特別講演「先天代謝異常症の栄養療法」

特別講演「先天代謝異常症の栄養療法」

<特別講演>

「先天代謝異常症の栄養療法」

東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野

大浦 敏博 先生


 1953年ビッケルらによりフェニルケトン尿症患児に対する低フェニルアラニン食の効果が初めて報告された(Influence of phenylalanine intake on phenylketonuria. Lancet. 1953 Oct 17;265(6790):812-3.)。その後、アミノ酸制限食の効果はホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症などでも有効であることが確かめられアミノ酸代謝異常症治療の主流となった。さらにプロピオン酸血症、メチルマロン酸血症などの有機酸代謝異常症においても有害な中間代謝産物の前駆体アミノ酸を制限する食事療法が導入され効果を挙げている。制限アミノ酸は全て必須アミノ酸であり、これらは成長にも不可欠である。すなわち、その患児にとって最小必要量の制限アミノ酸を与え、その他の栄養素なども欠乏しないように注意深くモニターしなくてはならない。これら先天代謝異常症の食事療法のキーワードは「必須アミノ酸」、「異化」、「同化」であることを強調したい。特に有機酸代謝異常症では“異化の防止”が最重要ポイントであり、自験例を元に解説する。