SSSRCだより

2019年4月13日

SSSRCだより 2019年4月号

S、X帯衛星受信アンテナの引継ぎ

こんにちは。修士2年の保田です。衛星プロジェクトでは電源系・通信系メンバーとして活動しております。ついに私も卒業の時期がやってまいりました。それと同時に後輩への引継ぎに追われております。現在引継ぎを行っているのは、私が修士論文で開発を行ったS、X帯衛星受信アンテナです。S、X帯というのは電波のおおよその周波数を表す言葉で、S帯は2~4 GHz、X帯は8~12 GHzの電波を指します。S帯の電波は携帯電話や無線LANなどに、X帯はレーダーなどに使用されておりますが、両者ともに大型衛星でも使用されています。ちなみに、X帯はあの「はやぶさ2」でも使用されています。私の修論では、理学部が所有している星の電波を受信するためのアンテナ (電波望遠鏡) を、衛星の運用にも利用できるように改修し、遠隔操作可能な状態にしました。開発した衛星受信システムを使うのはSSSRCの後輩たちであるため、使い方やメンテナンスの仕方を正しく引き継いでおく必要があります。例えば、アンテナ駆動部のギヤには定期的に油をさす必要がありますが、アンテナ自体の直径が3.8 mと非常に大きいため、一部は高所作業となります。安全面でも作業の注意点などをしっかりと資料に残しておく必要があります。なお現在開発中のひろがりは、S、X帯ではなく144 MHzや435 MHzといったもっと低い周波数を使用しており、アンテナも下の写真のようなパラボラアンテナではなく、八木・宇田アンテナというテレビなどにも使用されている簡素なアンテナを使用します。そのため、すぐにはこのS、X帯の受信アンテナでの衛星運用は行われませんが、S、X帯での通信は144 MHzや435 MHzの電波での通信よりもずっと高速な通信が可能です。まだ一部改修が必要ですが、今後新たな衛星プロジェクトが発足した際には、衛星の通信設計の選択肢にS、X帯通信を加えることができると思います。今後のこのアンテナの活躍が楽しみです。

衛星受信用に改修したA13棟屋上の3.8 m電波望遠鏡

スマートフォンからの遠隔操作で受信した衛星の信号

工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 修士2年 保田大介


目指せ!NASTRAN※1マスター

こんにちは、修士1年の清水です。私は、主に電源回路設計を担当する電源系として活動しております。ただ、最近は構造関係の研究室に所属している都合もあり、衛星構体の構造解析も担当しております。今回は、構造解析についてのお話をさせていただきます。衛星構体の構造解析というのは、衛星の打ち上げから放出までの過程の中で加わる振動や荷重に対して、衛星構体が耐えうる十分な強度を持つかどうかを解析するものです。安全審査をパスするためには、その解析において衛星構体が十分な強度を有することを示すことが必要です。この構造解析において難しいのは、打ち上げに耐えうる強度を満たすだけでなく、現実に即した解析モデルを作成しなければいけないという点です。いくら強度に余裕を持つモデルを作成できたとしても、それが現実の衛星と異なる固有振動数を有していたり、異なる変形してしまったりしては,設計した衛星が安全であることの証明にはなりません。現在、その部分で私は大変苦労しており、先生方にアドバイスを頂きながら進めております。最後に、このような構造解析を引き継いでいただける方を募集しています。「NASTRAN※1マスターになりたい」、「コンター図※2でできる大学生をアピールしたい」という方は、私までご連絡ください。 ※1: NX NASTRANのこと。有限要素法ソフトウェアの1種で、現在構造解析に用いているソフトウェア。 ※2: 等値線図、等高線図。下図のように変形量等に応じて、色別に描画された図。

構造解析の一例:固有振動解析における固有振動モード

航空宇宙工学分野 修士1年 清水康平


BBMからEMへ

お久しぶりです,約一年ぶりに執筆担当となった学部新4回生の山田です.今回は私が担当していることについて報告しようと思います. 現在,私は主にミッション部のソフトウェア試験を担当しています.ソフトウェア試験とは,設計したソフトウェアを回路上でセンサ等を動かしながらその妥当性を確認するものです.今までは,設計の実現性を確認するためのモデルであるBBM(ブレッド・ボード・モデル)を用いて回路上のみのソフトウェア試験を行ってきましたが,最近では衛星の打ち上げ用モデルの前段階となるEM(エンジニアリング・モデル)を用いての動作試験も始まっています.EMでは回路上の動作だけでなく,展開機構などのハードウェアと統合しての試験も予定しており,試験としてはさらに難易度が高まります. また,最近行われた設計審査会(CDR,Critical Design Review)では,試験状況の甘さやスケジュールの遅れなどについて多くのご指摘を頂きましたが,開発が進むにつれて不具合や手戻りなどが多くなったように感じています. 3月には開発を支えていた偉大な先輩方も卒業され,学生ひとりひとりにかかる負担も重くなります.今後は環境試験や安全審査など,タイトなスケジュールの中で多くの作業をこなしていくことになりますが,全力で取り組んでいきたいと思います.

CDRでの集合写真

航空宇宙工学課程 3回生 山田将史


終わりからのはじまり

まず、今年の2月に終わったCanSatについて軽く振り返りたいと思います。自分は元CanSat製作D班でした。ミッションについては地下などのGPSが使えない場所や宇宙を想定して、GPSを使わずに位置推定をしたいというものでした。一つは加速度から移動距離を推定する方法。二つはしばしば車の走行距離の測定に用いたれるロータリーエンコーダを用いて移動距離を推定する方法。この2つを併用して精度を高めていくというものでした。本番の数日前には自分が担当していたロータリーエンコーダの距離測定の精度が悪くなるなどいろいろと大変でしたが、まわりの班員にかなり助けてもらいなんとか当日を迎えることができました。本番は惜しくも3回目の気球からの落下試験で自由落下をしてしまい機体は大破してしまいました。 その後は、OPUSAT-Ⅱのほうに参加しています。今やっていることは、主に先輩方の上位機能についての引継ぎです。自分はカメラ担当の先輩の下についたので、今はカメラやその周辺機器について勉強中です。今回の衛星でカメラが関わるミッションは展開したものをカメラで観測してそれを解析するといったものです。一日でもはやく力になれるように頑張っていきます!!

CanSat-D班の機体

理・物理 2回生 古田悠真


CanSat開発を終えて

こんにちは、SSSRC一回生の金光宏武です。昨年12月の気球試験まで一回生が行っていたcansat開発において私の属していたa班のミッションの内容は、構体に搭載した植物の種を、土と共に地面に放出することにより自動で種まきを行うことができるという物でした。気球試験では、フルサクセスを達成することはできませんでしたがミニマムサクセスを達成することはでき、とても貴重な経験となりました。CanSatの気球試験から早四ヶ月が経過し、私たち一回生は、それぞれにロケット開発、衛星開発のソフトウェア開発と構体開発に分かれて先輩方の行われてこられたOPUSAT-Ⅱとロケットの開発に少しずつ参加しています。現在私は、衛星開発の構造系に所属しています。それに伴って、3Dcadを使うようになったり、難しい話を聞くようになり、頭に「?」が並ぶこともたびたびありますが(汗)何とか食らいついていこうと頑張っています。先ほども述べたように私はまだ知識が少なく分からないこと、聞いたこともないような単語が多くあるような状態ですが、いろいろな人から吸収し、協力して知識量を増やし先輩方の会話について行けるようになりたいと思っています。

a班のCanSat走行の様子

工学域 機械系学類 一回生 金光宏武