用は臨床的に有意な感染(EOD)に関連しており、一方で、CD3+細胞高値は感染を防いでいるようであった。興味深いことに、血中のHHV-6特異的T細胞はウイルスが再活性化している患者で有意に高かった。さらに、最初の再活性化から4日後以降のHHV-6特異的T細胞の反応はCD3+細胞数よりも高い感度(93%)と特異度(79%)で臨床的に有意な感染症(EOD)を予測した。HHV-6の再活性化(時間依存的)は全生存率やTRMに影響しなかったが、臨床的に有意な感染症(EOD)と急性GVHDとの間には有意な関連が見られた。
今回の結果は同種移植後のHHV-6の役割に光を当て、HHV-6のモニタリングや治療に影響するかもしれない。

2024年02月19日 西本 光孝

Patterns of CMV infection after letermovir withdrawal in recipients of posttransplant cyclophosphamide-based transplant.
PT-Cy移植後にレテルモビル中止後のCMV感染のパターン
Lin A, et al. Blood Adv. 2023 Dec 12;7(23):7153-7160.

CMVの潜在的再活性化はGVHD予防にPT-Cyを用いた同種移植のレシピエントで増加している。レテルモビル(LET)はDNAターミナーゼ複合体阻害薬で臨床的に意味のあるCMV感染症を減少させている一方、レテルモビル投与終了後のCMV感染症を予測する因子は明らかではない。ここで我々はPT-Cyを用いた同種移植を実施した294患者の臨床的、免疫学的パラメーターを調べ、その294人のうち157人はCMV陽性でうち80人がCMV感染症やレテルモビルを中止することなくレテルモビルでの予防を完遂できた。この集団でのレテルモビル内服期間中央値は203日(160-250日)であった。レテルモビル終了後90日での累積CMV感染症発症率は23%であった。CMVの主要臓器の感染症は見られなかった。
レテルモビル中止前の低ガンマグロブリン血症はCMV感染症を予測でき、レテルモビル中止前のT細胞やB細胞の再構築はCMV感染症を予測できない。CMV感染症を発症した患者ではレテルモビル投与終了前にNK細胞が増加していた。CMV抗原陽性レシピエントではCD3+CD4-CD8+T細胞の再構成がレテルモビル内服の有無に関係なく速かった。これらを踏まえて、これらのデータからはレテルモビル内服を延長してもPT-Cyで治療した患者はレテルモビル中止後のCMV感染症は頻繁に発生することが示唆される。低ガンマグロブリン血症が持続する患者でCMVに特異的な獲得免疫系を活性化させる戦略が、レテルモビル終了後にCMV感染症を減少されることが論理的方法である。

2024年01月29日 堀内 美令

The pre-existing T cell landscape determines the response to bispecific T cell engagers in multiple myeloma patients.
多発性骨髄腫に対する二重特異性T細胞エンゲージメント療法の奏効を決定づける治療前のT細胞環境
Friedrich MJ, et al. Cancer Cell. 2023 Apr 10;41(4):711-725.e6.

二重特異性T細胞エンゲージメント療法(TCE)は、さまざまながん治療において有望な成績が示されているが、TCEに対する初期および獲得性抵抗の免疫学的メカニズムや分子決定因子は未だに十分に理解されていない。本研究では、BCMAxCD3 TCE療法を受ける多発性骨髄腫患者の骨髄中T細胞の一連の移り変わりを示す。免疫レパトアが細胞状態に依存したクローンの拡大でTCE療法に影響を及ぼすことを示し、MHCクラスIを介した腫瘍認識、疲弊、および臨床的奏効の関係性を示すデータを得た。CD8陽性T細胞クローンが多いと臨床的奏効が不良へつながることが分かり、標的エピトープやMHCクラスI喪失がTCEに対する腫瘍固有の順応であることが分かった。これらの知見は、ヒトにおけるTCE治療の生体内メカニズムの理解に役立ち、今後、血液悪性腫瘍に対して免疫療法を実施する際の予測的免疫モニタリングおよび免疫レパトア調整における道しるべとなる。

2024年01月22日 高桑 輝人

Posttransplant MRD and T-cell chimerism status predict outcomes in patients who received allografts for AML/MDS.
移植後のMRD及びT細胞キメリズムの状態は、AML/ MDS患者の予後を予測できる。
Loke J, et al. Blood Adv. 2023 Jul 25;7(14):3666-3676.

同種幹細胞移植は、AML/MDSの患者において根治的な移植片対白血病(GVL)をもたらすことで根治に導くことが出来る。GVL効果を減弱させる因子は未だ明らかではない。我々は、同種移植を受けたAML/MDS患者における、T細胞キメリズムや測定可能病変(MRD)、HLA-DRの発現状況といったバイオマーカーが予後に与える影響について報告する。強度減弱前処置に関するRCT(FIGARO試験)に参加した患者であって、移植後42日目のMRD初回評価時点において無再発生存していた187人を対象とした。29例(15.5%)が移植後少なくとも1回のMRD陽性の結果を得た。MRD陽性群は陰性群と比べて全生存期間(OS)の短縮と有意に関連しており、多変量解析では移植前MRDの結果にかかわらず有意であった。移植後3ヶ月時点で完全ドナーT細胞キメリズムを認めた患者は、混合ドナーT細胞キメリズムを認めた患者と比較してOSが改善した。94人の患者から3ヵ月後及び6ヵ月後にMRDとT細胞キメリズムの結果を連続して得た。3ヶ月及び6ヶ月時点で完全ドナーT細胞キメリズムを認めた患者では移植後MRDの結果はOSやRFSに影響しなかったが、3ヶ月に混合ドナーT細胞キメリズムを認めた患者では、移植後MRD陽性群は陰性群に対して2年OSの減少と関連していた(P = 0.001)。移植後MRD陽性群では、芽球上のHLA-DR発現の低下がOSを有意に低下させたため、GVL脱出のメカニズムとして考えられた。結論として、移植後MRDの結果は、同種移植後AML/MDS患者における予後の重要な予測因子であり、T細胞キメリズムの結果と組み合わせた場合において更に有益であり、AML/MDSにおけるGVL効果の重要性を強調している。

2024年01月15日 幕内 陽介

Selection of Cord Blood Unit by CD34(+) Cell and GM-CFU Numbers and Allele-Level HLA Matching in Single Cord Blood Transplantation.
単一臍帯血移植におけるCD34陽性細胞数、GM-CFU数とHLAアレル一致度による臍帯血ユニットの選択
Morishima Y, et al. Transplant Cell Ther. 2023 Oct 1;29(10):622-631.

本邦では単一ユニットを用いた臍帯血移植(CBT)が通常行われ、過去23年間で数は増加し、成績も改善している。ほとんどの場合に複数座のHLA不一致のCBTが行われるが、生着率が低いことが最も克服すべき問題だ。今回、CBユニットの選択に関するガイドラインを改善する取り組みの一つとして、本邦のCBTの現状を評価し予後良好な因子を明らかにするために、CBユニットの細胞成分とHLAアレル一致度に焦点を当てた。1997/12-2019/12に本邦で初回CBTを受けた13,443人を多変量解析した。年齢、HCT-CIなどの患者因子と移植因子、CBユニットの特徴が解析に含まれた。交互作用解析によって総有核細胞数ではなく、CD34+細胞数と顆粒球マクロファージコロニー形成単位(GM-CFU/kg)が多いCBユニットを選択することが生着率の改善に寄与することを示した。さらに、CD34+細胞数が多いことは全生存の改善に関連した。HLA0-1座アレル不一致は、3座不一致に比べて、有意に生着率が良く、急性GVHDと慢性GVHDは少ないが、白血病再発は多かった。HLA-DRB1不一致は白血病再発リスク低下と関連した。HLAアレル不一致の数の増加は、生着、急性・慢性GVHD、再発に影響しなかった。その結果、5年生存率はHLAアレル不一致数の間で有意差はなかった。CBユニット選択の重要な点は、まずCD34+細胞数/kg、次にGM-CFU/kgがより多いものが良好な生着を得るために推奨される。CD34+:0.5×10^5/kg以上が許容される。CD34+:0.5-1.0×10^5/kgの場合はGM-CFU:20-50×10^3/kgで90%の好中球生着率が達成できる。CD34+:1.0×10^5/kg以上では90%以上好中球生着が達成できる。次に、HLAアレルA, B, C, DRB1でHVG方向0-1座不一致が生着に有利だ。15歳以上では2-6アレル不一致、14歳以下では2-4アレル不一致まで許容される。HLA-DRB1とBの不一致はGVHDリスク増加のため好ましくないかもしれない。十分なCD34+細胞とGM-CFU、HLAアレル一致度で選択した単一ユニットを用いたCBTは、小児と成人の両方で良好な成績を示した。

2023年12月25日 久野 雅智

Inhibition of interleukin-1β reduces myelofibrosis and osteosclerosis in mice with JAK2-V617F driven myeloproliferative neoplasm.
IL-1βの阻害はJAK2-V617FMPNマウスにおける骨髄線維症と骨硬化を減少させる
Rai S, et al. Nat Commun. 2022 Sep 13;13(1):5346.

