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2023年5月23日

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第34回サイエンスカフェ開催報告

 2023年5月9日(火)に、学術情報総合センター1Fのツクルマにおいて第34回のサイエンスカフェを開催しました。
 テーマは「防災と体力」です。避難や災害支援の場において、個人差の大きな体力が及ぼす影響は非常に重要な要素です。

 講師に、人と防災未来センター・リサーチフェローのピニェイロ アベウ タイチ コンノ 様と、大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターの今井 大喜 准教授をお招きし、「南海トラフ地震に備えた保育施設の津波防災と課題~避難訓練時に急傾斜地で乳幼児の搬送を行う職員の身体的負担の考察を通じて」「災害時の避難に必要な体力と避難所開設訓練時の身体的負担度」の2講演を頂きました。

 

第1部 「南海トラフ地震に備えた保育施設の津波防災と課題」

サイエンスカフェ_230509_コンノ氏2


 南海トラフ地震津波の影響範囲には津波浸水想定エリアに多くの保育施設が存在し、現状として保育士の人員が十分でないことから、幼児の集団としての歩行速度を考慮した避難計画には課題があることが示されました。また、極めて短時間に高台まで避難することが求められるために、幼児搬送のカートを複数名で押しながら傾斜地を登る保育士には酸素不足を伴う過剰な負荷で移動困難となる可能性が示されました。



第2部 「災害時の避難に必要な体力と避難所開設訓練時の身体的負担度」

サイエンスカフェ_230509_今井先生2


 避難時の体力評価においては、体重支持指数による評価を行う事で、活動量計の数値の単純比較では評価の難しい、年齢別の体力差が示されました。避難所開設においても多様な役割があり、疲労度も個人差が大きいため、運営においては配慮が必要であること、METs指標を使うことで相対的な負荷の比較や、エネルギー消費量換算としての評価が可能であることが示されました。 




 質疑においても、SDGsの重要目標との関連がコメントされ、特にジェンダー平等の観点からは避難時や避難所支援の体力的課題を補うためにも、男性保育士の必要性や地域社会のサポート体制について議論がなされました。
 今後の研究協力のニーズについても相互に理解を深める機会となりました。