SSSRCだより

2019年11月17日

SSSRCだより 特別号その2

RERSEUS講演会「宇宙への夢から起業への夢へ」

去る2019年8月27日にPERSEUSの一環として藤原洋先生をお呼びし、「宇宙への夢から起業への夢へ」と題して講演をしていただきました。PERSEUSとは、大阪府立大学で行われている宇宙航空人材育成プログラムであり、産学官が連携し、先進的な宇宙人材を育てることを目的としています。PERSEUSでは超小型人工衛星の開発や宇宙分野やIT分野などでご活躍している方々をお呼びし、講演会を開くなどの教育プログラムを行っています。 藤原洋先生は現在、インターネットやIoT、ベンチャーキャピタルといった複数の会社を経営している経営者であり、過去にはDVDや映像配信サービスに使われている映像技術「MPEG」の創設にも関わっていらっしゃった、経営者としても技術者としても一流の方です。今回の講演では自身の幼少期から現在に至るまでを振り返りつつ、アントレプレナーシップとは何なのか、経営者には何が必要であるのかといったことについてお話しいただきました。 講演の中で最も印象に残ったのは、アントレプレナー(起業家)として持つべき3つの信念でした。その信念とは、「技術革新を担う達成感が最大の報酬」「知恵・愛・根性の三ある仕事」「逃げない・隠さない・嘘つかないの三ない仕事」です。「技術革新を担う達成感」に関しては、工学を志望する者にとって自分が技術革新に関われるというのはこの上ない喜びであるのは多くの人にとって納得がいくことだと思います。また、裏を返せば他人がまだしていないことをするベンチャーにとって、自分の技術や開発物に達成感を持つということは成長するために必要不可欠なものであるとも感じました。「知恵・愛・根性」は一見すると精神論のように聞こえますが、技術やプロジェクトの進め方に対する「知恵」、同僚や自社の技術への「愛」、困難に遭遇しても逃げずに立ち向かう「根性」は発展途上で不安定なベンチャー企業には非常に重要だと感じました。「三ない仕事」に関しては至極当然のことである一方、常日頃から注意していなければ引っかかってしまいがちです。「三ない仕事」のうちの一つでもしてしまうと信頼は失われてしまう上に、一度でもしてしまうと癖になることが多いのでよくよく注意しておかなければならないと感じました。 また、講演の中で藤原先生が「自分がしたいことをするにはこのまま企業に勤めるのではなく、起業するのが近道だった。」という言葉も非常に印象的でした。自分の中ではアントレプレナーシップとは、「起業をすることでお金を得たり経済を発展させたりする」ものだと思っていましたが、「起業は夢のための手段に過ぎない」という言葉を聞いて、アントレプレナーシップはもっと広い意味を持つ言葉だと思うようになりました。講演を聞いて、利益を得たり経済発展に寄与したりすることに加えて、自身の夢や目的を達成するためにはどのような手段があるのかを柔軟に考え、実際に実行に移せる「実行力」「考察力」もアントレプレナーシップ(起業家精神)であると考えるようになりました。 私が専攻する航空宇宙工学はまだまだ発展途上な分野であり、この分野で活躍するためには企業家精神というのは必要不可欠であると本公演を通じて改めて実感しました。先進的な工学者になるためにこれからもPERSEUSプログラムで多くのことを見聞きし、吸収していきたいです。

工学域 機械系学類 航空宇宙工学 上田 滉也

PERUSEUS講演会

・末田航「ドローンとエンタメとカラス」 美大出身,モバイルゲーム企業後大学院に再入学し,現在はシンガポール大学所属という異色の経歴を持っている末田さん.エンタメを通じて人々のQoLを向上させたいという思いのもと研究を行なっているそうだ. 講演では,カラスの群れを再現し,本物のカラスと会話するドローンの開発についての話題が印象的だった.模擬カラスのドローンとカラスと会話させたいというユニークな発想からそれに全力で取り組む姿勢まで,見習いたい点が多くあった.講演後のパネルディスカッションの場で,「やりたいと思ったことを全力でやる.やりたいと思った時に.」とおっしゃっていたのが非常に印象的で,やはり興味を強くひかれることを対象としているそうだ.私自身,彼ほどの勢いで「やりたいことを全力でやる」ことはできないかもしれないが,興味をひかれることには全力で取り組んでいこうと思うきっかけとなった.

・松村礼央「コンテンツビジネスとロボティクスと宇宙」 ロボットの研究は当然進んでいて,その中でなぜ普及に至らないのか.ロボットを導入するイニシャルコストおよびランニングコストが,人件費と比べまだまだ高額で市場として幅広くは成立していないという話題の後,市場を成り立たせるために必要な付加価値についての話題となった.個人的に興味をもっている分野のお話で,非常に参考になった. 単純作業や危険な仕事の担い手をロボットに置き換え,人間は高度な仕事に集中するという考え方の下,産業用ロボットなどで広くロボットが活用されるようになっているが,ロボットは高度に整えられた環境下でしか本領を発揮することはできない.「ロボットの活躍の場を広げることは,人間の仕事を置き換えていくことだ.」といった考えに囚われていたが,今回の講演ではロボット自体に「アニメのキャラクター」という高い付加価値を持たせるという事例が紹介された.人間だけで作り出すことが難しい付加価値を持たせることで,収益性の高いロボットの活躍の場を成立させるという発想だ.ものづくりの目標を幅広く捉え,様々な市場を考え,場合によっては市場を作ることが将来の自分に必要な力だろうと思うようになった. 今回のお二方の講演では,ものづくりのプロセスや目標とするところについて,非技術的な内容での新たな視点を得ることができたと思う.柔らかな発想力を持つこと,また聞き入れ取り入れることが,自らの視野を広げることに直結し,自らの成長につながると感じた.

工学域 機械系学類 機械工学課程 青地 駿太