宇宙航空推進研究グループ - 航空宇宙工学科

航空宇宙工学科

宇宙航空推進
研究グループ

  • 森 浩一 教授
  • 皆川 尚樹さん 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 博士前期課程 2年

空や宇宙をクリーンにする
エンジンを研究。

宇宙航空推進研究グループ 森 浩一 教授

持続可能な社会づくりは、私たちの暮らす地上に留まらず、空へ、そして宇宙へと広がっています。CO2削減や宇宙ゴミ除去にも繋がる新しい宇宙・航空用エンジンの研究に取り組む森教授にお話を伺いました。

プラズマジェット推進で、超音速の電気飛行機が誕生!?

自動車が化石燃料から電化への流れにある中、飛行機も電化をめざす動きが活発化しています。その基礎研究として、私が2022年から本格的に着手しているのが「大気吸込式プラズマジェット推進」です。吸い込んだ大気を用いてプラズマを発生させ、空気の流れを加速させて噴出することで、モノを推進させるしくみです。

プラズマは気圧が低い方が発生しやすいですが、気圧の低い成層圏以上での飛行が適しているのか、超音速の流れの中でプラズマがうまく発生するのか等、未解明な課題が山積しています。現在、プラズマの電気的性質を解析する実験中です。その先にマッハ10の超高速かつCO2を排出しない飛行機が待っているかもしれません。

JAXAとの共同研究で、宇宙ゴミの除去をめざす。

飛行機よりさらに上の高度800kmの宇宙空間には、人工衛星等の破片であるスペースデブリ(宇宙ゴミ)が大量に飛んでいます。中でも10cm以下の小さな破片は地上から観測できません。そこで、宇宙空間で小さなデブリにレーザーを照射して推進力を発生させ、その軌道を大気中へと変えて焼滅させるための研究も行っています。

宇宙で金属片にレーザーを照射した際の推進力の計算には「静電浮遊炉」を使用します。JAXAの筑波宇宙センターで実験を行ったほか、2021年には部品を取り寄せ、研究室でこの装置を作製。学内での実験も可能になりました。また、きぼうの静電浮遊炉にも材料を送ってJAXAに実験を委託し、そのデータを解析中です。

※きぼう……ISS(国際宇宙ステーション)内にある日本の宇宙実験棟

前向きなチャレンジが、新たな発見に繋がる。

本学の静電浮遊炉は、開発の第一人者であるJAXAの石川毅彦先生の指導を受けて完成させたもの。大学所有の装置としては日本唯一で、航空宇宙工学を学ぶにはとても恵まれた環境だと思います。また、本学での地上実験ときぼうでの宇宙実験の結果を比較し、数値シミュレーションを行っていく面白さもあります。

私は自分の手で何かを作りたいという思いから、宇宙工学の分野を志すようになりました。自分がどんなことをしたいのか、思いを膨らませること。また、今は興味がなくても前向きにチャレンジすること。そんなことから新たな発見があります。空や宇宙での人間の可能性を広げるための研究に、一緒に取り組んでみませんか。

航空宇宙分野のモノづくりに、
技術で貢献したい。

工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 博士前期課程 2年 皆川 尚樹さん 三菱重工業株式会社 内定

世界初の宇宙実験だから、得られるデータも世界初。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)をレーザーで除去するための研究として、JAXAと共同で、きぼうでの宇宙実験に取り組んでいます。人工衛星等の材料となるアルミニウムにレーザーを照射し、生じたプラズマによる推力を測定する世界初の試みです。

実験で使う静電浮遊炉は、本来は推力測定のためではなく、材料の物性を計測するための装置です。私の役割は、実験で得られたデータから推力に関わるものを拾い出して解析し、推力を導き出すこと。実験データは全て世界初であり、自分が今扱っているデータが未知の領域の今後に大きく影響します。ミスは許されないという責任感ととともに、大きなやりがいを感じています。

※きぼう……ISS(国際宇宙ステーション)内にある日本の宇宙実験棟

航空宇宙工学へのきっかけは、はやぶさのニュース。

もともと宇宙に興味がありましたが、中学・高校在学中に小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」の報道を見て、宇宙の持つ可能性の大きさに魅了されました。航空宇宙工学を学べる大学を調べ、本学に入学。航空宇宙工学に興味を持つ仲間の存在が刺激となり、チームで設計・製作を行う演習科目等、楽しいスタートを切れました。

しかし、楽しいだけではなく、日本屈指の研究環境だからこそ避けられないハードさがあることも痛感しました。そんな中でJAXAの先生による講演会には積極的に参加していたのですが、同じ大変な思いをするなら、前人未踏のフロンティア領域にチャレンジしたいと考えるに至り、森研究室で学ぶことを決意したのです。

最先端の研究所で、航空宇宙の未来を拓きたい。

就職活動に際しては、コンサルタント企業、IT、自動車など幅広くフィールドを広げてインターンシップに参加。けれども、やはり自分にとって最も魅力的に映ったのは、航空宇宙に関わる企業でした。中でも三菱重工は航空宇宙分野のトップ企業であり、事業のスケールの大きさも、研究者としてのモチベーションを高めるものでした。

入社後は総合研究所に勤務する予定です。JAXAとの共同事業もあるので、社会人として再びJAXAの方と仕事ができれば嬉しいです。在学中に培った知識と能力を、より社会的な価値創造に近い場で発揮したいです。航空宇宙の分野のモノづくりに、技術の研究を通して貢献できればと思っています。

MESSAGE 受験生へのメッセージ

今は受験勉強が辛いかもしれません。けれども、大学では自分の興味あることをとことん勉強できるので、最後まであきらめずに頑張ってほしいです。サークルや学生団体での活動も楽しいですよ。