化学バイオ工学科
研究員
化学生物系専攻 後期博士課程 修了
日本酒造りで培った発酵技術を活かした
食品素材や化粧品素材を研究開発。
根路銘さんは、発酵素材に関わる研究に取り組んでおられると伺っています。具体的なお仕事の内容をお聞かせください。
日本酒や酒粕、米麹などの発酵素材を活用した食品素材や化粧品素材の開発を行っています。今、美肌成分として注目されている成分が、日本酒に含まれるエチル-α-D-グルコシド(α-EG)です。このα-EGを飲用することで、真皮層のコラーゲン密度スコアが増加することがわかっています。私はこのα-EGに着目した開発を行っています。実際にα-EGを含有する原料を配合した化粧品も市場に出ています。
発酵素材の健康効果は広く知られていますが、そのメカニズムについてはまだ未解明なものもあり、多くの研究者がその機能成分の解析や効能のメカニズム解明に取り組んでいます。弊社では酒造りで培った発酵技術だけでなく、麹菌によるタンパク質生産に関する研究開発の技術を活かし、食品・化粧品・ヘルスケア・バイオ等の分野への貢献をめざしています。その一員として社会を支える仕事に携わることに充実感を感じています。
本学(当時の大阪市立大学)への進学を決めた理由をお聞かせください。
工学部の中でも化学と生物の両方を学べることが決め手となりました。実際に化学の分野では、有機化学・無機化学・物理化学・化学工学・電気化学を、生物分野では、微生物学・遺伝子工学・生化学・分子生物学と、両分野に関する基礎を身につけることができました。
大学で学ばれたどんなことが、今のお仕事に役立っていますか?
微生物学に初めてふれた際に、人類が確認している微生物はわずか数パーセントに過ぎないと知り、大変驚きました。そして大きな可能性を秘めた微生物の機能を利用した研究がしたいと、酵母の研究室を選択しました。酵母の細胞表層の構造と細胞壁タンパク質による乳化現象に関する研究では、抗真菌薬開発のための薬剤スクリーニング系の開発に取り組みました。研究を通じて学んだ実験手法や、生物と化学の知識が、今の仕事でもとても役に立っています。
今後の目標についてお聞かせください。
高齢化が進む社会において、キーになる考え方は「健康長寿」です。発酵をテーマに、人々が長く健康に生きることに役立つような研究成果で社会に貢献することが目標です。
受験生へのメッセージをお願いいたします。
工学部を志望する学生さんの多くは、将来は技術者として社会で働くことをめざしていると思います。けれども、具体的なビジョンを描けている人は多くないかもしれません。私自身も、入学当時には現在の自分の姿は想像もつきませんでした。しかし、大学で様々な分野を学んだことが、将来の選択に大きく影響を与えたことは間違いありません。大阪市立大学と大阪府立大学の2大学が統合された大阪公立大学でなら、将来の選択肢がこれまで以上に多く得られると思います。あなたらしい道を見つけてください。