IL-1βは炎症の主要な調節因子である。IL-1βの活動の増加は、骨髄増殖性新生物(MPN)を含む様々な病理状態に関与していることが示唆されている。ここでは、IL-1βの血清レベルとMPN患者の末梢血中のJAK2-V617F変異アレル分画と相関する造血前駆細胞および幹細胞上のIL-1受容体の発現を示した。MPNのマウスモデルにおけるIL-1βの過剰産生の源はJAK2-V617Fを発現する造血細胞であることを示した。JAK2-V617Fマウスの造血細胞におけるIL-1βのノックアウトは炎症性サイトカインを減少させ、ネスチン陽性ニッチ細胞への損傷を防ぎ、巨核球形成を減少させ、骨髄線維症および骨硬化の減少をもたらした。JAK2-V617F変異マウスにおける抗IL-1β抗体によるIL-1βの阻害もまた、骨髄線維症および骨硬化を減少させ、ルキソリチニブとの相乗効果を示した。これらの結果は、抗IL-1β抗体単独またはルキソリチニブとの併用によるIL-1βの阻害が、骨髄線維症患者の臨床経過に有益な影響を与える可能性があることを示唆している。

2023年12月18日 酒徳 一希

Calcineurin inhibitor inhibits tolerance induction by suppressing terminal exhaustion of donor T cells after allo-HCT.
カルシニューリン阻害薬は同種移植後のドナーT細胞の終末疲弊化を抑制することで免疫寛容の誘導を阻害する
Senjo H, et al. Blood. 2023 Aug 3;142(5):477-492.

カルシニューリン阻害薬を使用したGVHD予防法は同種移植では標準的であるが、慢性GVHDのない長期的な免疫寛容の誘導に成功していない患者も多い。
本研究では、この長年の疑問を同種移植マウスモデルで説明した。同種移植後、アロ反応性ドナーT細胞はすみやかにPD-1+TIGIT+終末疲弊T細胞に分化した。一過性疲弊T細胞は抑制性受容体とエフェクター分子の両方を発現している細胞であるが、シクロスポリンによるGVHD予防法は一過性疲弊T細胞の終末疲弊T細胞への分化を促進するマスター転写因子であるTOXの発現を抑制し、免疫寛容の誘導を阻害した。二次レシピエントマウスへの一過性疲弊T細胞の養子免疫細胞移入実験では慢性GVHDが発症したが、終末疲弊T細胞の移入実験では発症しなかった。一過性疲弊T細胞はアロ反応性を保持しており、PD-1阻害によって一過性疲弊T細胞のGVL効果は復元される。
結論として、シクロスポリンはドナーT細胞の終末疲弊化を阻害することで免疫寛容の誘導を阻害する一方で、そのドナーT細胞は白血病再発を抑制するGVL効果を維持した状態であることがわかった。

2023年12月11日 井戸 健太郎

Eltrombopag for Low-Risk Myelodysplastic Syndromes With Thrombocytopenia: Interim Results of a Phase II, Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial (EQOL-MDS).
血小板減少を伴う低リスク骨髄異形成症候群に対するエルトロンボパグ:第II相無作為化プラセボ対照臨床試験(EQOL-MDS)の中間結果
Oliva EN, et al. J Clin Oncol. 2023 Oct 1;41(28):4486-4496.

【目的】MDSにおいて、重度の血小板減少は予後不良と関連した重要な因子である。この多施設共同試験では、低リスクMDSで重度の血小板減少症を有する患者を対象としたエルトロンボパグの短期有効性と安全性の評価はすでに第1部刷件で示されている。今回、第2部試験において長期有効性と安全性の結果を示す。【方法】IPSS lowまたはint-1 riskの成人MDS患者を対象とし単盲検無作為化プラセボ対照第II相試験において、血小板数<30000/μLの安定した患者に 、疾患の進行を認めるまでエルトロンボパグまたはプラセボを投与した。Primary End Pointは、PLT反応(PLT-R)期間、長期安全性、忍容性であった。PLT-R期間は、PLT-RからPLT-R喪失までの期間と定義され、PLT-R喪失とは出血または血小板数が3万/ μL未満となること、または最終確認日と定義された。Secondary End Pointは、出血の発生率および重症度、血小板輸血、QOL、無白血病生存期間(LFS)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、薬物動態であった。【結果】2011年から2021年にかけて、スクリーニングされた325人の患者のうち、169人がエルトロンボパグ(N=112)またはプラセボ(N =57)に無作為に割り付けられた。開始用量は1日1回50mgで最大300mgであった。追跡期間中央値は25週間で、PLT-Rが発生したのはエルトロンボパグ群47/111例(42.3%)に対してプラセボ群6/54例(11.1%)であった。エルトロンボパグ群では、12/47例(25.5%)がPLT-Rを喪失し、60ヵ月時点の"血小板減少症"無再発累積生存率は63.6%であった。臨床的に重大な出血(WHO bleeding score≧2)は、エルトロンボパグ群でプラセボ群より発生頻度が低かった。Grade1~2の有害事象の頻度に差は認められなかったが、エルトロンボパグ群ではGrade3~4の有害事象を経験した患者の割合が高かった。AMLへの転化または病勢進行は、エルトロンボパグおよびプラセボ群の両群ともに 17%に認められ、生存期間に差は認められなかった。【結論】エルトロンボパグは重篤な血小板減少を伴う低リスクMDSに有効であり、比較的安全であった。

2023年12月04日 八重 秀克

Cytokine release syndrome in haploidentical stem cell transplant may impact T-cell recovery and relapse.
ハプロ移植後のサイトカイン放出症候群はT細胞回復と再発に影響を与える可能性がある
Shapiro RM, et al. Blood Adv. 2023 Aug 8;7(15):4080-4088.

ハプロ移植後に生じるCytokine release syndrome (CRS)は、CAR-T療法後のCRSと類似している。我々はハプロ移植後CRSと臨床経過・免疫再構築との関連性を評価することを目的に、単施設後方視研究を行った。2011年から2020年の間にハプロ移植を行った169人を用いた。これらの 患者のうち98人(58%)が移植後にCRSを発症した。CRSは移植後5日以内に生じる発熱で、感染または輸注後反応を除外したものと診断され、確立された基準に従ってグレード分けされた。ハプロ移植後のCRSの発症は疾患再発の低下と関連した(p=.024)が、慢性GVHDのリスクは増加した(p= .01)。CRSと再発率低下の関連は、graft sourceや診断名とは関係しなかった。graft type問わず、CD34数も総有核細胞数もCRSの発症とは関連しなかった。CRSを発症した患者では、 発症しなかった患者と比べ、CD4陽性Treg、CD4陽性Tcon、CD8陽性T細胞は、移植後1ヵ月で 増加していたが、その後の時点ではその傾向はみられなかった。骨髄graftの移植患者でCRSを発症した群で、移植後1ヵ月のCD4陽性Tregが最も顕著に増加していた。ハプロ移植後のCRS発症は再発率の低下と関連し、T細胞とそのサブセットの移植後免疫再構築に一時的な影響を与える。それゆえ、多施設コホートでの検証が求められる。

2023年11月27日 堤 美菜子

SARS-CoV-2-specific immune responses and clinical outcomes after COVID-19 vaccination in patients with immune-suppressive disease.
免疫抑制患者におけるCOVID-19ワクチン接種後の SARS-CoV-2特異的免疫応答と臨床転帰
Barnes E, et al. Nat Med. 2023 Jul 1;29(7):1760-1774.

