泌尿器病態学

基本情報

泌尿生殖・発達医学講座 泌尿器病態学

代表者 内田 潤次教授

当教室の歴史は、皮膚泌尿器科学教室として大阪市立医学専門学校に開設された昭和18年に遡ることとなりますが、泌尿器科学専攻の教室としては昭和38年、故 田村峯雄名誉教授により開設されました。昭和48年には故 前川正信名誉教授が第2代教授として、平成4年には岸本武利名誉教授が第3代教授として、平成15年には仲谷達也教授が第4代教授として、令和2年に内田潤次教授が第5代教授に就任しました。大学統合に伴い内田教授は令和4年4月より、大阪公立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授に着任しました。
泌尿器科診療の大きな柱は腎泌尿器悪性疾患の治療と腎不全治療です。教室開設当初より、腎泌尿器悪性疾患の治療に励みつつ、腎機能の保全および機能廃絶後の腎不全治療にも力を注ぎました。現在、当科は腎移植、透析療法(腹膜透析、血液透析)を重点的に行っている西日本を代表する腎不全の総合治療施設です。
現在、成人一般泌尿器科疾患全般に対して、最新の設備で最先端の治療を行っております。例えば癌診療では前立腺癌、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌に対して手術支援ロボットda Vinciが導入され、より安全性が高く、低侵襲な手術が実施されています。また、前立腺癌に対する永久挿入密封小線源治療を行っています。さらに、前立腺肥大症に対するレーザー治療や難治性疾患とされている間質性膀胱炎での高気圧酸素療法なども実施しています。腎不全治療に関しても積極的に取り組んでいます。腎不全の根治的治療ともいえる腎移植に関しては献腎移植、生体腎移植ともに施行しております。ハイリスクであるABO血液型不適合移植や高齢者への腎移植、従来禁忌であった既存抗体陽性腎移植も積極的に取り組んでいます。現在まで当科では腎移植件数400例以上の豊富な経験を有しており、2001年以降、生体腎移植15年生着率89%を達成しております。一方で透析療法についても透析患者の生命線ともいえるバスキュラーアクセスの作製や維持管理、腹膜透析チューブ留置術、さらには長期透析合併症である二次性副甲状腺機能亢進症手術や透析アミロイドーシスに対しての手術管症候群、ばね指に対しての手術治療なども行っています。

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場所
学舎 8階
連絡先
TEL:06-6645-3857 MAIL:gr-med-urology@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

  • 泌尿器科は尿路系、男性生殖器系、内分泌系臓器の疾患を取り扱う科です。学部教育では当科の対象となる臓器の解剖、機能などに関する基本的な知識を習得し、それぞれの臓器における疾患の病理、病態を把握してもらいます。
  • その後、実習にてエビデンスに基づいた疾患の診断、治療を実践的に体験できるような指導を行います。特に、腎不全に関しては保存期から透析療法、腎移植まで包括的に腎不全の診断学、治療学が習得できるよう対応しています。

 

臨床教育(研修医の育成)

  • 卒後の臨床研修は2年間の初期研修とその後の後期研修及び専門医の資格が与えられる6年目前後、指導医の資格が与えられる10年目前後に区切って考えるとわかりやすいと思います。基本的に臨床研修は卒後10年前後で医師として一定のレベルに到達させることにあります。全身管理、救急救命措置といった医師として必須な一般的な技術に加え、泌尿器科としての専門性の高い診断、手術、術後管理の技術の取得を目指します。
  • また関連学会に参加し、最新の知見を習得し、更に学会発表や症例報告などの学術活動も要求されます。国際的な感覚を養うため、国際学会にも積極的に参加、発表できるような体制を構築しております。できるだけ均等でかつ個人のニーズに合ったフレキシブルな臨床修練を目標としております。

研究指導

  • 当教室では基礎研究指導、臨床研究指導を積極的に行っています。様々な臨床研究を行い、当教室のみならず基礎医学の教室と連携しながら研究を進めており、これまでに薬理学教室、薬効安全性学教室、病理学教室や解剖学教室などの先生方にもご協力いただき、多くの先生方が医学博士を取得してきました。皆様の興味・希望に沿った研究をしていただくことも可能です。
  • さらに、海外留学を希望される場合は、これまでにアメリカ (マサチューセッツ工科大学、テキサス州立大学、シラキュース大学) やカナダ (ブリティッシュコロンビアキャンサーエージェンシー) などに留学派遣してきたつながりを生かして全面的にサポートさせていただきます。

