ウイルス学

基本情報

都市医学講座 ウイルス学

代表者 城戸 康年教授

ウイルス学分野の源は、医学部の様々なウイルス疾患に対応できる教育研究体制の整備のため、1992年10月に金沢大学医学部微生物学教室より小倉壽助教授が医動物学講座教授に招請されたことに遡ります。
1998年4月には老年医学研究部門ウイルス学分野として独立し、2000年4月の大学院再編に伴い、医学研究科・都市医学大講座・神経ウイルス感染学分野へと発展してきました。2008年4月より医学研究科・都市医学大講座・ウイルス学分野に名称を変更して現在に至ります。
当研究室は平成10年春に完成した18階建て学舎の17階の北側に位置しており、窓からの眺めは、遠くは大阪湾、淡路島から箕面の山々を、近くは通天閣、天王寺公園などを一望することができ、これらの夜景も一見の価値があります。
グローバル化に伴い、日本においても常に、新型インフルエンザやエボラウイルス病など、死亡率の高い新たなウイルス感染症の脅威にさらされています。ウイルス感染症を正しく理解して的確に対処できる医師や研究者を育てることがウイルス学分野の役割と考えています。

グループ 9367_1

 

場所
学舎 17階
連絡先
TEL:06-6645-3911 
HP

 

教育方針

学部教育

  • ウイルス学の基礎的・不可欠な知識を習得できることを前提に、常に先進の情報を取り入れた講義を行い、学力向上と問題意識の喚起を促すよう努めます。
  • ウイルス感染症はたくさんあり、グローバルな時代になってさらに重要な新興ウイルス感染症も出現して増加するため記憶すべき語彙・知識もたいへん多いのですが、理論的なアプローチ、わかりやすい視覚的なアプローチを駆使して、より理解しやすい講義を心がけています。肉眼では見えない、通常の顕微鏡でも見えないウイルスをイメージとして想起し、的確な診断・理論に基づく治療、そして予防ができる医師になれるように教育していきます。

臨床教育(研修医の育成)

該当はありません。

研究指導

個々の学生の個性を尊重しながら資質を引き出してさらに向上させるよう、きめ細かな指導を行う方針で指導します。ウイルス学の独自のテーマの他、発達小児医学等と連携して、臨床現場で問題となるウイルス疾患の診断、治療に向けたウイルス感染症の研究を行うことも歓迎します。

研究について

概要

  • 私たちは、麻疹ウイルスが脳内に持続感染した結果生ずる小児の遅発性ウイルス感染症のひとつである亜急性硬化性全脳炎 (Subacute Sclerosing Panencephalitis: SSPE)の発症機構をメインに研究しています。
  • 特に、麻疹ウイルスがどのようにして強力な神経病原性を示すウイルスに変貌するのか、変異の出現のメカニズム、神経病原性を担っている変異はどれか、という点について、遺伝子解析を基に、組換えウイルスを作製し、動物実験で病原性の有無を検討することで解明しようとしています。
  • これらの結果を基に、今後SSPEの新規治療法の開発を行い、さらにこれを類似のウイルス感染症に応用したいと考えています。

教室を代表する業績

業績名1

  • SSPEの発症機構に関し、患者の脳から分離されたウイルスを基に、変異の出現機構、ウイルスの増殖における変異の影響、神経病原性をになう変異を明らかにしてきました。特に、F蛋白の変異が神経病原性獲得に重要であることを世界で初めて明らかにしました。
  • 参考論文:The F gene of the Osaka-2 strain of measles virus derived from a case of subacute sclerosing panencephalitis is a major determinant of neurovirulence. Ayata M, Takeuchi K, Takeda M, Ohgimoto S, Kato S, Sharma LB, Tanaka M, Kuwamura M, Ishida H, Ogura H. J. Virol. 2010; 83(22):11645-11654.

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

麻疹ウイルスの神経病原性に関する研究

概要

  1. SSPE患者の脳から、これまで5株の麻疹ウイルスを分離し、分子生物学的研究を行ってきました。その結果、患者の乳幼児期の初感染麻疹ウイルスがSSPEの原因であること、M蛋白欠損のメカニズム、F遺伝子の変異が細胞融合能の増強に関わっていること等を明らかにしました。
  2. SSPE由来の麻疹ウイルスに生じた特有の高度偏在変異がヌードマウスへの麻疹ウイルスに感染した脳内で実際に生じることを明らかにしました。
  3. 組換え麻疹ウイルスの作製技術を駆使して、F遺伝子のわずか1?2か所のアミノ酸置換が神経病原性に寄与することを明らかにしました。

主な論文

  1. The F gene of the Osaka-2 strain of measles virus derived from a case of subacute sclerosing panencephalitis is a major determinant of neurovirulence. Ayata M, Takeuchi K, Takeda M, Ohgimoto S, Kato S, Sharma LB, Tanaka M, Kuwamura M, Ishida H, Ogura H. J. Virol. 2010; 83(22):11645-11654.
  2.  Amino acid substitutions in the heptad repeat A and C regions of the F protein responsible for neurovirulence of measles virus Osaka-1 strain from a patient with subacute sclerosing panencephalitis. Ayata, M, Tanaka M, Kameoka, K, Kuwamura M, Takeuchi, K, Takeda, M, Kanou, K, Ogura, H. Virology 2016; 487:141-149.
  3. Biased hypermutation occurred frequently in a gene inserted into the IC323 recombinant measles virus during its persistence in the brains of nude mice. Otani, S, Ayata, M, Takeuchi, K, Takeda, M, Shintaku, H, and Ogura, H. Virology 2014; 462-463:91-97.
  4.  Effect of the alterations in the fusion protein of measles virus isolated from brains of patients with subacute sclerosing panencephalitis on syncytium formation. Ayata M, Shingai M, Ning X, Matsumoto M, Seya T, Otani S, Seto T, Ohgimoto S, Ogura H. Virus Res. 2007;130(1-2):260-268.

スタッフ

教授 城戸 康年
講師 加来 奈津子
 

参考写真

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