2,686名の免疫状態の異なる患者において,2種類のコロナワクチン投与後の免疫応答と感染転帰を評価した.2,204人中255人(12%)が抗スパイク抗体の発現がなく,さらに2,204人中600人(27%)が低レベル(<380 AU ml-1)を示した.ワクチンによる抗体反応を認めなかったのは,リツキシマブ投与中のANCA関連血管炎患者(21/29,72%),免疫抑制療法中の血液透析患者(6/30,20%),固形臓器移植患者(20/81,25%,141/458,31%)で多かった.SARS-CoV-2特異的T細胞応答は580人中513人(88%)で検出され,健常人と比較して,血液透析患者,同種造血幹細胞移植患者,肝移植患者でT細胞の反応が低かった.BNT162b2(mRNAワクチン)は、ChAdOx1 nCoV-19(ウイルスベクターワクチン)と比較して,抗体応答は高かったが,細胞応答は低かった.SARS-CoV-2感染エピソード474例(COVID-19による入院または死亡48例を含む)について報告する.血清学的反応とT細胞反応の両方の低下は,重症のCOVID-19と関連していた.COVID-19を標的とした治療戦略の恩恵を受ける可能性のある臨床表現型を同定した.

2023年11月20日 川添 麻衣

Loss of endothelial thrombomodulin predicts response to steroid therapy and survival in acute intestinal graft-versus-host disease.
内皮トロンボモジュリンの消失は急性腸管移植片対宿主病におけるステロイド療法への反応と生存を予測する
Andrulis M, et al. Haematologica. 2012 Nov 1;97(11):1674-7.

ステロイド抵抗性の移植片対宿主病は、同種幹細胞移植後に重大な罹患率と死亡率を引き起こす。ステロイド抵抗性の病態機序は現在のところ解明されていないが、血管内皮細胞の機能不全が一定の役割を果たしていることが示唆されている。同種移植患者51人の大腸生検において、血管内皮トロンボモジュリンの発現量を上皮障害や細胞傷害性T細胞の組織学的マーカーとともに定量し、ステロイド治療に対する反応性や生存期間と後方視的に評価した。血管内皮トロンボモジュリンの消失は、T細胞浸潤、組織学的悪性度、血管密度、病状、ドナーの種類、および条件付け療法を調整した多変量解析において、ステロイド不応性(P=0.02)および非再発死亡率(P=0.01)の最も強い予測因子であった。われわれのデータは、疾患発症時には、過剰なT細胞浸潤よりもむしろ内皮トロンボモジュリン発現の消失がステロイド不応性移植片対宿主病と死亡率に関連するということが示唆された。この幹細胞移植の重要な合併症の診断と予後を改善するために、プロスペクティブな組織学的調査が正当化される。

2023年11月13日 仲子聡一郎

Outcomes of patients with aggressive B-cell lymphoma after failure of anti-CD19 CAR T-cell therapy: a DESCAR-T analysis.
CAR-T治療後に増悪したB細胞性リンパ腫患者の結果
Di Blasi R, et al. Blood. 2022 Dec 15;140(24):2584-2593.

キメラ抗原受容体遺伝子導入T (CAR-T) 細胞療法は再発難治性B細胞性リンパ腫の治療に大きな進歩をもたらしたが、治療失敗例も存在する。550人が参加したフランスのDESCAR-T試験では238人 (43.3%) が観察期間中央値7.9ヶ月の間に進行または再発した。参加登録時、IPI : 2-3が57%、PS 2以上が18.9%、CAR-T治療前に治療を受けたレジメン数が3以上が57.1 %、87.8 %がブリッジング治療を受けていた。投与時に66%の患者がPDの状態でLDH高値の患者も38.9%いた。CAR-Tにfailureとなるまでの期間の中央値は2.7ヶ月 (0.2-21.5ヶ月) であった。54人 (22.7%) は超早期0-30日、102人 (42.9%) が早期31-90日、82人 (34.5%) が晩期90日以上後のfailureであった。Failure後、154人 (64%) の患者が救援治療を受けた。レナリドミドが38.3%、Bite抗体が7.1%、標的治療が21.4%、放射線治療が11%、抗癌剤治療が20%であった。PFS中央値が2.8ヶ月、OS中央値が5.2ヶ月であった。OS中央値は増悪日が0-30日の群と30日以降の群では1.7ヶ月と3.0ヶ月と有意に差があった。また47.9%の患者が6ヶ月の時点で生存していたが超早期再発の患者は18.9%のみの生存であった。多変量解析ではOSの予後因子としてLDH高値、CAR-T輸注のち30日以内の増悪、輸注時のCRP高値が抽出された。この多施設の解析からCAR-T治療後の再発は極めて悪い結果が示唆された。

2023年11月06日 堀内 美令

Allogeneic T cells cause acute renal injury after hematopoietic cell transplantation.
同種反応性T細胞は同種造血幹細胞移植後に急性腎障害を引き起こす
Miyata M, et al. Blood Adv. 2023 Nov 28;7(22):6936-6948.

背景:急性腎障害(AKI)は同種造血幹細胞移植(allo-HCT)の頻度の高い合併症である。allo-HCT後のAKIには多くの原因があるが、同種ドナーT細胞を介した直接的な腎障害による、腎急性移植片対宿主病(aGVHD)が寄与しているかどうかは不明である。そのためaGVHDのマウスモデルにおいて、同種ドナーT細胞が腎傷害を引き起こすかどうかを検証した。腎毒性を生じうる薬剤の交絡の影響を避けるため、GVHD予防のための免疫抑制剤は投与していない。
結果:尿細管傷害のマーカーである尿中NAGが移植後14日目にレシピエントで上昇していることを発見した。レシピエントマウスの腎臓では、糸球体・傍尿細管毛細血管・間質・血管周囲領域においてドナーのMHC陽性細胞が存在し、CD3+T細胞が増加していた。これらのT細胞にはCD4+細胞とCD8+細胞の両方が含まれ、活性化マーカーが上昇、疲弊化マーカーが増加し、炎症性サイトカインと細胞傷害性タンパク質の分泌が多かった。また、ドナーT細胞が介在する腎障害と一致して、レシピエントの腎組織では急性腎障害のマーカーであるNGALと、aGVHDのマーカーであるエラフィンの発現が増加していた。標的細胞のアポトーシスは、aGVHD標的臓器の病理組織に観察されることから、同種反応性T細胞が腎内皮細胞・尿細管上皮細胞のアポトーシスを増加させることを細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイによって確認した。
考察:これらのデータは、ドナーT細胞によって誘導される免疫応答が、同種移植レシピエントにおける腎内皮細胞・尿細管上皮細胞の傷害に寄与し、aGVHDが同種移植後のAKIに寄与している可能性を示唆している。

2023年10月30日 森口 慎

Tocilizumab for Cytokine Release Syndrome Management After Haploidentical Hematopoietic Cell Transplantation With Post-Transplantation Cyclophosphamide-Based Graft-Versus-Host Disease Prophylaxis.
PostCY Haplo移植後のCytokine Release Syndromeに対するトシリズマブの効果
Yao JM, et al. Transplant Cell Ther. 2023 Aug 1;29(8):515.e1-515.e7.

サイトカイン放出症候群(Cytokine release syndrome)はHaplo移植後によくみられる合併症で、重篤なCRSはNRMの上昇やOSの低下につながる。トシリズマブはIL-6受容体抗体であり、CART療法後に発生するCRSに対する第一選択治療となっているが、Haplo移植後のCRSに対するトシリズマブの効果は不明である。

この単施設後方視的解析では、GVHD予防としてPostCYを受けたHaplo移植患者に対して、CRS治療としてトシリズマブを投与した群としていない群で移植後の結果を比較した。2019年-2021年までのHaplo移植を受けた患者でCRSを発症した115人の患者のうち、11人がトシリズマブの治療を受けた。トシリズマブ群に対し、移植時の年齢・前処置・CRSの重症度でマッチさせた21人の対照患者を非トシリズマブ群から選出した。好中球生着の中央値は、トシリズマブ群で21日(range 16-43日)、非トシリズマブ群で18日(range 14-23日)(HR 0.55; 95%CI 0.28-1.06)。血小板生着の中央値は、トシリズマブ群で34日(renge 20-81日)、非トシリズマブ群で28日(range 12-94日)(HR 0.56; 95%CI 0.25-1.22) 。 移植後Day100までのGradeⅡ-ⅣのaGVHD・GradeⅢ-ⅣのaGVHDの発生率はトシリズマブ群・非トシリズマブ群で差はない。cGVHDの発生率はトシリズマブ群で非トシリズマブ群に比べて有意に高く、トシリズマブの投与はPostCYのcGVHDに対する予防効果を打ち消してしまうと考えられる。2群間で移植後1年後のNRM・Relapse・Disease Free Survival・OSに有意差はなく、 Haplo移植後のCRSに対するトシリズマブの投与は早期の有害事象や、再発率を増やすことはなかった。Haplo移植後のCRSに対するトシリズマブの使用は重症のCRSのみへの使用等に限る等、使用する状況を慎重に考えるべきである。

2023年10月23日 田添 久実代

Immune Checkpoint Inhibitor-Related Cytopenias: About 68 Cases from the French Pharmacovigilance Database.
免疫チェックポイント阻害剤関連の血球減少症:フランスのファーマコビジランスデータベースからの約68例
Martin M, et al. Cancers (Basel). 2022 Oct 14;14(20):.