研究について

当科では泌尿器疾患、泌尿器悪性腫瘍及び腎不全、腎移植に関する基礎研究、臨床研究を行っています。泌尿器疾患に関しては難病である間質性膀胱炎の基礎研究、臨床研究が、悪性腫瘍に関しては膀胱癌、前立腺癌、腎癌に関する基礎研究、前立腺癌の臨床研究が行なわれており、世界レベルの成果を上げることを目標としております。また、腎不全、腎移植領域でも基礎研究、臨床研究が行われ、特に臨床研究では最終的にはエビデンスの構築を目指した疫学研究、介入研究が行われています。様々な研究成果を国際学会、英文論文にて世界に発信することに努めています。大学病院として医学界に貢献できるような研究を心がけております。

教室を代表する業績

  1. Matsue T, Gi M, Shiota M, Tachibana H, Suzuki S, Fujioka M, Kakehashi A,
    Yamamoto T, Kato M, Uchida J, Wanibuchi H. The carbonic anhydrase inhibitor
    acetazolamide inhibits urinary bladder cancers via suppression of β-catenin
    signaling. Cancer Sci. 2022 Jun 20. doi: 10.1111/cas.15467. Epub ahead of print.
    PMID: 35723039.
  2. Yamamoto S, Kato M, Takeyama Y, Yukimatsu N, Hirayama Y, Otoshi T, Yamasaki
    T, Kuratsukuri K, Uchida J. A retrospective study on optimal number of cycles of
    the first-line platinum-based chemotherapy for metastatic urothelial carcinoma.
    Urol Oncol. 2022 May;40(5):194.e7-194.e14. doi: 10.1016/j.urolonc.2021.10.013.
    Epub 2021 Nov 29. PMID: 34852939.1: Uchida J, Kosoku A, Naganuma T, Tanaka T, Nakatani T. Latest insights on ABO-
    incompatible living-donor renal transplantation. Int J Urol. 2020
    Jan;27(1):30-38. 
  3.  Naganuma T, Kabata D, Takemoto Y, Uchida J, Shintani A. Antiplatelet therapy
    and future intracerebral hemorrhage in hemodialysis patients with cerebral
    microbleeds. J Clin Neurosci. 2021 Aug;90:155-160.
  4. Naganuma T, Kabata D, Takemoto Y, Uchida J, Shintani A. Impact of stroke
    history on the presence of cerebral microbleeds in hemodialysis patients. BMC
    Neurol. 2021 Aug 11;21(1):311. 
  5. Kato M, Kobayashi T, Matsui Y, Ito K, Hikami K, Yamada T, Ogawa K, Nakamura
    K, Sassa N, Yokomizo A, Abe T, Tsuchihashi K, Tatarano S, Inokuchi J, Tomida R,
    Fujiwara M, Takahashi A, Matsumoto K, Shimizu K, Araki H, Kurahashi R, Ozaki Y,
    Tashiro Y, Uegaki M, Kojima T, Uchida J, Ogawa O, Nishiyama H, Kitamura H; Japan
    Urological Oncology Group. Impact of the objective response to and number of
    cycles of platinum-based first-line chemotherapy for metastatic urothelial
    carcinoma on overall survival of patients treated with pembrolizumab. Int J
    Urol. 2021 Dec;28(12):1261-1267. 
  6. Otoshi T, Yamasaki T, Hirayama Y, Uchida J. Pilot experience of simultaneous
    robotic-assisted partial nephrectomy for bilateral renal tumors-single center
    analysis. Asian J Endosc Surg. 2021 Jan;14(1):57-62. 
  7. Iguchi K, Tanaka T, Minami A, Kuratsukuri K, Uchida J, Nakatani T.
    Characteristics of urodynamic study parameters associated with intermediate-term
    continence after robot-assisted radical prostatectomy in elderly patients. Aging
    Male. 2020 Dec;23(5):1039-1045.
  8. Kabei K, Tateishi Y, Shiota M, Osada-Oka M, Nishide S, Uchida J, Nakatani T,
    Matsunaga S, Yamaguchi T, Tomita S, Miura K. Effects of orally active hypoxia
    inducible factor alpha prolyl hydroxylase inhibitor, FG4592 on renal fibrogenic
    potential in mouse unilateral ureteral obstruction model. J Pharmacol Sci. 2020
    Mar;142(3):93-100.
  9. Iwai T, Uchida J, Kosoku A, Kabei K, Nishide S, Naganuma T, Maeda K,
    Yoshikawa Y, Kumada N, Takemoto Y, Nakatani T. Splenectomy for ABO-Incompatible
    Kidney Transplantation and Very Late-Onset Cytomegalovirus Disease. Urol Int.
    2020;104(7-8):651-656. 
  10. Uchida J, Kosoku A, Kabei K, Nishide S, Shimada H, Iwai T, Kuwabara N,
    Naganuma T, Maeda K, Yoshikawa Y, Kumada N, Takemoto Y, Nakatani T. Pilot
    Experience with ABO-Incompatible Kidney Transplantation as a Second Transplant.
    Urol Int. 2019;102(4):441-448. 
  11. Naganuma T, Takemoto Y, Uchida J, Nakatani T, Kabata D, Shintani A.
    Hypercalcemia Is a Risk Factor for the Progression of Aortic Calcification in
    Kidney Transplant Recipients. Kidney Blood Press Res. 2019;44(4):823-834. doi:
    10.1159/000501740. Epub 2019 Jul 2. PMID: 31266041.

