地震や火災に強く、
環境にやさしい構造を開発。
構造材料の主力はコンクリート・鋼材・木材であり続ける一方、建築への社会ニーズは変化しています。従来と異なる構造材料の可能性を探り、新しい構造システムの開発をめざす鈴木准教授にお話を伺いました。
超弾性合金+コンクリートで、被災後の修復を簡単に。
建築を考える際の大きな課題が、地震対策です。高層から超高層の建物であれば免震構造※にできますが、中層まではコスト的に導入が困難です。しかし、集合住宅を含む中層の建築物の方が、高層以上よりも建築数が多く、対策が必要です。私は、中層の鉄筋コンクリート構造に適用できる構造システムの開発に取り組んでいます。
速やかな復興のために重視されるのが、直しやすさ=修復性です。そこで注目したのが「超弾性合金」。従来の鉄筋とは異なり、揺れで変形しても元の形状に戻ります。復元後は変わらぬ性能を示すため、コンクリートのヒビを埋める程度の簡単な修復で再生。現在、銅をベースにした合金で、こうした「損傷制御型」の構造を研究中です。
※免震構造……建物と基礎の間に積層ゴム等の免震層を設けた構造。地盤から地震力を受けないため損傷が少ない。天然資源や産業副産物を取り入れ、木質構造を新しく。
脱炭素の流れの中で、構造材料にも天然資源や産業副産物を取り入れる動きがあります。木材は、燃やさない限り炭素を固定する材料として再評価されています。バサルト繊維は、玄武岩を粉砕し溶鉱炉で溶かして紡糸した100%天然の繊維。ジオポリマーは、製造時にCO2を発生せず、原材料に多様な産業副産物を含み、「セメントを使わないコンクリート」と呼ばれる耐火・耐薬品性などの高い複合材料です。
バサルト繊維を木造の補強材とし、ジオポリマーで被覆することで耐火被覆材として機能させれば、高耐震高耐火の新しい木質構造システムが生まれる可能性があります。現在は力学的性能を確認するために、実験やシミュレーションでデータを収集中です。
多彩な構造材料に精通すると、次代への答えが見える。
多様な構造材料の理解のために、2年次には各材料の専門家をゲスト講師に招いた授業を開講。本学でしか学べない内容です。また、研究室では、試験体の設計・施工・破壊実験とシミュレーションを学生中心で行います。知識と経験の両面から、構造について深く考え、今後の課題を解決する力を養ってもらいたいと考えています。
建築の用・強・美のうち、強(安全性・耐久性)を担うのが構造。現在も建築=デザインといったイメージが強いですが、構造力学といった体系化された学問をベースに新しい技術を取り入れながら設計指針というゴールをめざして考え抜く構造も非常に面白い分野です。人々を守り、生活を支える新しい構造システムを一緒に考えましょう。