ICI関連血球減少についてはあまり報告されていない。
本研究では、フランスのファーマコビジランスデータベースを用いて、ICI関連血球減少症の特徴をさらに明らかにすることを目的とした。
2022年3月31日までに報告された、WHOの基準に基づくICI疑いまたは相互作用薬として報告されたGrade2以上の血液学的副作用をデータベースから抽出した。68症例(報告件数は75例)が対象となり、男性は63%、年齢中央値は63.0歳、自己免疫疾患の既往が7例(10.3%)に認めた。ITP(免疫性血小板減少症)とAIHA(自己免疫性溶血性貧血)が、それぞれ50.7%と25.3%と最も多く報告された。
ICI関連血球減少の発症までの期間中央値は2カ月であり、その半数近くがGrade4以上であり、3人が難治性ITPによる出血合併症と活動性AIHAによる血栓塞栓症で死亡した。
評価可能な61例のうち、ICI関連血球減少症の72.1%で従来の治療後に完全寛解または部分寛解が確認された。
また、Grade2以上のICI関連血球減少症後にICIを再開した10例のうち、3例に再発を認めた。
ICI関連血球減少症はまれではあるが、生命を脅かす可能性があり、危険因子を同定するためさらなる研究が必要である。

2023年10月02日 西島 誠

Targeting the Complement Alternative Pathway Permits Graft Versus Leukemia Activity while Preventing Graft Versus Host Disease.
補体第2経路を標的にするとGVL活性を残しつつGVHDを抑制できる
Nguyen H, et al. Clin Cancer Res. 2020 Jul 1;26(13):3481-3490.

目的:同種移植は血液疾患の完治が見込める治療法であるが、移植片対宿主病(GVHD)と移植片対腫瘍(GVL)効果を分離することは未だに課題であり、これらを分離するために補体カスケードの特異的標的を検討した。
方法:第2経路欠損マウスと古典経路/レクチン経路欠損マウスの同種移植モデルにおいて、GVHDの病態やGVL効果への影響を検証し、第2経路特異的インヒビターであるCR2-fHを使用しアウトカムを検討した。
結果:GVHDマウスや患者の腸管において補体C3dの沈着が示された。また第2経路欠損GVHDモデルマウスにおいて、補体関連蛋白やサイトカイン産生に関わる遺伝子発現が低下していた。第2経路欠損マウスでは野生株と比較し、有意に生存が長くGVHD臨床スコアが改善した。以上から第2経路がGVHD発症に関連している可能性がある。GVHD進展に関わる細胞としては、ドナーT細胞の第2経路欠損はアウトカムに影響を与えず、宿主の樹状細胞における第2経路欠損が生存を改善した。これはGVHD標的臓器におけるドナーT細胞の誘導やTh1/Th2への分化を減少させ、Treg産生を増加させたことによると考えられる。またCR2-fHを投与したマウスモデルでは、GVHDを効果的に抑制するだけでなく、細胞障害性T細胞の活性化を維持することによりGVL効果が維持された。これは脾臓などリンパ臓器では第2経路欠損に伴うT細胞や樹状細胞の分化・増殖に影響を与えないためと考えられた。以上からCR2-fH治療は、GVL活性を残しつつGVHDを効果的に予防できた。ヒト白血病細胞を移植したマウスモデルにおいても、CR2-fH投与はGVHDを抑制し有意に生存を延長させ、また生着にも影響を与えなかった。
結論:同種移植後GVHD・再発予防の新たな標的として、CR2-fHによる補体第2経路阻害がGVHD治療アプローチになる可能性がある。

2023年09月25日 岡山 裕介

Allogeneic transplantation in advanced cutaneous T-cell lymphomas (CUTALLO): a propensity score matched controlled prospective study.
進行性皮膚T細胞リンパ腫における同種移植 傾向スコアマッチング法による前向き研究
de Masson A, et al. Lancet. 2023 Jun 10;401(10392):1941-1950.

CTCLは稀な疾患であり、通常は難治性で致死的である。
症例報告では、同種移植が進行期CTCLの予後を改善する可能性が示唆されているが、移植群と非移植群で比較した報告はなく、今回初めて前向き多施設共同研究を行った。
フランスの30の病院で実施した前向き多施設共同研究(CUTALLO試験)で2016年6月1日から2022年3月3日の期間、ドナーソースありの方を同種移植、ない場合は非移植群に分類した。
成人の進行期菌状息肉症またはsezary症候群で、1つ以上の予後不良基準を有する患者を対象とし、傾向スコア1:1マッチング置換法でKaplan-Meier法を使用して解析を行った。Primary endpointは、無増悪生存期間、皮膚病変の程度を示すmSWAT、Secondary endpointは疾患再発率、非再発死亡率、OS、QOLに関する質問票を用いて評価した。
合計99人の参加者が登録され移植群55名、非移植群44名に分類し、移植群51人(93%)を1:1で非移植群とマッチさせた。
結果としてPFSの中央値として移植群(9.0ヵ月)が非移植群(3.0ヵ月)より有意に延長し、mSWAT, QOLに関する質問票に関しても改善を認めた。1年疾患再発率は移植群: 45.4%、非移植群: 86.0%と移植群で再発率の低下を認めた。1年累積非再発死亡率は、移植群:8.5%、非移植群で0%という結果だった。
結論として、同種造血幹細胞移植は高リスクの進行 CTCL 患者において、非造血幹細胞移植治療と比較して、無増悪生存期間は延長し、QOL の経時的な平均改善率が高かった。

2023年09月11日 小山 翼

Defibrotide plus best standard of care compared with best standard of care alone for the prevention of sinusoidal obstruction syndrome (HARMONY): a randomised, multicentre, phase 3 trial.
ディフィブロタイドによるVOD/SOS発症予防の検討(HARMONY試験)
Grupp SA, et al. Lancet Haematol. 2023 May 1;10(5):e333-e345.

VOD/SOSは移植後合併症の1つであり、多臓器不全に至ると極めて予後は悪い。HARMONY試験は、国際非盲検無作為化多施設共同研究第3相試験であり、SOS発症のHigh riskまたはVery high risk小児・成人患者のSOS発症予防にディフィブロタイドが有効かつ安全に使用できるか検証するものである。risk因子はEBMT2015を参考にした。適格患者は、ディフィブロタイド予防群とBest Supportive Care群に1:1で無作為に割り付けられた。予防群では、ディフィブロタイドを前処置開始24時間以内に投与し、21日以上継続した.いずれの治療群においてもVOD/SOSを発症すれば、ディフィブロタイドによる救援治療が行われた。小児例・成人例においても、予防群・BSC群のSOS-free survivalに有意差は認めなかった。SOSを発症した56例(小児: 14例[14%], 成人: 31例[18%])のうち、 28例(50%)がディフィブロタイド投与でSOSは改善した。この試験ではディフィブロタイド予防投与の有効性は示されなかった。しかし、keyとなるrisk因子を持つHigh risk, very high risk患者が少なかった可能性があり、今後の更なる検討が必要である。

2023年08月28日 田中 静大

Posttransplant cyclophosphamide vs tacrolimus-based GVHD prophylaxis: lower incidence of relapse and chronic GVHD.
PTCY vs タクロリムスによるGVHD予防法:再発および慢性GVHDの低い発症率
Maurer K, et al. Blood Adv. 2023 Aug 8;7(15):3903-3915.

