医療関係者の皆さまへ

臨床検査学、医療情報学とは(医療関係者の方へ)

当講座は学問として、臨床検査領域と医療情報学領域を扱う講座です。
当講座の医師は、病院の所属としては、臨床検査科(中央臨床検査部)と医療情報部と血液内科に兼務で配属されています。

臨床検査科の主な業務には、検査精度管理、検査所見作成、診断補助などがあります。
医療情報部の主な業務には、診療支援・研究支援のためのシステム導入と保守、及び診療データの質の担保と管理があります。

【臨床検査学の研究領域】

  • 臨床検査学は領域が広い
    研究分野は多岐にわたります。多くの臨床検査医は検査領域のなかでさらに血液学、病理、感染症、内分泌、免疫、超音波、遺伝子検査などの専門を持つことが多いです。
  • 新規検査方法の開発や、検査方法の改良
    新規検査方法の開発で、それまで診断困難であった疾患の診断に寄与したり、検査方法の改良でより臨床使用に耐えられたり精度が向上したりします。
  • 診断学の研究
    診断プロセスにおいて検査はほぼ必須であるため、病態診断学は臨床検査学の重要な領域の一つです。検査値による診断や予後因子の研究がなされています。
    関連する学会
    日本臨床検査医学会
     日本専門医機構の基本領域学会に認定されています。
    日本臨床検査専門医会
    日本検査血液学会
    その他関連学会・団体

  • 当講座は血液形態検査や造血細胞移植関連検査を専門としており、医療情報学との融合分野として、機械学習を用いたデータ解析などをしております。当講座のとりくみについては、本ホームページ「研究について」のタブをご覧ください。
  • また、病院中央臨床検査部にて行っている研究については、病院のホームページに記していますので、ご覧ください。

【医療情報学の研究領域】

  • コンピューターの能力を活用して、電子カルテに蓄積されるデータから医学的知見を探索すること、及び診療業務・臨床研究を支援する手法を確立することが医療情報学の研究目的です。
  • 近年、画像AIや生成AIの発展により、医療AIの開発とその発展のための情報基盤構築に社会的注目が集まる一方で、医療情報はセンシティブな要配慮個人情報を含むため、情報セキュリティー担保、個人情報保護、AI倫理など、法律や倫理的観点も十分に考慮する必要が求められます。そのため医療情報学の専門家には、医学知識、データサイエンス、コンピュータサイエンス、個人情報関連法、薬事関連法、医学研究倫理、AI規制など、分野横断的な幅広い知識が求められます。
  • 当講座では、医療統計学・情報学・ドイツ人工知能研究センター(DFKI)と共に、国際的な分野横断的医療AI開発プロジェクトに取り組むと共に、スマートウォッチや疾患別患者アプリを用いた情報創薬のための多施設共同研究、医療ビッグデータを構築し様々な研究に活用するための統合基盤システム開発を行う国家戦略的プロジェクトなどに参画しており、医療DXに関する先進的なチャレンジに取り組んでいます。

 本講座が参画している代表的な多施設プロジェクト

  • 「造血幹細胞移植後患者における、ウェアラブルデバイスとモバイルアプリケーションを用いた移植合併症予測支援システムの開発と外来フォローアップ体制の構築」(AMED研究代表施設)
  • がん全ゲノム解析等におけるゲノム情報および臨床情報等の情報基盤に関する研究」(AMED研究分担施設)
 関連する学会

 ①日本医療情報学会
 ②日本Mテクノロジー学会

臨床検査科/医療情報学業務について(医療者の方へ)

臨床業務に関して、医療関係者の皆様に知っていただきたい診療に役立つ注意点があります。いくつか代表的な例を紹介しますのでご参考にしてください。

臨床検査

基準値について

①基準範囲と臨床判断値を区別して下さい。

  • 昔は正常値/異常値と呼ばれ、正常と異常(疾患あり)を分けるカットオフと考えられてきました。現在、特定の疾患の診断を識別するための基準値は、臨床検査学的には臨床判断値と呼ばれます。
  • 現在は、「基準範囲」が用いられることが多く、健常人の95%がこの範囲に入るとされる値でカットオフを決めています。疾患があろうがなかろうが、5%の人は基準範囲外の値を取ります。つまり、基準範囲は、正常・異常の区別、特定の病態の有無を判断する値ではありません。
    ▶ 例)尿酸値は、痛風を起こさないためには尿酸が析出しない濃度でカットオフを設定すると好都合で7.0mg/dlが臨床判断値です。しかし健常男性で比較的多くの方が7.0mg/dlを超えています。これは「異常値」とは言いにくいです。
    ▶ 基準範囲は一定の基準を満たす健常人の95%がこの範囲に入るとされています。尿酸の基準範囲は男性3.7~7.8 mg/dL、女性2.6~5.5 mg/dLです。女性が6.9mg/dlの値を示すときは、痛風にはならないかもしれませんが、体内で異常が起こっている可能性があります。二次性の高尿酸血症として、腎障害や組織破壊、腫瘍などの鑑別が必要です。
    ▶ 尿酸値の基準を7.0mg/dl以下としている施設も多く、統一はされていないため、十分注意をしてください。

