科学技術振興機構(JST)は、2026年10月27日に創発的研究支援事業の2026年度募集における新規研究課題を決定し、本学から3件の研究課題が採択されました。
研究代表者:医学研究科 上村 紀仁(うえむら のりひと)講師
研究課題名:「線維構造から紐解くシヌクレイノパチーの起源と病態」
研究概要:
シヌクレイノパチー(パーキンソン病や多系統萎縮症)は、脳内にαシヌクレイン蛋白質の線維化と蓄積が見られます。近年のクライオ電子顕微鏡高分解能構造解析により、異なるシヌクレイノパチーのαシヌクレイン線維は異なる構造を持ち、これらが病態に深く関わる可能性が示唆されています。本研究では、疾患特異的な線維構造を規定する因子の同定と、疾患特異的αシヌクレイン線維を用いた動物モデルを開発し、シヌクレイノパチーの病態解明に取り組みます。
コメント:
高齢化の進展に伴い、パーキンソン病などのシヌクレイノパチーの患者さんは増加しており、その克服は重要な社会的課題となっています。しかし、現在も根本的な治療法は確立されていません。近年の科学技術の進歩により、これらの疾患に関わるαシヌクレイン線維の詳細な構造が明らかになってきました。本研究を通じて、疾患ごとに異なる病態が生じる仕組みを解明し、将来的な新しい診断法や治療法の開発につなげたいと考えています。
研究代表者:工学研究科 桑原 卓哉(くわはら たくや)講師
研究課題名:「元素機能の競争と協奏が拓く量子論的超潤滑界面の創成」
研究概要:
従来、機械システムの摺動界面は、単なるエネルギー損失源と見なされてきました。本研究では、摩擦界面を、せん断応力などの豊富な機械的刺激により化学反応が誘起される化学合成場として再構築します。元素特有の機能が摩擦界面において競争的あるいは協奏的に作用する原理を提唱し、反応経路の分岐と超潤滑界面構造形成を電子・原子レベルで解明します。これにより、量子論に基づいた超潤滑界面設計の実現を目指します。
コメント:
摩擦や潤滑は、私たちの日常にありふれた現象であると同時に、社会を支える重要な技術でもあります。しかし、摩擦界面で何が起こっているかを理解し、制御することが難しく、これまでその多くを「勘」に頼ってきました。そこで私は、原子レベルのシミュレーションを用いて摩擦界面で起こる未知の現象を解明し、原理や法則を紐解くことで、摩擦を自在に制御する技術の実現を目指します。
研究代表者:獣医学研究科 塚本 雅也(つかもと まさや)講師
研究課題名:「腸タフト細胞を起点とした自然免疫応答の種横断的解明」
研究概要:
腸タフト細胞は腸管上皮に存在する希少細胞であり、マウスでの研究から腸管自然免疫応答の起点になると考えられていますが、その機能には未解明な点が多くあります。そこで本研究では、腸タフト細胞を介した自然免疫応答の種差および共通性の体系的理解を目指します。そのために、ヒト・イヌ・ネコを対象として、生体組織および多能性幹細胞由来生体模倣バイオモデルを活用した種横断的解析を展開します。これにより、腸タフト細胞が腸管恒常性維持機構において果たす役割を明らかにします。
コメント:
自然免疫応答の最前線である腸管上皮において、希少細胞である腸タフト細胞が注目されています。しかし、その知見の多くはマウス研究に依拠しており、ヒトや伴侶動物において腸タフト細胞がどのような生体応答を担うのかは明らかになっていません。本研究では、この未踏領域に対し種横断的解析を通じた体系的理解に挑みます。これにより、腸タフト細胞が自然免疫応答ひいては腸管恒常性維持機構に果たす役割を明らかにし、難治性消化器疾患の理解をはじめ、医学・獣医学の発展に資する知見の創出を目指します。
関連情報
創発的研究支援事業 2026年度新規採択課題および評価者について(科学技術振興機構Webサイト)
https://www.jst.go.jp/souhatsu/call/sel26.html(新しいタブで開きます)
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