ハプロ移植におけるposttransplant cyclophosphamide(PTCY)の有用性が示される中、HLAの一致した非血縁ドナーからの末梢血幹細胞移植における臨床効果に関する注目が集まっている。我々は自施設において慣習的なタクロリムスを使用したGVHD予防法と比較したPTCYを使用したGVHD予防法の有用性に関して検討を行った。後方視的に検討し107名のPTCY群と463名の慣習的なタクロリムス群を対象としてprogression-free survival(PFS)、再発率、非再発死亡率、そして急性および慢性GVHDに関して評価した。これら2群のベースラインの特徴は偏りがなく、PTCY群でよりHLA7/8一致が含まれていた。急性GVHDに関しては両群間で差を認めなかった。全グレードの慢性GVHDおよびmoderate-to-severeの慢性GVHDはPTCY群で少なかった(2-year moderate-to-severe chronic GVHD: 12% vs 36%; P<.0001)。また、再発率に関してもPTCY群で有意に少なく主にreduced intensity conditioningを受けた患者で顕著であった(25% vs 34% at 2-years; P=.27)。これによりPTCY群でPFSが良好であった(64% vs 54% at 2 years; P=.02)。多変量解析ではPFSのハザード比は0.59(P=.015)、moderate-to-severe慢性GVHDに関しては0.27(P<.0001)、再発に関しては0.59(P=.015)であった。我々の結果によりPTCYによるGVHD予防はHLA一致の非血縁ドナーの末梢血幹細胞移植においてより低い再発率および慢性GVHDが明らかになった。

2023年08月21日 市丸 昂樹

Risk factors and appropriate therapeutic strategies for thrombotic microangiopathy after allogeneic HSCT.
同種造血幹細胞移植後の血栓性微小血管症の危険因子と適切な治療戦略。
Matsui H, et al. Blood Adv. 2020 Jul 14;4(13):3169-3179.

移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)は同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)の致死的合併症である。しかし、これまでのところ、TA-TMAの危険因子と最も効果的な治療戦略を明らかにした大規模コホート研究はない。そこで本研究では、大規模多施設コホートに基づき、これらの臨床的側面を明らかにすることを目的とした。この後ろ向きコホート研究は、京都幹細胞移植グループ(KSCTG)によって行われた。14施設から合計2425例の患者が登録された。全患者は16歳以上で、血液疾患を呈し、2000年以降に同種造血幹細胞移植を受けた。TA-TMAは、35日目(中央値)に121例(5.0%)で観察され、全生存期間(OS)の劣 化と明らかな相関が認められた(ハザード比[HR]、4.93)。多変量解析により同定された HSCT 前後の統計的に有意なリスク因子には、パフォーマンスステータスの低下(HR, 1.69)、HLA ミスマッチ(HR, 2.17)、急性移植片対宿主病(aGVHD; グレード 3-4)(HR, 4.02)、アスペルギルス感染(HR, 2.29)、および静脈閉塞性疾患/副鼻腔閉塞症候群(VOD/SOS; HR, 4.47)が含まれた。カルシニューリン阻害薬(CNI)の継続または慎重な減量により、CNIから副腎皮質ステロイド薬に切り替える従来の治療戦略よりも奏効率およびOSが有意に改善した(奏効率、64.7%対20.0%)。要約すると、我々はTA-TMAの危険因子と最も適切な治療戦略を明らかにした。記載された治療戦略は、今後TA-TMA患者の転帰を改善する可能性がある。

2023年08月14日 中前 博久

Immunophenotypic and Molecular Features of Acute Myeloid Leukemia with Plasmacytoid Dendritic Cell Differentiation Are Distinct from Blastic Plasmacytoid Dendritic Cell Neoplasm.
形質細胞様樹状細胞分化を伴う急性骨髄性白血病(pDC-AML)の免疫表現型および分子学的特徴は、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)とは異なる
Wang W, et al. Cancers (Basel). 2022 Jul 11;14(14):.

 形質細胞様樹状細胞(pDC)が2%以上存在する急性骨髄性白血病(AML)は、RUNX1変異を頻繁に伴いpDC増殖を特徴とする、pDC分化を伴うAML(pDC-AML)として最近報告されている。本研究では、 MD Anderson Cancer Center症例を後方視的に調査した結果、全AML症例の約3%に相当した53例のpDC-AML症例について検討し、免疫表現型と遺伝子プロファイルを芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)と比較した。
 pDCの分化増殖は、未熟な骨髄性あるいは骨髄単球性の免疫表現型を持つAMLで優先的に観察され、骨髄芽球はCD34(98%)、CD117(94%)、HLA-DR(100%)、TdT(79%)が高頻度に陽性で、CD123(89%)の発現が増加していた。pDC-AMLにおけるpDC数の中央値は6.6%(範囲、2%〜26.3%)であり、その免疫表現型は分化の初期または中間段階にあるpDCを思わせるものであった。pDC-AMLにおけるpDCの免疫表現型はBPDCN(n=39)と異なり、CD34(96%対0%)、CD56(8%対97%)、TCL1(12%対98%)に大きな差があり、CD4、CD13、CD22、CD25、CD36、CD38、CD117、CD303の発現頻度に有意差があった。分子レベルでは、pDC-AMLとBPDCNの遺伝的背景も異なっており、pDC-AMLの64%でRUNX1変異が検出されたのに対し、BPDCNでは2%であった。TET2(21%対56%)、FLT3(23%対0%)、DNMT3A(32%対10%)、ZRSR2(2%対16%)(すべてp<0.05)にも差が認められた。
 pDC-AMLとBPDCNの異なる免疫表現型と遺伝子変異プロファイルは、pDC-AMLとBPDCNの腫瘍性pDCがpDC前駆体の異なるサブセットに由来することを示している。

2023年08月07日 中前 美佳

Post-Transplantation Cyclophosphamide-Based Graft-versus-Host Disease Prophylaxis.
移植後のシクロホスファミによる移植片対宿主病の予防
Bolaños-Meade J, et al. N Engl J Med. 2023 Jun 22;388(25):2338-2348.

背景: 同種造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者では、カルシニューリン阻害剤とメトトレキサートの併用が移植片対宿主病 (GVHD) に対する標準的な予防法となっています。第2相試験では、シクロホスファミド、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチルの移植後レジメンの潜在的な優位性が示されました。
方法:第3相試験では、血液がんの成人を1:1の比率でシクロホスファミド-タクロリムス-ミコフェノール酸モフェチル(PTCy予防)またはタクロリムス-メトトレキサート(標準予防)を受ける群にランダムに割り当てた。 患者は、HLAが一致する血縁ドナー、もしくは一致または7/8一致(つまりHLA-A、HLA-B、HLA-C、および HLA-DRB1 遺伝子座のうち1つだけが不一致)の非血縁ドナーから強度減弱した前処置後にHSCT を受けました。主要エンドポイントは、1年後の無GVHD、無再発生存であり、イベント発生までの時間解析で評価され、イベントはグレードIIIまたはIVの急性GVHD、全身性免疫抑制剤を必要とする慢性GVHD、疾患の再発または進行、およびいかなる原因による死亡とした。
結果: 多変量コックス回帰分析では、標準予防群の患者217人よりも実験的予防群の患者 214人の方が GVHD 無再発無再発生存率が有意に高かった (グレードIIIまたはIVの急性 GVHD、慢性 GVHD、疾患の再発または進行、死亡、これら合計のハザード比0.64; 95%信頼区間[CI] 0.49~0.83; P = 0.001)。移植後1年のGVHD無再発生存率は、PTCy予防法で52.7%(95%CI、45.8~59.2)、標準予防法で34.9%(95%CI、28.6~41.3)でした。PTCy予防グループの患者は、急性または慢性GVHDの重症度が低く、1年後の免疫抑制なし生存率が高いようでした。全生存期間および無病生存期間、再発、移植関連死亡、および生着には、両群間で実質的な差はなかった。
結論:強度減弱前処置後に同種HLA適合HSCTを受けた患者のうち、1年後のGVHD無再発無再発生存率は、標準予防群よりもPTCy予防群の方が有意に高かった。

2023年07月31日 中嶋 康博

Time-dependent prediction of mortality and cytomegalovirus reactivation after allogeneic hematopoietic cell transplantation using machine learning.
機械学習を用いた同種造血幹細胞移植後の死亡及びCMV再活性化に対する動的予測
Eisenberg L, et al. Am J Hematol. 2022 Oct 1;97(10):1309-1323.

