都市基盤計画研究グループ - 都市学科

都市学科

都市基盤計画
研究グループ

  • 吉田 長裕 准教授
  • 御所名 航也さん 工学研究科 都市系専攻 博士前期課程 2年
  • 石ヶ森 郁弥さん 工学研究科 都市系専攻 博士前期課程 2年

交通・モビリティの変革で、
まちが活きる。社会が変わる。

都市基盤計画研究グループ 吉田 長裕 准教授

より安全に、よりアクセスしやすく。交通の未来を考えるには、従来の交通手段に依存したジャンルの壁を越える必要があります。「モビリティプランニング」でワイドに交通を捉える吉田准教授にお話を伺いました。

脱炭素&多様性。今後の社会がめざす公共空間とは?

気候変動に対する要請は日々厳しさを増し、文明社会は大きな転換を迫られています。そのひとつが、カーボンニュートラルへの道。私の専門である運輸・交通分野も早急な脱炭素化が望まれています。最も効果的なのは、化石燃料を使った移動を他の移動手段を組み合わせて代替していくこと。短距離移動では、徒歩・自転車に加えて小型の電動モビリティ等を利用しやすい環境に導いていくことが不可欠です。

しかし、日本の公共空間はこれらの低炭素交通モビリティを使った移動を阻む多くの課題が山積しています。こうした課題を洗い出し、新たな交通計画のあり方を検討し公共空間の設計にフィードバックするのが、私の研究室の取り組みです。そして、地方でも都市でも、高齢であっても障がいがあっても、誰もが自由に移動可能な、多様性あふれる社会の実現をめざしています。

インフラ整備からその使い方まで、視野も行動も幅広く。

研究室では様々なレベルから公共空間の再構築にアプローチ。ひとつは海外の先進事例の現地リサーチです。歩行者自転車の安全性を優先する信号交差点(マンチェスター)、自転車専用の信号や橋や道(コペンハーゲン)など、車と交差しないしくみを日本でどう実現するかを検討しています。

また、人の移動の安全性や快適性などを空間設計に反映するために生体反応(脳波・心拍・汗・筋電図)を計測して、移動時の空間認知と反応のメカニズムを把握。事故や危険事象を未然に防ぐための介入方法についても摸索しています。

他にも、次世代への自転車文化の継承をめざし、他国から関係する指導者を招聘。こどもが遊びの中でスキルを体得できる独自の指導法を広める中で、障がいのあるこどもが自転車に乗れるようになるという嬉しい発見=今後の常識にも遭遇できました。

「日本ではできない」を乗り越え、正解なき道を進む。

今、全ての交通手段による移動を、シームレスに繋ぐMaaS(Mobility as a Service)の動きが世界的に拡大中です。日本でも、MaaSを意識した新たな交通関連プロジェクトが進行中。都市の個性に応じて、自転車シェアリング、オンデマンドバス・タクシー、バスラピッドトランジット、次世代型路面電車、自動運転バス、空飛ぶクルマなどの導入が検討されており、私もこういった活動を支援しています。

「日本ではできない」という既成概念をどう打ち破るかが、私の役割だと思っています。次世代のまちの風景を、交通から考えてみたい人は、ぜひ私の研究室をノックしてください。

交通の専門家として、
事故対策に携わりたい。

工学研究科 都市系専攻 博士前期課程 2年 御所名 航也さん パシフィックコンサルタンツ株式会社 内定

自転車事故の半数は、交差点で発生している。

私が取り組む研究課題は「信号交差点における自転車事故」です。日本の自転車事故の半数は交差点で発生していて、直進する自転車と左折車の隅角部での衝突が典型的な重大事故のパターンです。交差点の形状や運用条件は交差点ごとに異なっているのが現状です。

そこで、東京都内4箇所の交差点をビデオカメラで定点観測。左折車と自転車の走行軌跡を機械学習の手法を使って解析しながら、衝突の危険度の目安を数式で求め、危険なパターンをピックアップしました。今後は、危険な状況が交差点の構造のどの部分と関わっているのか、また左折車のドライバーが状況をどう認知しているかを分析し、どのような改善策が有効かを検証する予定です。