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

泌尿器悪性腫瘍に関する基礎研究

泌尿器科癌に関わる基礎的研究を継続して行ってきており、これまでに日本癌学会や日本泌尿器科学会、アメリカ泌尿器科学会などで成果発表と論文報告をしてきました。膀胱癌においては、膀胱癌組織のプロテオミクスから癌の浸潤に関わる分子としてDDX39を同定し、癌患者の予後予測因子となりうることを発見しました。またsteroid sulfataseが膀胱癌組織の筋層浸潤部に高発現することから、癌の進行・転移に関わることを発見し、現在研究を進めています。また前立腺癌においては、アンドロゲン受容体のN末端に作用するEPIとmTOR阻害剤の併用療法がエンザルタミド耐性の前立腺癌に対して著効することを報告しています。

腎移植に関する研究

基礎研究では、腎移植に用いる薬剤による薬物性腎障害の解明及び慢性移植腎症で出現する病態である腎糸球体及び尿細管間質病変の発症進展メカニズムについて検討しています。現在、薬効安全性学と連携し、樹状細胞及びマクロファージ等の免疫担当細胞の関与について検討しております。腎移植に関する臨床研究ではABO血液型不適合腎移植、既存抗体陽性腎移植に関する脱感作療法の確立を目指した研究を行っています。また、腎移植長期生着を目的として移植後合併症への対応として移植後新規発症移植後糖尿病に関する機序の解明、移植後メタボリックシンドロームの臨床的意義と対策、腎移植後microalbuminuriaの臨床的意義、腎移植後包括的血圧管理(家庭血圧を用いた管理)の意義の解明など多岐にわたる臨床研究を行っています。成果は適宜、国内学会、国際学会、論文にて公表しています。また、人工腎グループとも連携し、共同研究しております。

人工腎グループの研究

以下に人工腎グループで現在進行中の代表的な臨床研究を示します。
①腎後性急性腎障害に関する疫学研究
2006年12月1日から大阪市立大学泌尿器科で診断された急性腎後性腎不全の患者の後ろ向きコホート研究です。
②腎移植レシピエントにおける血管石灰化の検討
2010年4月1日から2013年3月31日までに大阪市立大泌尿器科において、腹部のスクリーニングCTを受けた患者さんが対象の前向き観察研究です。
③腎移植後CMV感染に対する顆粒球吸着療法の臨床効果の検討
2012年1月1日から大阪市立大学泌尿器科にてサイトメガロウイルス感染を起こした腎移植レシピエントにたいする顆粒球吸着療法による治療の臨床研究です。
④透析患者における無症候性脳血管障害の検討
2006年1月1日から2009年12月31日までに、大阪市立大学泌尿器科を受診され脳MRIを撮像した透析患者さんを対象とした前向き観察研究です。

臨床への取り組み

①低侵襲手術
低侵襲治療として泌尿器科は唯一ロボット支援手術の保険収載が認められている診療科です。2016年には前立腺全摘除術に続き腎部分切除術が新たに保険適応になる見込みです。当院でも2016年以降の保険収載に先立ち自由診療でロボット支援下腎部分切除術を導入しています。今後他領域の手術でもロボット支援手術を積極的に導入していく予定です。現在、ステージT1の腎癌に対し腹腔鏡下腎部分切除術を積極的に行っています。腎部分切除術においては腫瘍切除と機能温存の両立が重要と考えられます。腫瘍切除におけるマージンの確認、切除後の腎血流の確認が必要であり、近年近赤外線蛍光内視鏡システムの登場によりこれらがリアルタイムに確認可能あり、当院でも臨床研究として応用し手術成績の向上を目指しています。

②ハイリスク腎移植
免疫学的にハイリスクと考えられるABO血液型不適合腎移植で抗血液型抗体価が高値の症例、従来腎移植禁忌とされていた抗ドナー抗体陽性症例に対してRituximab、血漿交換、脾摘などを用いて脱感作を行い、腎移植を成功させています。ハイリスク腎移植に対する免疫抑制療法の確立を目指しています。また、透析療法を経ない先行的腎移植も積極的に取り組んでいます。

スタッフ

教授 内田 潤次
准教授 武本 佳昭、鞍作 克之
講師

長沼 俊秀、岩井 友明、山﨑 健史、

町田 裕一、加藤 実

助教 大年 太陽
病院講師 壁井 和也、行松 直、井口 圭子、松江 泰佑

 

参考写真

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