同種造血幹細胞移植は、高リスクの血液疾患を効果的に治療するが移植特有の合併症を伴うことがある。適切な患者管理と正確な個別リスク推定によって、これらの合併症を最小限に抑えることができる。しかし、ほとんどの移植リスクスコアは移植前のリスク評価に限定されており、その後のデータは組み込まれていない。我々は、ベースライン患者データと経時的な臨床検査値を統合し、患者ごとに複数時点の死亡率とCMV再活性化を(動的)予測する機械学習モデルを開発した。これらの勾配ブースティング機械モデルは、時間依存性に(動的)リスクを良好に予測し、21日間のWindow期間における死亡とCMV再活性化の予測精度は、それぞれ0.92と0.83のROC-AUC、0.58と0.62のPR-AUCを示した。両モデルは前向き非介入研究で検証され、パイロット比較試験において血液専門医と同等の予測精度を示した。

2023年07月24日 岡村 浩史

Empiric vs Preemptive Antifungal Strategy in High-Risk Neutropenic Patients on Fluconazole Prophylaxis: A Randomized Trial of the European Organization for Research and Treatment of Cancer.
高リスク好中球減少患者における真菌感染症の治療戦略 Empiric therapy(経験的治療)vs Preemptive therapy(早期治療) EORTCによる無作為化比較試験
Maertens J, et al. Clin Infect Dis. 2023 Feb 18;76(4):674-682.

背景
真菌感染症のEmpiric therapy(経験的治療)は持続する発熱を伴った高リスク好中球減少患者において標準治療である。一方で、ガラクトマンナン検査や胸部CTに基づいたPreemptive therapy(diagnostic-driven, 早期治療)の生存や侵襲性真菌感染症(IFD)に対する影響は不明である。
方法
フルコナゾール400㎎予防投与下のAML患者またはMDS患者または同種移植患者を対象にカスポファンギンによるempiric(Arm-A)とpreemptive(Arm-B)の2群に分けてRCTを施行した。主要評価項目は無作為化後42日目(6週目)の生存におけるpreemptive therapyのempiric therapyに対する非劣勢である。
結果
556人がリクルートされ、549人(Arm-A:275人、Arm-B:274人)が本試験に組み入れられた。80%がAMLまたはMDSに対して高容量化学療法を行い、そのうち93%が最初の寛解導入療法であった。
Arm-Bにおける無作為化後42日目の生存率はArm-Aに比較して劣っておらず(96.7% vs 93.1%)、無作為化後84日目のIFDの割合も2群で差はなかった(7.7% vs 6.6%)。
カスポファンギンを投与された患者の割合はArm-Bで有意に低かった(27% vs 63%)
結論
Preemptiveな真菌感染症治療戦略はフルコナゾール投与下の高リスク好中球減少患者に対して死亡率やIFDを増加させることなく抗真菌剤の投与を半分にする安全な治療法であった。

2023年07月10日 西本 光孝

IgM monoclonal gammopathy of undetermined significance: clinicopathologic features with and without IgM-related disorders.
IgM-MGUS:IgM関連疾患の有無に関する臨床病理学的特徴
Bruehl FK, et al. Haematologica. 2023 Oct 1;108(10):2764-2773.

IgM型の意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)患者の一部は、末梢神経障害、クリオグロブリン血症、および/または寒冷凝集素病(CAD)を含むIgM関連疾患(IgM-RD)を発症する。本研究では191人のIgM-MGUS患者の臨床的および骨髄病理学的所見を調査した。免疫組織化学(IHC)によりクローン性形質細胞が171例中41例(24%)、クローン性B細胞が157例中43例(27%)で同定された。IgM-RDは82例(43%)で同定され、その中には末梢神経障害(n=67、35%)、クリオグロブリン血症(n=21、11%)、およびCAD(n=10、5%)が含まれていた。CADの症例は、MYD88変異が欠如している特徴を示した(p=0.048)、これは原発性CADが異なる臨床病理学的疾患であるという概念を支持している。CADを除外した後、IgM-RDのある(n=72)およびない(n=109)症例の比較では、IgM-RDが男性よりも女性でより頻繁であること(p=0.02)およびMYD88 L265Pとより高い関連性があることが示された(p=0.011)。それ以外の場合、IgM-RDのある症例とない症例で、血清IgM濃度、リンパ組織の存在、フローサイトメトリーによるクローン性B細胞またはIHCによるクローン性形質細胞を含む所見に大きな違いはみられなかった。IgM-RDの有無に関係なく、全生存率に違いはみられなかった。本研究では、2022年の国際的なリンパ腫新生物の共通の分類で定義されているような形質細胞型IgM-MGUSの基準を満たす症例はなかった。これらの結果は、IgM-MGUS患者においてIgM-RDが一般的であることを示している。CADは特徴的な所見を有するが、IgM-RDの残りの症例は主にIgM-RDのないIgM-MGUSと類似した病理学的所見を示す。

2023年06月26日 高桑 輝人

An 8-year pragmatic observation evaluation of the benefits of allogeneic HCT in older and medically infirm patients with AML.
高齢で病弱なAML患者を対象とした、同種造血幹細胞移植の有益性に関する8年間の観察評価
Sorror ML, et al. Blood. 2023 Jan 19;141(3):295-308.

FHCRCを中心とした多施設に来院した、急性骨髄性白血病(AML)の患者を対象とした前向き観察研究である。造血細胞移植の実施が生存・生活の質(QOL)・生活機能に与える影響を解析した。対象患者は、65歳以上、合併症負担が高い患者、細胞遺伝学的リスクが中等度以上の患者、微小残存病変の有無にかかわらず初回完全寛解の患者とした。
評価可能な692人のうち、46%が移植を受け、2年生存率は58%であった。非調整モデルでは、移植はほとんどのサブグループで死亡リスクの低下と関連していた。しかし、年齢・合併症負荷・疾患リスク・虚弱・QOL低下・うつ病・身体機能低下といった共変量を加味すると、移植による死亡リスク低下はほとんどのサブグループで認められなかった。移植の対象とされた患者において身体機能・社会生活・PS・抑うつ症状は、化学療法だけで治療された患者と比べて良好であったが、これらの健康上の利点は移植後にを受けた後に失われた。
今回対象となったAML患者において、健康上の影響を考慮すると移植による生存上のメリットは否定的であり、非調整モデルで観察された利益は、健康な移植レシピエントが選択されたことによるものと示唆された。
移植による生存期間延長への期待だけでなくQOLに与える影響も考慮すると、移植の最良の適応患者を同定するため、無作為化試験が必要である。

2023年06月19日 幕内 陽介

Clonal hematopoiesis in patients with stem cell mobilization failure: a nested case-control study.
幹細胞動員失敗患者におけるクローン性造血:コホート内症例対照研究
Hazenberg CLE, et al. Blood Adv. 2023 Apr 11;7(7):1269-1278.

Poor mobilizer(PM)は自家移植を行う上で制限要因となる。クローン性造血(CH)が自家移植のPMに与える影響を評価するため、我々は776人の単施設コホートにおいて、PM(CD34+<2×106/kg)の特徴を調べた。90人のPMと89人のmatched controlからなるnested case-control研究において、28遺伝子をNGSで調べた。CHは48/179人(27%)で検出され、ほとんどが単一変異だった。CH(変異アレル頻度;VAF≥1%)の存在はPMと関連しなかった(31% vs 22%、オッズ比1.55、P=.238)。PPM1D変異はPMで多く(P=.005)、TP53変異はPMでのみ見られた(P=.06)。治療関連骨髄腫瘍(tMN)の発症率はPMで高かった(P=.014)。PMは予後不良と関連したが(P=.019)、CHの有無は影響しなかった。結論として、低いVAF(1-10%)のCHは幹細胞採取時にしばしば見られる。TP53変異とPPM1D変異はPMと関連しており、その後のtMN発症における役割を明らかにする必要がある。

2023年06月12日 久野 雅智

Adult cord blood transplant results in comparable overall survival and improved GRFS vs matched related transplant.
臍帯血移植におけるGRFSの優越性: HLA適合血縁者間移植との比較
Sharma P, et al. Blood Adv. 2020 May 26;4(10):2227-2235.