豊かさに直結する「交通」に魅力を感じて。

実は本学工学部は第1志望ではありませんでした。けれども都市学科で「都市デザイン」「安全防災」「環境創生」の3つの構成領域から都市に関する設計・運用・管理の知識を身につける中で、都市や交通について学ぶことに夢中になっていきました。そして幅広く学んだことで、社会的な問題を多面的に、俯瞰的に捉えることができるようになったと感じています。

中でも特に魅力を感じたのが、3年次に受講した交通に関する科目です。交通は人々の生活に密接に関わり、物理的・精神的豊かさに直結していると理解できました。そこで交通の分野を専門的に学ぼうと決意しました。

研究室では、自主性と経験値を獲得。

吉田先生は、何か相談するとヒントや機会を与え、学生が主体的に考え実践することを促してくださいます。学外での活動にも支援があり、イギリス・オランダ・デンマークでの実地調査では、歩行者・自転車・自動車を安全・円滑に処理できる高度な交差点の特徴を理解できるようになり、貴重な経験になりました。現在は国際会議での学会発表の準備に追われていますが、学んできたことが研究成果につながる手応えを感じる日々を送っています。

修士課程修了後は、建設系コンサルト企業に就職する予定です。国や地方自治体からインフラの企画設計や維持管理を担うのが主な業務になります。研究活動の経験を活かすことのできる交通に関わる仕事に携わり、人々の暮らしを安全に豊かなものにしていきたいです。

MESSAGE 受験生へのメッセージ

工学部は、幅広い分野の中から、自分のやりたいことを見つけられます。そして、新しい先生や仲間、新しい学びとの出会いが待っています。今やっている勉強が必ず将来の楽しいことにつながっていくので、頑張ってください!

日本のインフラを、
交通から支えたい。

工学研究科 都市系専攻 博士前期課程 2年 石ヶ森 郁弥さん 株式会社建設技術研究所 内定

地域の交通課題解決プロジェクトに参画。

学部4年次より、学会のプロジェクトに参画し、高校生の通学問題に取り組んでいます。私が担うのは、登下校時の自転車の運転行動についてです。

山間部でバスの便数が少ない環境の下、自ら通学できるように電動アシスト自転車を提供。自転車にカメラを設置して、通学の様子を記録するとともに、センサーを装着し心拍数・速度・ケイデンスのデータを収集します。撮影した動画やデータを高校生が見ながら意見交換を行うワークショップを企画・実施し、より安全な自転車の乗り方へ導くための方法について交通行動の変容過程に着目して研究しています。

※ケイデンス……1分間あたりのペダルの回転数

漠然としていた「まちづくり」が、徐々にクリアに。

もともとまちづくり・都市計画に興味がありましたが、文系の学問だと思っていました。高校3年の時に「都市工学」として工学部で学べることを知り、専門的に究めたい気持ちが高まりました。都市を構成するまちを将来どう改善していくのかを学びたくて、都市にある本学を志望しました。

入学して学び進むうちに、漠然ととらえていた「都市計画」がどんどん明確になっていきました。「安全性」「快適性」といったキーワードも、数学を駆使して客観的なデータとして把握し、改善に導く力が求められているのだとわかりました。今となっては、行く先々の都市風景を何となく眺めるのではなく、成り立ちなどを調べたり、まちの空間や人々の交通行動についても考えたりすることが習慣になっています。

人間関係を含め、最高の研究環境で学べる。

3年次の授業で交通計画を学んだ際に、人の交通行動のメカニズムや関連制度も工学分野の学問だと知り、もっと学んでみたいと思いました。研究室は、先生と学生の距離も近く、楽しく自由な雰囲気です。とはいっても、先端的な研究事例を学びながら、自らの研究活動を、計画を立てながら着実に進め、国内外の学会等で発表していく必要があり、高度な自主性が求められます。

卒業後は行政の仕事を請け負う建設コンサルタント企業に就職予定です。研究活動をしながら、技術士に関わる試験に合格することが目下の目標です。資格を取得しながらキャリアの方向性を定めようと思っていますが、本学で学んできた交通インフラには関わり続けたいです。そしてインフラ構築や制度設計など、人の生活を支えることに貢献したいです。

MESSAGE 受験生へのメッセージ

工学部は、全て「人のため」「まちのため」へと繋がっていると思います。モノや制度を作り、人やまちをより良く変えていきたい。そんな思いのある人に、向いている場所です。全力で学びに来てください!