院生談話会

院生談話会(2025年度)

院生談話会(言わば,院生の院生による院生のための談話会)を開催することになりました。
通常の談話会はレベルが高く,また,先生がいると萎縮して自由に質問ができないのではないかと思い, 出席者は院生のみにしました。
これを通して,院生同士の分野を越えた交流を深めていきたいと思います。

院生談話会運営委員:
D3 溝口 史華(sw23882u[AT]st.omu.ac.jp)
D2 佐藤 和暉(sf22817a[AT]st.omu.ac.jp)

院生談話会 年度別一覧

日時 2025年12月15日(月) 16:00~16:20
講演者(所属) 辻本 優介(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル BJMM 法とその改良
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F215)
アブストラクト RSA 暗号や ElGamal 暗号をはじめとする既存の暗号方式は素因数分解や離散対数問題の困難性を安全性の根拠としているが、それらの問題を多項式時間で解くことができる量子アルゴリズムが Shor によって発見されている。ゆえに将来的には量子計算機によってそれらの暗号が解読されてしまう可能性があり、量子計算機の実用化後も安全に使用できる新しい暗号 (耐量子計算機暗号) の研究が進められている。その暗号方式の一つに符号ベース暗号というものがあり、シンドローム復号問題 (SDP) の困難性を安全性の根拠としている。本講演ではこのシンドローム復号問題を解くアルゴリズムとして知られる BJMM 法および我々が提案する BJMM 法の改良について紹介する。
日時 2025年12月15日(月) 16:25~16:45
講演者(所属) 清野 龍(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル 高次元における単安定反応拡散方程式の解の漸近挙動
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F215)
アブストラクト 反応拡散方程式は溶液中での化学反応などの反応と拡散の双方が伴うような現象を表す方程式である。こうした方程式においては、反応と拡散が合わさることにより解が時間とともに波のように伝わっていく現象がしばしば現れる。この種の伝播現象は一定の速度で形を保って進む進行波解と呼ばれる特殊な解によって表されることが知られている。伝播のより詳細な様子を理解するには、波面に対応する解の等高面を調べることが重要となるが、この等高面の挙動は反応項の性質に影響を受ける。本講演では、高次元の場合で反応項が単安定型の場合の解の等高面の漸近挙動について得られた結果を双安定型の場合の先行研究と比較しながら紹介する。
日時 2025年12月15日(月) 16:55~17:15
講演者(所属) 大柿 温人(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル 2次元ナヴィエ-ストークス方程式の不変測度の存在
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F215)
アブストラクト 流体の運動を記述するナヴィエ-ストークス方程式は, 物理学, 工学, 気象学など多岐にわたる分野で中心的な役割を担っている. 実際の流体現象では, 微小な不規則な摂動や外部環境からのランダムな影響が常に存在する. これらの不確実性を数学的に取り組むために確率論的な観点を取り入れた確率論的ナヴィエ-ストークス方程式の研究が盛んにおこなわれている. そこで, 本講演では有界領域における確率論的2次元ナヴィエ-ストークス方程式の時間大域的解の分布が時間に依らず初期値の分布に一致する,不変測度という概念とその存在証明を紹介する.
日時 2025年12月15日(月) 17:20~17:35
講演者(所属) 山南 貴世始(大阪公立大学大学院理学研究科M1)
タイトル 非線形Schrödinger方程式の解のlifespanについて
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F215)
アブストラクト 「1次元Euclid空間上の非線形Schrödinger方程式の解の長時間挙動」について発表する.方程式の解が一意的に存在する時間の上限を解のlifespanであるという.特にlifespanが$+\infty$となる場合,解は時間大域的に存在することを意味する.本講演では,このlifespanを通じて,これまで非線形項ごとになされてきた,解の長時間挙動に関する先行研究の結果を統一的に見られる事を紹介する.そして,今後の展望について紹介したい.
日時 2025年12月15日(月) 17:40~17:55
講演者(所属) 岩崎 浩也(大阪公立大学大学院理学研究科M1)
タイトル 可解リー群上の左不変ローレンツ・リッチソリトン
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F215)