2010年から2017年までの間に当センターで末梢血幹細胞移植を受けた成人のHLA適合血縁者(MRD)患者と、double unit臍帯血移植(CBT)を受けた成人患者の結果を単施設後方視的に比較。合計190人のCBT患者と123人のMRD患者が比較された。生存しているCBT患者の中央値のフォローアップは896日(範囲、169-3350日)、MRD患者の中央値のフォローアップは1262日(範囲、249-3327日)であった。全てのCBT患者と全てのMRD患者を比較すると、全生存期間(OS)は同等であった(P = .61)。GRFSはCBT患者で有意に改善(P = .0056)し、CBT後の中等度から重度の慢性GVHDの減少が主な要因であった(P < .0001; HR, 3.99; 95%CI, 2.26-7.04)。研究施設で最も一般的に使用されるMRDとCBTの骨髄抑制的治療法を受けた患者の中で、OSは同等であった(P = .136)、GRFSはCBT患者で有意に改善していた(P = .006)。再発累積発生率はCBTで減少傾向にあった(P = .075; HR, 1.85; 95%CI 0.94-3.67)、一方、移植関連死亡率(TRM)は同等であった(P = .55; HR, 0.75; 95%CI, 0.29-1.95)。最も一般的に使用される非骨髄抑制的治療法を受けた患者の中で、OSとGRFSは同等であった(P = .158およびP = .697)。再発とTRMの累積発生率は同等であった(P = .32; HR, 1.35; 95%CI, 0.75-2.5 for relapse および P = .14; HR, 0.482; 95%CI, 0.18-1.23 for TRM)。これらの結果はCBTの有効性を支持し、より強力な前処置を耐えることができる再発リスクの高い患者の中で、CBが好ましいドナー源であることを示唆している。

2023年06月05日 酒徳 一希

Estimated Prevalence and Clinical Manifestations of UBA1 Variants Associated With VEXAS Syndrome in a Clinical Population.
一般集団におけるVEXAS症候群に関連したUBA1変異の推定保有率と臨床的特徴
Beck DB, et al. JAMA. 2023 Jan 24;329(4):318-324.

VEXAS(Vacuoles, E1-ubiquitin-activating enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic)症候群は、UBA1遺伝子のソマティック変異に関連する疾患で、リウマチと血液学的特徴を持ちます。この研究の主な目的は、UBA1内の病原性変異の有病率を明らかにし、それに伴う臨床的症状を未選択の人口で調査することでした。この目的を達成するため、Geisinger MyCodeコミュニティヘルスイニシアティブに参加する163,096人の被験者のエクソームデータを分析し、それに基づいて臨床フェノタイプを特定しました。
研究では、エクソームシーケンシングを用いてUBA1遺伝子の変異を調査しました。その結果、11人の被験者が既知の病原性UBA1位置でソマティック変異を保持しており、この11人すべて(100%)がVEXAS症候群と一致する臨床症状を示しました。このうち、5人はVEXAS症候群に関連する従来のリウマチおよび血液学的診断基準を満たしていなかったが、貧血(主に好中球性)が共通の特徴であり、そのほとんどが大球性であり、併発する血小板減少症も見られました。
興味深いことに、病原性変異を持つ被験者の中には、VEXAS関連の兆候や症状が現れる前から変異を持っていた男性被験者が1人おり、また、病原性変異を持つ女性被験者が2人いました。更に、以前に報告されていなかった新たなUBA1変異も発見され、その変異はin vitroデータによって触媒欠陥と病原性がサポートされました。
総括として、この研究は米国の単一地域の保健システム内でのVEXAS症候群に関連するUBA1変異の有病率の推定と、臨床症状の説明を提供しました。しかしながら、一般集団の有病率や表現型スペクトルをより詳細に理解するために、未選択の遺伝的に異なる人口での追加の研究が必要とされています。

2023年05月29日 井戸 健太郎

Real-World Validation of Molecular International Prognostic Scoring System for Myelodysplastic Syndromes.
MDSにおけるIPSS-Mのリアルワールドでの検証
Sauta E, et al. J Clin Oncol. 2023 May 20;41(15):2827-2842.

2022年にMDSの予後予測モデルとしてMolecular International Prognostic Scoring System (IPSS-M) が提唱された。今回、primary MDS患者2,876人を用いて後方視的に検証を行った。OS, PFSともにIPSS-Rよりも予後の識別に優れており、患者の46%でIPSS-R→IPSS-Mでリスクグループが変化した。移植治療をうけた患者においてもIPSS-Mは移植後再発率・生存率の予測に優れていたが、高リスクかつHMA治療群(移植非適応症例)においては予後の層別化は叶わなかった。またIPSS-Mの変数とされる遺伝子異常の中で、特に影響の大きい最低限評価すべき遺伝子変異15個を同定した。

2023年05月22日 堤 美菜子

Allogeneic stem cell transplantation for patients with aggressive NK-cell leukemia.
ANKLにおける同種造血幹細胞移植
Fujimoto A, et al. Bone Marrow Transplant. 2021 Feb 1;56(2):347-356.

アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)は,急激に進行する予後不良な疾患であり,同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)が唯一の根治的治療となる.日本の移植登録データ(TRUMPデータ)を用いて,初回移植を受けた59人の転帰を解析した.臍帯血(CB)が29人,末梢血幹細胞(PB)が18人,骨髄(BM)が12人.移植時,完全寛解(CR)が21人,部分寛解(PR)が7人,安定(SD)+進行(PD)が31人.1年全生存率(OS)は33.9%,5年OSは27.3%.移植後1年における累積発症率は,再発/進行が55.5%,非再発死亡が12.1%.OSは,allo-HSCT時にCR/PRを得た患者において有意に良好(p=0.046).allo-HSCT時にCR/PRであった患者のOSと移植時にCR未達成であるprimary induction failure(PIF)であってもallo-HSCT後CRとなった患者のOSは同等(5年後,40.6% vs 32.0%;P=0.95).CBは,PB/BMに比べてOSが有意に良好(5年後,37.3% vs 16.2%;P=0.04).allo-HSCT後12ヶ月で無イベント生存を達成した患者では,5年OSが85.2%.本研究で,ANKLにおいて,allo-HSCT時にPIFであっても,allo-HSCTを行うことで長期にわたる持続的な寛解が得られる可能性が示され,又,CBが最良のドナーソースであると確認された.CBは適切なタイミングで移植を行えるドナーソースである.haplo移植も同様に迅速に利用可能なドナーソースであるが,本研究では,1症例のみの登録であった.PB/BMに対するCBの優位性は,ECOG-PSやallo-HSCT時の疾患状態を用いた多変量解析にて統計的有意性が失われた.このことは,ドナーソースとPS/allo-HSCT時の疾患状態に有意な相関があったため(=CBでは,PB/BMよりPSが良い/疾患状態が良好であった)と考えられる.しかし,CBが適切なタイミングで移植実施可能であることに起因し,CBの優位性を損なうものではない.GVHD gradeⅠ-Ⅱを発症した患者の転帰が良好であったことから,ANKLにおいてもGVL効果に期待できると考えられる.

2023年05月15日 川添 麻衣

Posoleucel, an Allogeneic, Off-the-Shelf Multivirus-Specific T-Cell Therapy, for the Treatment of Refractory Viral Infections in the Post-HCT Setting.
造血幹細胞移植後難治性ウイルス感染症における同種既製マルチウイルス特異的T細胞治療薬Posoleucel
Pfeiffer T, et al. Clin Cancer Res. 2023 Jan 17;29(2):324-330.

