院生談話会
院生談話会(2025年度)
院生談話会(言わば,院生の院生による院生のための談話会)を開催することになりました。
通常の談話会はレベルが高く,また,先生がいると萎縮して自由に質問ができないのではないかと思い, 出席者は院生のみにしました。
これを通して,院生同士の分野を越えた交流を深めていきたいと思います。
院生談話会運営委員:
D3 溝口 史華(sw23882u[AT]st.omu.ac.jp)
D2 佐藤 和暉(sf22817a[AT]st.omu.ac.jp)
日時 | 2025年7月14日(月) 16:00~16:20 講演1 |
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講演者(所属) | 松澤 晴子 |
タイトル | 幾何学的McKay対応 |
場所 | 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F415) |
アブストラクト | $\it{SL}(2, \mathbb{C})$の有限部分群$G$は二項正多面体群あるいは巡回群のいずれかと同型であり,その既約表現と自然表現とのテンソル積を既約分解すると,単純Lie環の分類に現れるディンキン図形が出てくる.これは,1979年にJ. McKayによって発見されMcKay対応と呼ばれており,現在に至るまで様々な観点から研究され一般化されている現象である.表現論と代数幾何学の観点からは,P.du Val, G. Gonzalez-Sprinberg, J. L. Vedierらによって,$\it{SL}(2, \mathbb{C})$の有限部分群$G$の既約表現と軌道空間$C^2/G$の最小特異点解消の例外因子との対応関係が明らかにされ,幾何学的McKay対応と呼ばれている.本講演では,この幾何学的McKay対応について紹介したい.の有限部分群$G$は二項正多面体群あるいは巡回群のいずれかと同型であり,その既約表現と自然表現とのテンソル積を既約分解すると,単純Lie環の分類に現れるディンキン図形が出てくる.これは,1979年にJ. McKayによって発見されMcKay対応と呼ばれており,現在に至るまで様々な観点から研究され一般化されている現象である.表現論と代数幾何学の観点からは,P.du Val, G. Gonzalez-Sprinberg, J. L. Vedierらによって,$\it{SL}(2, \mathbb{C})$の有限部分群$G$の既約表現と軌道空間$C^2/G$の最小特異点解消の例外因子との対応関係が明らかにされ,幾何学的McKay対応と呼ばれている.本講演では,この幾何学的McKay対応について紹介したい. | 日時 | 2025年7月14日(月) 16:20~16:40 講演2 |
講演者(所属) | 張 揚陽 |
タイトル | On examples of nef big and non-semipositive line bundles |
アブストラクト | Kodaira's embedding theorem states that if a compact Kähler manifold $X$ admits a positive line bundle $L$, then $X$ can be embedded into projective space. In other words, $L$ is ample. From this perspective, the algebraic-geometric properties of being nef and big are considered generalizations of ampleness. Therefore, in version of Kodaira's theorem, it is natural to expect that such line bundles might also be semipositive. Based on this observation, I have conducted research starting from the question: Does there exist a line bundle that is nef and big but not semipositive? In the case of dimension one, it is known that every nef and big line bundle is positive. However, in what might be seen as a “surprising” result, Dano Kim constructed an explicit example in dimension three or higher of a line bundle that is nef and big but not semipositive. This naturally shifts attention to the two-dimensional case. Filip and Tosatti proposed the following conjecture: The line bundle in Grauert's example is expected to be nef and big but not semipositive. Based on this conjecture, Koike proved that the line bundle in a modified version of Grauert's example is indeed nef and big but not semipositive. The goal of this talk is to prove that Filip and Tosatti's conjecture is true by analyzing the structure of the original Grauert example and using the tool of the first obstruction class. | 日時 | 2025年7月14日(月) 16:40~17:00 講演3 |
講演者(所属) | 増野 凌平 |
タイトル | 非対角成分に時間遅れをもつ差分方程式の漸近安定性 |
アブストラクト | 差分方程式の零解が漸近安定であるとは、すべての解が$0$に収束することをいう。零解の漸近安定性における時間遅れの影響が完全に解明されているのは、線形方程式でさえ、あるクラスに限られている。本研究では、非対角成分に時間遅れをもつ線形差分方程式を考察し、零解が漸近安定であるための具体的な必要十分条件を、係数と時間遅れを用いて導出したので、報告する。 | 日時 | 2025年7月14日(月) 17:20~17:40 講演4 |
講演者(所属) | 北山 陽菜 |
タイトル | 冪零リー代数上の代数的リッチソリトンとサイクルをもつクイバー |
アブストラクト | クイバーとは, ループと多重辺を許す点と矢印で表された有向グラフである. 先行研究では, クイバーから冪零リー代数を作る方法が確立され, またサイクルを持たないクイバーから得られる冪零リー代数は常に代数的リッチソリトンを持つことが示された. 本講演ではまず, 先行研究の構成方法を拡張し, サイクルを持つクイバーから冪零リー代数を構成する方法を紹介する. また, 得られた冪零リー代数に対応する単連結リー群が, 左不変リッチソリトンリーマン計量を許容するための条件について, 得られた結果を紹介する. | 日時 | 2025年7月14日(月) 17:40~18:00 講演5 |
講演者(所属) | 山下 裕理 |
タイトル | リー群上の左不変擬リーマン計量の幾何と閉軌道空間 |
アブストラクト | 幾何学において,特別な計量の分類は重要な課題である. 本研究では,リー群上の特別な左不変擬リーマン計量を考える. 与えられたリー群に対して,その上の左不変擬リーマン計量全体の空間には, スカラー倍と自己同型による自然な群作用がある. この群作用による軌道空間をモジュライ空間とよぶ. しかし一般的に, モジュライ空間はハウスドルフではなく複雑である. 我々は,この軌道空間の中でも特に,閉軌道全体のなす空間である閉軌道空間に焦点をあてて研究を行っている. 本講演では, 「特別な計量の存在・非存在を調べるには閉軌道空間上の計量のみを見れば十分である」という結果を紹介する. また,いくつかのリー群に対して, 閉軌道空間を決定した結果について述べる. この結果は,閉軌道空間の特別な点と特別な計量の関係を示唆する. |
日時 | 2025年5月20日(火) 16:30~18:00 |
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講演者(所属) | 佐藤 一慶(東京都立大学大学院理学研究科数理科学専攻D1) |
タイトル | 双曲群入門 |
場所 | 大阪公立大学(杉本キャンパス)理学部F棟中講究室 (F415) |
アブストラクト | 有限生成群は代数学、幾何学にまたがって現れる基本的な対象であるが、その全体像や構造に関しては未解明な点も多い。しかし近年のGromovによって、「負に曲がった距離空間」であるGromov双曲空間や、これに作用する群である双曲群の概念が導入されたことで、幾何学的手法を用いた有限生成群の解析が大きく進展した。特に双曲群は有限生成群の中でも重要なクラスとして位置付けられ、様々な性質が研究されている。本講演ではまず、Gromov双曲空間の古典的なモデルである双曲平面とそれに作用する群の性質を紹介する。さらに、Gromov双曲空間および双曲群の定義とその概要について解説する。また、時間が許せば、Gromov双曲空間や双曲群を拡張した概念である、非正曲率空間や非正曲率群に関する最近の研究動向についても紹介したい。 |