アブストラクト 多様体上の性質のよい計量の存在問題は重要である. そこで, 我々は多様体に群構造を加えたリー群を対象とし, 計量を左不変なものに限定して議論する. 特に, 単連結可解リー群における代数的リッチソリトンの存在・非存在は活発に研究されている. 左不変リーマン計量の場合, 6次元までの単連結可解リー群で代数的リッチソリトンを許容するものの分類がなされており, 許容するものとしないものの両方が存在する. 一方, 左不変ローレンツ計量の場合には, 4次元までではすべて代数的リッチソリトンを許容することが知られている. 我々は, 5次元以上の場合に対して, 左不変ローレンツ計量で代数的リッチソリトンの存在性を明らかにすることを目的とした研究を行う. 本講演では, この問題の概略と具体例を紹介する.
日時 2025年11月19日(水) 17:00~18:00
講演者(所属) 豊島 啓(東北大学理学研究科数学専攻D1)
タイトル 双曲空間上のHénon型方程式に対する球対称解の層構造
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F415)
アブストラクト 本講演では, 双曲空間上のHénon型方程式の球対称解を扱う. ユークリッド空間上のHénon方程式やLane-Emden方程式といった楕円型偏微分方程式は, 天文物理学における自然現象を記述する方程式として知られている. 中でも球対称解と呼ばれる空間の動径方向のみに依存する解は, 上記の方程式を解析するうえで重要な役割をもつため, 研究が盛んに行われている. 近年では, 同様の楕円型方程式の非ユークリッド空間上における解析が進んでいる. 非ユークリッド空間の一つである双曲空間に注目すると, 双曲空間上の方程式の球対称解はユークリッド空間上の同様の方程式の球対称解とは異なった性質をもつことがHasegawa (2015, 2019)などによって示されている. 本講演では, 双曲空間上の楕円型方程式の球対称解を扱う上で必要となる双曲空間の特徴を述べたのち, 層構造と呼ばれる楕円型方程式の球対称解の性質について, 双曲空間上のHénon型方程式に対して得られた結果を紹介する. 本講演は猪奥 倫左 氏(東北大学)との共同研究に基づく.
日時 2025年7月14日(月) 16:00~16:20
講演者(所属) 松澤 晴子(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル 幾何学的McKay対応
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F415)
アブストラクト $\it{SL}(2, \mathbb{C})$の有限部分群$G$は二項正多面体群あるいは巡回群のいずれかと同型であり,その既約表現と自然表現とのテンソル積を既約分解すると,単純Lie環の分類に現れるディンキン図形が出てくる.これは,1979年にJ. McKayによって発見されMcKay対応と呼ばれており,現在に至るまで様々な観点から研究され一般化されている現象である.表現論と代数幾何学の観点からは,P.du Val, G. Gonzalez-Sprinberg, J. L. Vedierらによって,$\it{SL}(2, \mathbb{C})$の有限部分群$G$の既約表現と軌道空間$C^2/G$の最小特異点解消の例外因子との対応関係が明らかにされ,幾何学的McKay対応と呼ばれている.本講演では,この幾何学的McKay対応について紹介したい.
講演者(所属) 張 揚陽(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル On examples of nef big and non-semipositive line bundles
アブストラクト Kodaira's embedding theorem states that if a compact Kähler manifold $X$ admits a positive line bundle $L$, then $X$ can be embedded into projective space. In other words, $L$ is ample. From this perspective, the algebraic-geometric properties of being nef and big are considered generalizations of ampleness. Therefore, in version of Kodaira's theorem, it is natural to expect that such line bundles might also be semipositive. Based on this observation, I have conducted research starting from the question: Does there exist a line bundle that is nef and big but not semipositive? In the case of dimension one, it is known that every nef and big line bundle is