【目的】ウイルス感染症は同種移植後死亡の主要な要因となっているが、安全かつ有効な治療法は限られている。同種移植後の難治性ウイルス感染症に対してウイルス特異的T細胞療法が有望な治療法のオプションとして浮上している。Posoleucelは同種移植後の有名な6つのウイルスである、アデノ・BK・サイトメガロ・EB・HHV6・JCウイルスに対するoff-the-shelfのマルチウイルス特異的T細胞治療薬である。【患者・方法】成人と小児を合わせた同種移植患者58名を対象に、実現可能性や安全性を判断するための非盲検第2相試験が実施された。抗ウイルス療法に反応しない感染症もしくは患者が標準治療に耐えられない患者が対象となった。【結果】サイトカイン放出症候群やその他の輸注関連毒性はなく投与可能であった。初回投与から6週間で全奏功率は95%、血漿中ウイルス減少率も97%と非常に有効な結果が得られた。2種類以上のウイルス感染が確認された12名中10名がすべてのウイルスに対して効果を示した。BKウイルス出血性膀胱炎に対して7割以上の患者で症状の改善を認めた。【結論】今回の非盲検試験にて実行可能で安全かつ有効であった。

2023年05月08日 八重 秀克

Outcomes of salvage haploidentical transplantation using posttransplant cyclophosphamide for graft failure following allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
同種造血幹細胞移植後の生着不全に対する移植後シクロホスファミドを用いた救援半合致移植の成績
Harada K, et al. Int J Hematol. 2022 Nov 1;116(5):744-753.

HLA半合致ドナーは、移植後生着不全の救済幹細胞移植の代替ドナーとして登場していますが、移植後シクロホスファミド(PTCy)を使用した救済ハプロ移植に関するデータは限られています。全国TRUMPデータ(2011-2019年)を使用して、移植後生着不全の救済ハプロ移植における移植成績を後ろ向きに調査しました(n = 33、中央値年齢34歳)。PTCyの総投与量は、26人(78.8%)の患者で標準用量の75-100 mg/kgであり、5人(15.2%)の患者で低用量の40-50 mg/kgでした。30日時点での好中球移植率は81.8%でした。1年間の全生存率(OS)と非再発死亡率(NRM)はそれぞれ47.4%と46.0%でした。標準用量群は、1年時点でのOS(61.1%対0.0%、P = 0.022)とNRM(35.1%対80.0%、P = 0.052)が低用量群よりも優れていました。さらに、標準用量群はII-IV度(11.5%対40.0%)およびIII-IV度(0.0%対40.0%)の急性移植片対宿主病(GVHD)の発生が少なかった。以前のSCTでのシクロホスファミドの使用と前処置は、OSまたはNRMに影響を与えませんでした。結論として、PTCyを使用した救援ハプロ移植は有望な生存率を提供します。PTCyを用いた救済ハプロ移植の有効性を検証するために前向き研究が必要です。

2023年05月01日 仲子 聡一郎

Incidence, risk factors, and impact of early cardiac toxicity after allogeneic hematopoietic cell transplant.
同種造血幹細胞移植後心毒性の発症率、リスク因子、予後への影響について
Pérez-Valencia AI, et al. Blood Adv. 2023 May 23;7(10):2018-2031.

この研究では、移植後シクロホスファミド(PTCY)によるGVHD予防をされた258人の成人移植患者、またはそれ以外のGVHD予防をした158人の成人移植患者において、同種造血幹細胞移植後180日までに発生する早期心臓イベント(ECEs)を調査した。全身放射線照射(TBI)は133人(31.9%)の患者に施行され、そのうち111人(83.4%)がPTCYと併用してTBIを受けた。移植後180日までのECEsの累積発生率は8.4%であり、心不全(n=13)および心膜合併症(n=11)が最も一般的な合併症であった。 ECEsの発生率は、PTCY+TBIを受けた患者で高かった。ECEsは、HLA完全一致移植や非血縁HLA9/10一致移植よりも、HLA半合致移植でより多かった。多変量解析では、PTCY-TBI-と比較して、PTCY+TBI+, PTCY+TBI-, PTCY-TBI+の患者でECEsのリスクが高かった。心疾患の既往はECEsの予測因子であった。ただし、高用量のCYを含む前処置レジメンを使用しても、移植後180日までの心毒性のリスクは増加しなかった。 ECEsは、非再発死亡の増加と生存率の低下と関連していた。 PTCYとTBIがECEsの予測因子であり、この合併症の移植死亡への影響を考慮すると、PTCYやTBIでの治療をうける患者では、心臓モニタリング計画の実施が適切であると考えられる。

2023年04月24日 森口 慎

Polatuzumab vedotin in previously untreated DLBCL: an Asia subpopulation analysis from the phase 3 POLARIX trial.
未治療のDLBCL患者に対してポラツズマブ ベドチンの治療効果を調査したPhase3のPOLARIX試験においての、アジア人の亜集団に限った解析
Song Y, et al. Blood. 2023 Apr 20;141(16):1971-1981.

第3相POLARIX試験において、未治療のDLBCLに対して、ポラツズマブ・リツキシマブ・シクロフォスファミド・ドキソルビシン・プレドニン(Pola-R-CHP療法)は従来のR-CHOP療法と比較して、安全性は同等のままでPFSを有意に延長させることが明らかになった。
本研究ではPOLARIX試験の、アジア人の亜集団における結果が全集団と一貫するかどうか (全集団でのPFSのリスク低下の 50% 以上として定義) が評価された。
全体で 281 人のアジア人患者(160人が全患者群・121人が中国の拡張コホートに所属)のうち、141 人が Pola-R-CHP群に、140 人が R-CHOP群に無作為に割り付けられた。
追跡期間の中央値は 24.2ヶ月で、 2年PFSはPola-R-CHP 74.2% (95% CI:65.7-82.7) とR-CHOP 66.5% (95% CI:57.3-75.6) で、全集団と一貫してPola-R-CHPが優れたPFSを有していた。(HR: 0.64; 95% CI:0.40~1.03)
安全性は、Pola-R-CHPとR-CHOPの間で同等であり、Grade 3~4の有害事象の発生率 (72.9% VS 66.2%)、重篤な AE (32.9% VS 32.4%)、試験治療の中止につながる AE (5.0% VS 7.2%)、および全Gradeの末梢神経障害 (44.3% VS 50.4%)も同程度であった。
結論として本研究は、POLARIX試験のアジアおよび世界の集団における Pola-R-CHPとR-CHOPの一貫した有効性と安全性を示している。

2023年04月17日 田添 久実代

Pathogenesis, risk factors and therapeutic options for autoimmune haemolytic anaemia in the post-transplant setting.
移植後自己免疫性溶血性貧血の病態・リスク因子・治療選択肢
Gabelli M, et al. Br J Haematol. 2022 Jan 1;196(1):45-62.

同種造血幹細胞移植(同種移植)後自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は約1-5%と稀な疾患で、移植後5-10ヵ月頃に発症する。同種移植後にAIHAを合併すると、非合併患者と比べ感染症などにより致死率が2倍と高くなる。
AIHA発症には移植に伴う薬剤の使用、合併症による胸腺障害、移植後免疫再構築の不均衡によるTreg減少によって生じる自己免疫寛容の欠如が関連していると考えられている。
移植後AIHA発症のリスク因子には小児・非悪性疾患・抗胸腺グロブリン(ATG)やアレムツズマブ・非血縁ドナー・ハプロドナー・臍帯血移植・GVHD・ウイルス感染症がある。一方で前処置強度はAIHA発症と関連しないとする報告が多い。
同種移植後AIHA治療の第一選択であるステロイドの治療奏効率は10-90%で、単剤の完全奏効率は30%以下と難治性である。二次治療としてリツキシマブを週1回、4週用いると治療開始3-6週後の奏効率は38-100%である。リツキシマブの反応性は、ABO型不一致移植やAIHA発症時にB細胞数が多い症例において良好である。脾摘は奏効不十分のため、他の薬剤不応の重症例のみ検討されるべきである。近年、シロリムスやボルテゾミブによる治療の有効性も報告されてきている。混合キメリズムの同種移植後AIHAではドナーリンパ球輸注も検討される。一方で、ミコフェノール酸モフェチルやシクロスポリンの治療有効性は限定的で、細胞障害性抗癌剤・アザチオプリン・ダナゾール・アレムツズマブ・オファツムマブ・エクリズマブの有効性は確立していない。
今後期待される治療法として、ダラツムマブ、アバタセプト、ホスタマチニブ、イブルチニブ、オリラノリマブなどがあるが、重症例かつ治療反応がない難治性血球減少の場合には、死亡率や合併症を考慮の上で2度目の同種移植も検討される。
同種移植後AIHAは死亡率が高く、早期診断とステロイドによる初期治療の迅速さが不可欠である。ステロイド不応・依存例ではリツキシマブも検討すべきである。

2023年04月03日 岡山 裕介