核医学

基本情報

病態診断・生体機能管理医学講座  核医学

代表者 河邉 讓治准教授

核医学教室は昭和36年(1961年)南館(当時)に開設された「がんセンター」に発しその後、昭和45年(1970年)に核医学研究室に発展、平成12年(2000年)に核医学教室となり現在に至っています。

2019年10月より、大阪府で初めて最新型半導体PET/CT装置が稼働を始め、FDG-PET/CTによる腫瘍診断や脳アミロイドPETによる認知症の臨床研究も行なっています。また附属病院7階病棟の新設された放射性同位元素使用のための隔離病室における、甲状腺癌転移に対する放射性ヨード治療を行なってきたことなどが当教室の特色であり、2022年1月からは、ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対する、Lu-177によるペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)が開始されました。質の高い核医学診療の提供を目指し、他科・他学、地域の医療機関と連携して日々診療を行なっています。

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場所
学舎 11階
連絡先
TEL:06-6645-3885 MAIL:asahimachinm@gmail.com

 

教育方針

学部教育

M4における「核医学」(4コマ)核医学総論、腫瘍核医学、核医学機能検査、核医学治療の4つの講義を通して、医療用放射性同位元素とそれらを用いた放射性薬剤について充分な理解と知識を深める。それらを元に核医学検査の実際と用いられる装置について学習する。

 

臨床教育(研修医の育成)

M5におけるBSLでは、核医学検査の実際を画像診断の観点から学習し、核医学治療病室、核医学検査室等において実際の核医学診療がどのように行なわれているか実習する。
研修医教育においては、核医学検査全般に取り組むことにより、的確な核医学検査の実施、読影、所見作成が行なえるように指導する。

研究指導

核医学は従来の臨床核医学を含めポジトロン核種を用いた新しい脳・腫瘍分野など多岐に渡っている。研究医、大学院生に対しては、本人とよく相談してテーマの選定を行ない、学会発表、論文作成など計画的に指導を行なっている。また、核医学専門医、臨床PET認定医の取得など、核医学の専門家を養成する教育指導も行なっている。

研究について

核医学は、分子生物学的手法として重要であり、それを実臨床にフィードバックする臨床応用も盛んに行なわれている。また、実際の臨床では、様々な代謝診断による機能診断・治療に多用される。当教室では、PET/CT、SPECT/CTなどを用いた、新しい核医学検査薬のヒトへの導入の研究、実臨床から得られるデータの解析による疾病の診断研究、企業・他学と共同で核医学検査の臨床診断を容易にするコンピュータソフトウエアの開発などを行っている。

教室を代表する業績

  • 2003年に医学部「新産業創生研究センター」内に日本メジフィジックス社と共同で「核医学画像研究開発センター」を設立し、核医学画像処理ソフトの開発研究を行っている。
  • ソフトウエアの開発:2004年に核医学画像処理PCソフトウエアパッケージ「Prominence Processor」、2013年に骨シンチ画像Viewerソフトウエア「VSBONE 」を開発した。
  • 特許:2004年「キノン系化合物を有効成分とする肝癌の予防剤」(特願2004-1215、国際出願PCT/JP2004/018643)、2011年「心筋部画像診断に用いたコントロールデータベースの作成装置、作成方法及び作成プログラム」(特願2011-156102)を申請した。
  • 著書:2005年「クリニカルPETポケットブック」塩見進(監修)、河邉讓治、露口尚弘、鳥居顕二(編集)、2014年「核医学検査FAQ」塩見進(監修)、河邉讓治、東山滋明(編集)。

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

放射性同位元素を用いた内用治療の研究

大阪公立大学医学部附属病院には放射性ヨードを使用するための隔離病室があり、甲状腺癌に対するI-131内用治療、ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対する、Lu-177によるPRRTを行っています。また、外来では、バセドウ病に対するI-131内用治療、Ra-223による去勢抵抗性前立腺癌骨転移治療などを行っており、これらの治療成績を評価し臨床利用にフィードバックしています。

脳血流シンチグラフィーを用いた認知症の鑑別と治療効果判定の検討

我が国の高齢化に伴いアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患による認知症が社会的問題として取り上げられている。アルツハイマー型認知症等の認知症の治療においては、認知機能障害が軽度である早期から認知機能低下を抑制することが最も効果的とされており、早期の診断と治療開始が重要である。近年、脳血流シンチグラフィーにおいて、各個人の脳画像情報を標準化された脳図譜上に表示する処理(解剖学的標準化)が開発され、わずかな血流低下もz値と呼ばれる定量値として描出可能となった。当教室では脳血流シンチグラフィーに統計的画像解析処理を施行し、アルツハイマー型認知症の早期診断およびレビー小体型認知症等他の認知症との鑑別診断と治療効果判定の検討を行っている。また、自殺、虐待、飲酒運転などの社会的問題と密接に関連するアルコール依存に伴う認知症についてもアルコール依存治療クリニックと連携を取り、他の認知症との鑑別診断や予後予測の検討も行っている。

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消化器領域における核医学診断

当教室では以前より消化器(肝胆膵、消化管)領域における各種核医学検査を行い、その有用性について研究をしている。肝予備能検査であるアシアロシンチグラフィにて急性肝障害や慢性肝障害の病期と予後を評価し、そのSPECT/CT画像を用いて分肝機能や肝障害の病状との関連を調べる研究、非侵襲的に門脈血行動態を評価する検査である経直腸門脈シンチグラフィにて各種疾患における門脈圧亢進症や門脈大循環シャントの有無と程度を評価する研究、さらにはラジオアイソトープを用いた胃排出機能検査である胃排出シンチグラフィにてFunctional dyspepsiaや糖尿病を始めとする各種疾患における胃排出能を評価する研究を行っている。また、FDG-PETを用いた消化器領域の悪性病変の診断や、各種疾患における肝臓の糖代謝の研究も行っている。

核医学診断補助ソフトの開発

骨シンチなど核医学検査は、使用するガンマカメラ等によりサイズなど得られる画像が大きく異なる。複数台のガンマカメラを使用している施設や機器更新により異なるガンマカメラが導入されるなどで同一患者でも経時的にみてかなり画像がことなること、異常集積が転移かそれ以外かで苦慮することも多い。そこで、関連する企業と共同研究を行い診断補助ソフトの開発を行っている。

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臨床への取り組み

PET検査年間約1200例、シンチ検査年間約3000例を行っており、附属病院の高度な診療体制を支える重要な検査部門となっています。あべのハルカスの21階にある先端予防医療部附属クリニックMedCity21では201912月から、最新型半導体PET/CT装置によるFDG-PET/CT検査を組み込んだPET/CTエグゼクティブコースが開設されました。202010月からは最新型半導体PET/CT装置を用いたFDG-PET/CT検査を主とするPET/CT検診コースも開始しています。附属病院7階に非密封病室3室を持ち、甲状腺癌に対する放射性ヨード内用治療を行っています。この治療を行なうためには、高い放射線遮蔽能力を必要とするため、設備が整っている施設が少なく、入院治療を行なっているのは大阪府下では事実上当院のみという現状です。和歌山県、奈良県など近畿他府県からの患者様も多く受診されています。また、外来におけるI-131残存甲状腺症破壊治療、バセドウ病治療、Ra-223による去勢抵抗性前立腺癌骨転移治療なども行っています。

スタッフ

准教授 河邉 讓治
講師 東山 滋明
病院講師 吉田 敦史

 

参考写真

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