②基準値や測定値は、病院間で必ずしも統一されていません。

  • 基準値として、臨床判断値を採用するか、共用基準範囲を採用するかで値が大きく変わるものがあります。(例:尿酸、コレステロール関連)
  • 腫瘍マーカー検査は、試薬が違えば違った値がでることがあります。転院時の全医との数値の比較には注意が必要です。例えばCA19-9は差が大きいことで有名です。
  • 参考:大阪公立大学医学部付属病院 基準値一覧
白血球分類について

自動分類(機械測定)と目視測定の違い(長所・短所)に注意してください。

  • 白血球分類には自動血球分析機器による自動測定が行われますが、白血球の体積やフローサイトメトリー(レーザーによる細胞の大きさと細胞内部構造による分類)を用いています。
  • (腫瘍など)典型的ではない細胞の場合、メッセージ(フラグ)は表示されることが多いですが、完全ではありません。腫瘍が正常細胞に分離されることもしばしば経験します。たとえば末梢血中の白血病細胞が単球やリンパ球に分類されたりします。
  • 一方、目視分類ではメイギムザ染色標本上の100個程度の白血球を人の目により分類して割合(%)を出していますので、10000個程度を分類する機械測定に比べて値そのものの精度は劣りますが、異常細胞がある場合には効率よく見つけることができます。
凝固検体の冷蔵保存について

凝固検体は冷蔵保存しないでください。
冷却で第Ⅶ因子が活性化(コールドアクチベーション)され、PTが短縮する可能性があります。

パニック値について

検査科から対応について医師に問い合わせがあったときは返答をお願いします。

  • パニック値はCritical Valueとも呼ばれ、その定義は、「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値で直ちに治療を開始すれば救命しうるが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能である」値とされます。
  • パニック値は、迅速に確実に医師に報告する必要があり、医師の対応を検査科側も確認する必要があるとされるようになっています。
  • 値としてはパニック値を示しても、生命の危機ではない場合も多々あります(例:ITPで血小板が慢性的に低値だが出血傾向がない場合など)。パニック値の範囲を限定しすぎると見落としリスクが増え、報告しすぎると対応必要な状況を見落とすリスクがあります。臨床側と協議して適切な範囲を決定することが重要と思われます。

医療情報学

臨床研究のデータ収集について

①電子カルテのデータ収集に有用なツールについて

  • 臨床研究を行う際、「研究デザインの設計」⇒「倫理審査」⇒「データ収集」⇒「前処理」⇒「解析」⇒「学会・論文発表」といった流れがありますが、この中でも「データ収集」及び「前処理」に費やす労力は極めて大きいものとなっています。また、医療ビッグデータが整備されてゆく中で、従来の病態仮説に基づいた臨床研究のデザインに加え、ビッグデータから病態仮説を探索するデータ駆動型の新しい臨床研究のスタイルが注目を浴び始めています。
  • 当院の電子カルテPCには、DWHやREDCapなど効率的にデータ収集を行うことができるツール群が用意されています。これらのツール利用に関する課題は多々残されていますが、データ収集や前処理をできるだけ自動化の工夫を行うことで、臨床研究の効率化に留まらず、新しい臨床研究のスタイルや研究アイディアが生まれることが期待されます。
  • 電子カルテのネットワークから外部にデータを取り出す場合には、当院の「患者等の個人情報保護に関する院内指針(リンク)」をよく理解した上で、遵守する必要があります。

②研究用データ収集に向けたEXチャートの活用について

  • 日常診療で蓄積されるデータを研究に二次利用する上で、事前に工夫を行っておくことで、大きな効率化が得られます。
  • 例えば、実臨床において通常標準的に収集されるべき情報はEXチャート機能を用いて、構造化データとして入力する運用にしておくことで、定期的にDWHを用いて一括出力し、REDCapに一括入力することが可能になり、電子カルテからのREDCapへのマニュアル転記という二度手間が削減されます。また、そのEXチャートは日常診療の標準化にも役立てることができます。