大学院 Graduate School
概要
獣医学は動物の医療を根幹とする総合的な動物科学であり、ウイルス、細菌や寄生虫といった病原体からヒトに至るまでさまざまな生命体を対象とし、これらの構造と機能を分子、細胞、組織、個体レベルで探求する生命科学の基盤としての側面もあります。
現代社会はさまざまなストレスにあふれ、家族の一員である伴侶動物に対する医療においても高度化が求められています。
さらに、国際交流の活性化に伴う人や動物の移動と物流の増大に起因する人獣共通感染症の脅威、食用動物の多頭飼育による動物由来感染症の増大、バイオテクノロジーを用いた畜産物の生産性の効率化や新薬の開発、またそれら食品・医薬品の安全性評価など地域社会の福祉や安全性にかかわる多様な問題が顕在化しています。
このような背景から、人、動物および環境の健康と健全は3者が相まってはじめて成立するというOne Healthの概念が提唱され、獣医学への期待は益々高まっています。
本研究科では、これらのさまざまな問題を解決するため総合的な先端動物科学分野を担い、高度・先端獣医療、動物の構造と機能の解明、食の安全や感染症予防、そして高度・先端獣医療に貢献する人材を養成します。さらに、医獣連携や獣工連携など異分野との連携を積極的に行ない、様々な角度から獣医学領域の課題解決に取り組むことができる総合知の活用を推進し、世界に向けて革新的な研究成果の発信を行なっていきます。
学位
博士課程:博士(獣医学)
標準修業年限
博士課程:4年
カリキュラムの特徴
獣医学専攻では、全ての学生が、生命倫理、動物倫理および研究倫理の重要性、論理的思考力、英語によるプレゼンテーション能力および学位論文作成に必要な高度な研究能力を習得するための共通科目を開設します。さらに、専門教育を行うために、獣医学専攻の教育課程には動物構造機能学コース、獣医環境科学コース、獣医臨床科学コースの3つのコースを配置します。
動物構造機能学コース
医薬品、化粧品、食品メーカーなどにおける専門職あるいは教育・研究職をめざす者に対し、動物の生命維持ならびに疾病発症に関わる形態的・機能的仕組みに関する深い知識を修得させます。さらに、ヒトの健康に関わる諸問題の探索、分析、解決に必要な能力を身に付けた専門家を養成するため、多種多様な生命現象の探求に必要な研究環境を提供します。
獣医環境科学コース
全ての授業を英語で学び、単位取得できるインターナショナルコースとして食の安全、人獣共通感染症および家畜衛生の分野でグローバルリーダーとして活躍できる人材の養成をめざします。また、バーチャル研究所である食品安全科学研究センター、アジア健康科学研究所や大阪国際感染症研究センターと連携しと連携し、海外の大学や研究機関、国内の行政機関および産業界とも積極的に連携し、研究・教育活動を展開します。
獣医臨床科学コース
本研究科のOne Health の理念に基づき、さまざまな動物の多様な疾患について深い知識を獲得し、その病態解析法、診断法あるいは治療法について新たな提唱ができる専門家を養成することを目的とし、動物およびヒトの医療へ還元可能な研究を実施できる研究環境を提供します。また、地域獣医療のリーダー的人材を養成するため、高度臨床実践トラックを設置し、伴侶動物診療学特論を開講することで獣医臨床センターでの実践的な獣医臨床プログラムを提供します。
主な就職先 (大阪府立大学大学院実績)
- 九州大学薬学部
- 東京大学農学部
- 岡山大学医学部
- 愛媛大学・プロテオサイエンスセンター
- 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
- 国立がん研究センター
- 和歌山市
- 京都大学大学院医学研究科 附属動物実験施設
- 大阪府立大学獣医臨床センター
- 日研生物医学研究所
- Bangladesh Agricultural University,Bangladesh
- University of Rajshahi, Bangladesh
- Khulna Agriculture University,Bangladesh
- University of the Philippines Los Baños
- Poultry Products Quality Control,the Philippines
- Thamassat University, Thailand
- University of Peradeniya, Sri Lanka
- Stanford University, USA
学生の声
グローバルな視野を広げながら、研究に励む
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 獣医学専攻博士課程1年(2021年10月現在) 吉田 拓海さん
幼い頃から動物園が大好きだった私は、大学では獣医学を学び、卒業研究では「ネコ科動物の保全を目的としたネコの体外受精」について研究しました。その中で、わからないことを解明するという研究の楽しさを感じ、本大学院へ進学しました。現在は、大学での卒業研究を発展させ、ネコの多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)から精子や卵子を作製する研究を行っています。国外からの留学生も多数在籍し、留学支援制度も整備されていることから、グローバルな視野を持って研究を進めることができることも本学の魅力だと感じています。