神経生理学

基本情報

分子生体医学講座 神経生理学

代表者 水関 健司教授

私達は記憶のメカニズムをネットワークレベルで解明したいと考えています。そのために、行動中の齧歯類の海馬とその関連領域からシリコンプローブ等を用いた大規模な電気生理学的記録を行い、数百個の神経細胞の活動とフィールド電位を同時計測し、細胞間・領域間の相互作用や細胞集団の活動がどのように記憶の基盤となるかを調べています。さらに、大規模な電気生理学的記録法と光遺伝学的手法を組み合わせて、細胞種特異的な情報処理機構を調べています。具体的には、特定の細胞種に特異的にオプシンを発現させることにより、活動を記録している細胞の種類を同定し、それらの細胞が学習中や記憶の固定に重要な睡眠中にどのように活動するのかを調べています。加えて、特定の細胞種の活動を人為的に操作しながら同時に近傍のその他の細胞の活動やネットワークの振る舞いを大規模に観察することにより、情報処理における細胞種特異的な役割を明らかにしようとしています。

Prof.Mizuseki_picuture

 

場所
学舎 15階
連絡先
TEL:06-6645-3715 MAIL:mizuseki.kenji@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

  • 以下の講義を担当します。
    医学部1回生:医学研究推進コース1
    医学部1回生:細胞生物学コース(細胞膜、膜電位と電気信号、イオンチャネルとイオンシグナリング、神経系の情報伝達)
    医学部2回生:脳機能系コース、循環器系コース(生理学)
  • 医学部2回生の機能系実習(筋電図、脳の学習機能)を担当します。
  • 医学部3回生の医学研究推進コース3(研究指導)を担当します。
  • MD-PhDコース学生の研究指導を行ないます。

臨床教育(研修医の育成)

該当はありません。

研究指導

齧歯類をモデル動物とし、電気生理学・光遺伝学・分子生物学的手法を用いて、記憶のメカニズムを研究しています。個人の興味に合わせてテーマを設定し、学部学生・大学院生・博士研究員の研究指導を行っています。

研究について

記憶に重要な海馬とその関連領域を研究対象にして、脳が情報を処理・伝達・貯蓄・検索するメカニズムをネットワークレベルで理解することを目標としています。メカニズムの候補としては神経発火のタイミングと同期性、正確な神経発火の順番、オシレーションによるセルアセンブリの集団化などが想定されています。これらの候補の検証は、複数の脳領域から多くの神経細胞の神経発火を同時に高時間分解能で観察して初めて可能になります。そこで私達は行動中・睡眠中のマウスとラットを用いて、海馬・扁桃体・大脳皮質・視床・大脳基底核などから大規模細胞外記録法を用いて同時に多くの神経細胞の発火と電場電位を記録し、神経細胞・脳領域がどのように相互作用しながら記憶や認知を生み出すのかを調べています。また光遺伝学と大規模電気生理学的記録法を組み合わせて、様々な神経細胞種・神経調節系が記憶や脳のリズム形成にどのような役割を果たしているのかを研究しています。さらに脳の情報処理が情動・ストレス・脳状態によりどのように変化するのか、睡眠中の脳活動がどのように記憶や学習の基盤となるのかを明らかにしたいと考えています。

教室を代表する業績

  • Miyawaki H, Mizuseki K (2022) De novo inter-regional coactivations of preconfigured local ensembles support memory. Nat Commun 13:1272.
  • Kitanishi T, Umaba R, Mizuseki K (2021) Robust information routing by dorsal subiculum neurons. Sci Adv, 7(11):eabf1913.
  • Iwase M, Kitanishi T, Mizuseki K (2020) Cell type, sub-region, and layer-specific speed representation in the hippocampal–entorhinal circuit. Sci Rep 10: 1407.

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

海馬体神経回路の細胞種・経路特異的な情報処理機構

多点同時記録法を用いて、課題遂行中と睡眠中のラットの海馬体の複数の領域から数百個の神経細胞の発火と電場電位を同時記録し、神経細胞間ならびに脳領域間の相互作用・機能的結合が行動の相や経験によってどのように変化するかを調べています。また、多点同時記録法と光遺伝学を組み合わせ、細胞種特異的な介在細胞を記録・攪拌して、海馬体の主要な介在細胞のネットワーク活動や情報コードに対する役割を明らかにしようとしています。さらに、電気生理学と光遺伝学的手法を組み合わせることで海馬体の主細胞を投射先により分類し、投射先特異的な情報分配の原理を解明することを目指しています。

エピソード記憶を実現する前頭前野-大脳辺縁系ループの機能構築

エピソード記憶には内側前頭前野-視床-扁桃体-海馬体のループが重要であることが示唆されていますが、細胞・ネットワークレベルのメカニズムは不明です。私達は多点同時記録法と光遺伝学の技術を使い、齧歯類の前頭前野-大脳辺縁系ループ内の細胞間・領域間の動的相互作用がどのようにエピソード記憶を実現するかを明らかにします。具体的には(1)多点同時記録法でループ内の複数の脳領域から電場電位と神経発火を同時記録し、細胞間・領域間の相互作用と探索行動・記憶の相関を調べます。(2)多点同時記録法と光遺伝学を組み合わせて、ループ内の細胞種・投射先特異的な神経細胞の活動を記録・攪拌し、ネットワーク活動・探索行動・記憶における役割を調べます。(3)睡眠中にループ内の活動を細胞種・投射先特異的に記録・攪拌し、睡眠中の記憶固定のメカニズムを細胞・ネットワークレベルで明らかにします。

光遺伝学と多点同時記録法の融合による神経修飾系の生体内での機能解析

アセチルコリン・ノルアドレナリン・ヒスタミン・ドーパミン・セロトニンなどの神経修飾系は様々な神経疾患に関わっていますが、それらがどのように神経細胞の情報コードや可塑性、ならびにオシレーションや神経活動の同期性などのネットワークダイナミクスを生体内で制御するかはよく分かっていません。私達は特定の神経修飾系の神経細胞に光感受性のオプシンを発現させ、光を使って神経修飾系の活動を操作します。それと同時に、多点同時記録法により海馬や大脳皮質の神経細胞の活動を記録し、情報コードやネットワークダイナミクスに対する神経修飾系の活動操作の影響を調べています。 

臨床への取り組み

私達が行っている記憶メカニズムの基礎研究が認知症・うつ病・心的外傷後ストレス障害などの予防やより優れた治療法の開発の基盤になることを信じて、研究を進めています。

スタッフ

教授 水関 健司
講師 宮脇 寛行
助教 松本 英之、黒木
特任助教 瀬戸川 将

 

参考写真

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