SSSRCだより

2019年7月14日

SSSRCだより 特別号

 

SPACETIDE

 宇宙ベンチャーに加え異業種企業,政府機関,大手企業が集結する日本初,民間による宇宙ビジネスカンファレンスであるSPACETIDE 2019に参加した.研究者やエンジニアだけではなく起業家,投資家やデザイナーも参加し,宇宙ビジネスについて熱く議論が交わされていた.さらに,海外の業界リーダーも参加しており,各国のビジョンや取り巻く状況を知る良い機会となった.また,こうした多様なパネリストによる議論は,様々な角度から行われたため,視野を広げることもできた. パネルディスカッションの中で特に印象に残ったのは,宇宙ベンチャーの起業家たちの実態に迫るセッションである.なぜ起業しようと決意したのか,なぜ宇宙ビジネスに取り組もうと考えたのかについてお話ししてくださった.ネットの記事や本では語られることのない本音を聞くことができ,非常に興味深かった.会社を辞めてから起業したと語られる部分は,実際はそう簡単ではなく,長い間逡巡していたり,やりたい事が見付からずニートをしていたりしたそうだ.貯金の無くなる恐怖と周囲からの嘲笑を一顧だにもせず,そこから一歩踏み出すことのできる人が起業家に向いているとスピーカーの方々は仰っていた. また印象に残ったのは,スピーカーの方々から終始感じた熱意である.自ら掲げたビジョンを絶対に実現させるんだという気持ちが言葉にせずとも感じ取ることができた.こうした熱意が投資家やエンジニア等の人々の心を動かし,ビジョン実現に協力させているのだろう.この滲み出る程の熱意を持っていないと他者を巻き込んで物事を前に進めることはできないのであろう.こうしたことを考えながら話を聞いていると,果たして私はそうしたリーダーであるのかと自らに問わずにはいられなかった.「ひろがり」プロジェクトのリーダーに就任してから3年が経った.プロジェクト発足時のような熱意を今も持ち続けているのだろうか.日々のタスク,進捗管理と意思決定に忙殺され,いつの間にか失われつつあるのではないだろうか.衛星開発を「こなす」ことになっていないだろうか.初心忘るべからずという重要な気づきを与えてくれるセッションだった. SPACETIDEは宇宙ビジネスの最新状況,各国の開発計画,宇宙の利用方法まで幅広い内容のカンファレンスであった.興味のある方は参加してみてはいかがだろうか.

Blue Orignの講演

航空宇宙工学分野 修士二年 飯田 輝澄