positive. However, in what might be seen as a “surprising” result, Dano Kim constructed an explicit example in dimension three or higher of a line bundle that is nef and big but not semipositive. This naturally shifts attention to the two-dimensional case. Filip and Tosatti proposed the following conjecture: The line bundle in Grauert's example is expected to be nef and big but not semipositive. Based on this conjecture, Koike proved that the line bundle in a modified version of Grauert's example is indeed nef and big but not semipositive. The goal of this talk is to prove that Filip and Tosatti's conjecture is true by analyzing the structure of the original Grauert example and using the tool of the first obstruction class.
講演者(所属) 増野 凌平(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル 非対角成分に時間遅れをもつ差分方程式の漸近安定性
アブストラクト 差分方程式の零解が漸近安定であるとは、すべての解が$0$に収束することをいう。零解の漸近安定性における時間遅れの影響が完全に解明されているのは、線形方程式でさえ、あるクラスに限られている。本研究では、非対角成分に時間遅れをもつ線形差分方程式を考察し、零解が漸近安定であるための具体的な必要十分条件を、係数と時間遅れを用いて導出したので、報告する。
講演者(所属) 北山 陽菜(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル 冪零リー代数上の代数的リッチソリトンとサイクルをもつクイバー
アブストラクト クイバーとは, ループと多重辺を許す点と矢印で表された有向グラフである. 先行研究では, クイバーから冪零リー代数を作る方法が確立され, またサイクルを持たないクイバーから得られる冪零リー代数は常に代数的リッチソリトンを持つことが示された. 本講演ではまず, 先行研究の構成方法を拡張し, サイクルを持つクイバーから冪零リー代数を構成する方法を紹介する. また, 得られた冪零リー代数に対応する単連結リー群が, 左不変リッチソリトンリーマン計量を許容するための条件について, 得られた結果を紹介する.
講演者(所属) 山下 裕理(大阪公立大学大学院理学研究科M2)
タイトル リー群上の左不変擬リーマン計量の幾何と閉軌道空間
アブストラクト 幾何学において,特別な計量の分類は重要な課題である. 本研究では,リー群上の特別な左不変擬リーマン計量を考える. 与えられたリー群に対して,その上の左不変擬リーマン計量全体の空間には, スカラー倍と自己同型による自然な群作用がある. この群作用による軌道空間をモジュライ空間とよぶ. しかし一般的に, モジュライ空間はハウスドルフではなく複雑である. 我々は,この軌道空間の中でも特に,閉軌道全体のなす空間である閉軌道空間に焦点をあてて研究を行っている. 本講演では, 「特別な計量の存在・非存在を調べるには閉軌道空間上の計量のみを見れば十分である」という結果を紹介する. また,いくつかのリー群に対して, 閉軌道空間を決定した結果について述べる. この結果は,閉軌道空間の特別な点と特別な計量の関係を示唆する.
日時 2025年5月20日(火) 16:30~18:00
講演者(所属) 佐藤 一慶(東京都立大学大学院理学研究科数理科学専攻D1)
タイトル 双曲群入門
場所 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F415)
アブストラクト 有限生成群は代数学、幾何学にまたがって現れる基本的な対象であるが、その全体像や構造に関しては未解明な点も多い。しかし近年のGromovによって、「負に曲がった距離空間」であるGromov双曲空間や、これに作用する群である双曲群の概念が導入されたことで、幾何学的手法を用いた有限生成群の解析が大きく進展した。特に双曲群は有限生成群の中でも重要なクラスとして位置付けられ、様々な性質が研究されている。本講演ではまず、Gromov双曲空間の古典的なモデルである双曲平面とそれに作用する群の性質を紹介する。さらに、Gromov双曲空間および双曲群の定義とその概要について解説する。また、時間が許せば、Gromov双曲空間や双曲群を拡張した概念である、非正曲率空間や非正曲率群に関する最近の研究動向についても紹介したい。