ユビキタスシステムで、
人はもっと笑顔になれる。
ユビキタスとは、いつでもどこでも意識することなく情報技術を利用できるしくみのこと。位置情報センシングで、介護施設のスタッフと利用者双方のウェルビーイング実現をめざす藤本准教授にお話を伺いました。
サイバー空間と連携。実世界の超スマート化をめざす。
実世界での私たちの行動を情報として集めると、課題解決の糸口になります。例えば実世界での「位置情報」を、サイバー空間に集めて分析すると、地域・世代・気象等ごとに一定の行動パターンが見えてきます。これを渋滞回避や地域活性化といった課題の解決にうまく活用すれば、実世界を「超スマート化」することができます。
その第一歩として私が取り組んでいるのが、介護施設のスマート化です。介護スタッフは、ひとりで複数名の利用者をケアするため、現場でその都度介護記録を取りにくいのが現状です。その結果、業務終了後のミーティングが数時間に及び、大きな負担に。そこで自動で簡易的な記録を取るために注目したのが「位置情報」です。
スタッフと利用者の位置情報は、現場をこんなに変える。
協力先の介護施設にビーコン※1を設置し、介護スタッフと利用者の位置情報を記録。食堂にいれば食事、浴場にいれば入浴とおおよその介護内容が推測できます。これを自動出力すればミーティングの時短に繋がり、本質的な議論に時間を割くことが可能になりました。
これらのデータを蓄積すれば、介護のパターンも分析できます。今後は、トイレの回数と健康状態の相関関係を参照した体調管理や、対話の数・時間の調整による利用者のQOLのレベル向上等もめざしています。また、介護の成功・失敗事例のデータをスタッフ育成の研修材料にした業務クオリティ向上、さらには能力や個性に応じた個別の介護プランの自動生成も実現できればと考えています。
※1 ビーコン……Bluetoothの電波を発信する端末。電波圏内に入った受信機の位置情報の取得が可能。ウェルビーイングの追究には、面白がることが大切。
私の研究がめざしているのは、スマート化によるウェルビーイング※2の実現です。今回の事例なら働く介護スタッフ、利用する高齢者、施設の経営者の全員がより幸せになるシステムの構築です。それには、自らが楽しいと思って研究する姿勢が何よりも大切。学生時代からずっと、何か世の中に役立つことを創りたいと歩んできました。
3年次後期のスキルアップゼミから、私が常に学生の皆さんに伝えているのは「街に出てみよう」ということ。研究室にいても課題は見つかりません。自分自身で体験した不便や不満こそ社会の課題です。それを持ち帰り、解決策を打ち出すプロセスを楽しんでほしいです。私も共に学ぶ仲間として一緒に成長したいと思っています。
※2 ウェルビーイング……本質的に価値ある状態、心身ともに満たされた状態のこと。