装置工学グループ - 化学工学科

化学工学科

装置工学グループ

  • 仲村 英也 准教授
  • 岸田 尚樹さん 工学研究科 物質化学生命系専攻 博士後期課程 2年

「ものづくりの超一流料理人」を
めざして。

装置工学グループ 仲村 英也 准教授

医薬品・化粧品・食品・洗剤等の有機粉体から、電池材料・セラミックス・トナー・鉄鉱石等の無機粉体まで、ものづくりに不可欠な粉体。そんな粉体プロセス(製造工程)の研究開発を行う仲村准教授にお話を伺いました。

粉体コーティング技術で、全固体電池の性能向上に挑む。

粉体とは、粉や粒が集まったもの。見た目が粉末状のものだけでなく、液状の塗料や固形のプラスチック等も粉体からなり、製鉄所が生産する巨大な鉄鋼も粉末状の鉄鉱石が原料です。つまり、ものづくりにおいては、必ず粉体を扱うといっても過言ではありません。

新技術にも粉体は不可欠です。現在、電気自動車への転換に向けて全固体電池が注目されていますが、電解質が固体になると電極中の活物質が膨張・収縮するため接合の維持が難しいのが課題です。私の研究室では、電極中の活物質と電解質の接触を保つために、活物質の粒子を粉体でコーティングする技術を研究中です。プロセスを設計・試作し、活物質の粉体を加工する実験を行っています。

謎の多い粉体のふるまいを、シミュレーションで追究。

また、材料の高機能化に伴い、異なる粉体を組み合わせて新しい粉体を作る必要も生じています。しかし、粒子の大きさ・形状・付着性は千差万別のため、粉体のふるまいの大部分は予測不可能です。製造の際に、試行錯誤と経験でうまく乗り切れることもありますが、それだけでは新しい変化に対応できないケースもあります。

そこで粉体を混合する際のふるまいを解明する研究にも着手しています。混合機内の粒子のふるまいを緻密に計算し、計算結果をAIに学習させて混合粉体の均質性を予測するモデルを開発しています。今後は、複雑な実在の粉体を扱えるように、新たなモデルを構築し、シミュレーションの幅を広げる予定です。

懐の深い化学工学。そのフィールドは無限大。

化学工学が関わる分野は多岐に渡ります。例えば、すでにご紹介した全固体電池の研究は、電池材料研究の第一人者である応用化学科の林晃敏先生のグループとの共同研究からスタートしました。今では、大阪公立大学全固体電池研究所で、多くの異分野の研究者と共同研究に取り組んでいます。企業との共同研究先も、電池・自動車・鉄鋼・食品・医薬・化学・化粧品など非常に多彩です。

また、実際の研究内容も、粉体を使った実験、装置の設計・試作から、プログラミングをしてコンピュータを走らせるシミュレーションまで、多様な研究スタイルを経験できるのも特色です。

極上の食材を最高の料理にするのはシェフの腕次第であるように、各分野で開発されてきた高品質の材料は、優れたプロセスによって良い製品になります。すでにご紹介したように、粉体は非常に多くの分野に繋がっています。めざす業界で「ものづくりの超一流料理人」になるための基礎を、化学工学科で身につけてください。

自分らしい学びのスタイルを
獲得しました。

工学研究科 物質化学生命系専攻 博士後期課程 2年 岸田 尚樹さん 住友ファーマ株式会社 内定

転動ドラム内の粉体の挙動をシミュレーション。

私が取り組んでいる研究は、粉体運動挙動のシミュレーション。転動ドラム※1の中での120万個の粒子を対象としています。まずは離散要素法※2を使って、一定の経過時間における全ての粒子の挙動をワークステーションで計算します。その計算結果をAIに学習・予測させ、離散要素法による計算値との一致を確認。約1年がかりでモデルを完成させました。

今回のモデル構築により、現実のプロセスにより近い長時間のシミュレーションが可能になりました。けれども、このモデルが想定する転動ドラムは直径12cmで、全粒子は同じ大きさの球形の理想形。あまり現実的とはいえません。ドラムを大きくしたり、粉体の粒子径にばらつきを持たせたりして、より現実に近いシミュレーションの環境を整えるのが目標です。

※1 転動ドラム……粒子を混合させる装置の1種。 ※2 離散要素法……粒子集合体の力学的挙動を解析する手法。

学部長のひと言で、一気に高まったモチベーション。

本学が第1希望ではなく、入学が決まった時は前向きな気持ちではありませんでした。けれども、そんな気持ちが吹き飛んだのが入学式です。現学部長・綿野先生からの「挫折を感じたからこそ、挑戦的な姿勢がある」とのメッセージにハッとさせられたのです。そして、本学から未来へ歩んで行こうと、気持ちが切り替わりました。

化学工学は、理論的な実験よりはものづくりがメイン。0から1を作るより、1から10へ物事のスケールアップを図る学問です。また高校で学ぶ化学とは違い、化学工学では現実で起こりうる誤差を考慮し、環境負荷や収支など社会実装に近い部分で物事をとらえます。ものづくりに興味がある私にとっては、とても魅力ある学びです。

粉体工学会では、ベストプレゼンテーション賞を受賞。

仲村先生の粉体の授業を受け、その理論のユニークさとシミュレーションへの興味から、装置工学研究室へ。博士後期課程を含め学生数が多く、楽しく真剣な空気が好きです。また、仲村先生は学生への指導がとてもきめ細か。プレゼンの苦手な私に対し、発表練習や学会参加の機会を数多く設けてくださいました。指導のおかげで、粉体工学会でベストプレゼンテーションを受賞できたと思います。

内定先の住友ファーマでは、シミュレーションを活かした製剤研究に携わる予定です。研究室で培った粉体プロセスの専門的知識や考え方、広範な知識を積極的に吸収する姿勢を活かし、実社会でのものづくりに貢献したいです。

MESSAGE 受験生へのメッセージ

受験勉強には多くの時間を費やすため、気持ちが疲れることもあると思います。けれども受験で学ぶ内容は工学を学ぶ上で必ず役立ちます。問題の解き方を知ることを楽しんで、受験というイベントを乗り越えてください。