謎多き流体物理現象。
その可能性を探る。

一滴のしずくから海の波まで、様々な規模や種類のある流体。実験・数値計算・理論解析によって、流体物理現象のメカニズムを解明し、エネルギーを有効活用するしくみを研究する脇本教授にお話を伺いました。
波の力を有効利用! 既存の防波堤が発電装置に。
日本は海洋国ですが、欧米ほど波力発電装置の開発が進んでいません。漁業や海運業が発達した日本では、海上の構造物は漁場の確保や船舶の運航を妨げるからです。私の研究室では、海の仕事に影響を与えず、防波堤内部に設置できる波力発電装置を開発中です。
注目した防波堤のタイプは、スリット式防波堤。波は長方形のスリットから遊水室と呼ばれる空間に入りますが、その際に生じる渦で波を消すしくみです。この時の水流のエネルギーを有効活用するために、遊水室を行き来する水がどの方向から来ても一定方向に回転するサボニウス型水車※による装置を考えました。現在、模型を使って流速と出力の関係を示すデータを収集し、分析中です。
※サボニウス型水車……円筒を縦に割り、ずらして中心に回転軸を付けた構造の水車。
なぜパイプ内の抵抗が減る? 解明の手法を独自開発。
石油・水・冷媒など、パイプ中を流れる多種多様な流体。この「管内流」に抵抗が生じて流れにくいと、エネルギーロスに繋がります。しかし、ある種の界面活性剤を溶媒に添加すると抵抗は7~8割も低減します。この現象は、流動下の壁際でミセルがSIS(せん断誘起構造)を形成するために起こると考えられています。けれども、流動するSISの検出は難しく、そのメカニズムは未解明でした。
解明の糸口として、私の研究室では検出手法を独自開発。SISの中に入ると光が弱まる蛍光分子を管内流に入れ、その蛍光強度を観測する方法です。予測通り、管内の壁際でSISの形成を観測できました。今後はSISと抵抗軽減効果の関係をより詳しく調べる予定です。
知識を丸呑みにせず、自らの体験と重ねて考える力を。
波力発電装置でも管内流でも、私の研究室で扱う実験装置は基本的には市販されていません。つまり、一点物の装置を自作する必要があります。そんな時に大切にしてほしいのが、本や授業で身につけた知識を丸呑みにしないで、自分の個人的な体験と重ねて考えるということ。それを楽しめる人は大学での学びになじめると思います。
幼い頃から自動車・列車・飛行機等が好きで、次々と開発される「技術のしかけ」を本で読むのが楽しく、技術者・研究者をめざすようになりました。「技術のしかけ」なしで作られたものはありません。ディスカッションや他の研究グループとの合同研究、企業との共同研究など、意見交換しながら一緒に新しいしかけを創出しましょう。
