SSSRCだより

2017年11月19日

SSSRCだより 2017年11月号

 

改良を繰り返す ― OPUSAT-II プロジェクト・熱構造系

 熱構造系担当の高田 倫です.最近の熱構造系の活動について紹介します.少し前まで,私たちは OPUSAT‐Ⅱ の試作構体を発注するために,図面を作成していました.なんとか図面は完成し,構体の発注を終えることができたのですが,構体の発注と並行して進めていた通信性能のシミュレーションの結果,アンテナと展開パドルの位置関係が悪く,通信がうまくできない可能性があると分かり,構体を作り変えることになりました.これまでは OPUSAT-KIT の構造や機器配置を参考に構体を設計していたのですが,これからは新しく設計し直す必要があるので,構体への要求を再度分析しながら設計を詳細化していきます.設計が固まれば,CAD モデルを用いた構造解析などを行った上で,再度発注します.既に発注してしまった構体は無駄になってしまうわけではなく,アンテナパターン試験や組み立ての検討などに利用することになります.

OPUSAT-II Structure

OPUSAT-II 構体 CAD モデル

 私自身,本格的に図面の作成を行うのは今回が初めてでした.CAD でモデリングしてあるものを図面に直すだけなので,それほど難しくないだろうと思っていたのですが,私たちの設計の意図を全て図面に詰め込んで,部品の加工を担当する技師の方に伝えるという作業は,予想以上に難しかったです.図面が完成するまでに,先輩や技師の方からのアドバイスを受け,修正を重ねながらなんとか完成させることができました.この経験のおかげで,私の図面作成技術は向上したように思います.

 センターには,「図面のすゝめ」という資料があります.図面の描き方や,構造系の先輩が過去に図面を描いた際に気づいたことが書かれている資料です.発注が終わった後,私もこの資料に今回の経験で学んだことを追記しました.私が身に付けた技術が私だけでなく,後輩にも伝わればいいなと思います.

 今後は新しい構体の設計や,ミッション実現に非常に重要な展開機構の設計を当面行うことになります.それらが終われば,熱真空試験,振動試験,そして,衝撃試験といった,環境試験が待っています.ミッションを確実に実施できるような衛星構体の完成を目指し,これからも頑張って行きたいと思います.

高田 倫 OPUSAT-II プロジェクト 熱構造系 工学域 機械系学類 機械工学課程 3 年

大型モデルロケット打上成功! ― ロケットプロジェクト・モデルロケットチーム

 ロケットプロジェクトでは,9 月に行われた第6回加太宇宙イベントにおいて大型モデルロケットの打上を行いました.当初は 1 回のみの打上予定でしたが,急遽運営側からの打上要請が入り,損傷したパーツを交換して打上を行い,2 回目の打上にも見事に成功しました.1 回目,2 回目ともに投下物・パラシュートの開放に成功し,これまで CEES ロケットで開発してきたテグスカットによる開放機構の信頼性を示すことができました.2 回の打上成功が評価され,表彰を受けました.

 今年度をもって卒業してしまう先輩が多いので,その先輩方からの技術継承を目的として今回は打ち上げを行いました.この打ち上げを通して,ロケットの設計・開発・安全審査資料の作成まで,一通り勉強することができました.

Launch of model rocket

飛ぶ大型モデルロケット

 また,9 月末には茨木工科高校との連携授業を行いました.ロケットの種類や仕組みについて説明をしたり,自立走行する CanSat の製作についての質問を受けたり,モデルロケットについての情報交換をしたり,とても有意義な時間を過ごしました.

ibaraki-technical-high-school

連携授業の様子

 現在は新しい CEES ロケットである CEES-X(仮称) の開発を行っています.CEES-X はこれまでの CEES ロケットのとある課題を克服することを目的としたロケットですが,設計するにあたって不足している情報が多いので,様々な実験を行いながら,設計に必要な情報を集めています.

岸田 聖子 ロケットプロジェクト・モデルロケットチーム リーダー 工学域 機械系学類 航空宇宙工学課程 2 年

スケジュール管理の難しさを知る ― CanSat プロジェクト

 今年度の 1 年生は,3 つの班に分かれて CanSat の開発プロジェクトを進めています.各班のプロジェクトマネージャを担当している 3 人に,各班の CanSat の紹介と,プロジェクト終盤に向けての意気込みを書いていただきました.

A 班

 A 班プロジェクトマネージャーの今塩屋です.私たちの CanSat のミッションは「パラシュートよりも減速する」です.具体的には,上空で CanSat が放出されてから,パラシュートで減速,パラシュートを CanSat から分離してプロペラを回転させ,さらに減速する.着陸後に CanSat に搭載した壊れやすいモノ(絹ごし豆腐)の状況を確認するというミッションです.現在はミッション検討,要求・仕様検討を経て BBM 製作に取り組んでいます.当初は BBM 製作までの工程を 1 ヶ月で完了させる予定でしたが,なかなかうまくいかなかったので,遅れを取り戻すために頑張っています.気球試験まであと 1 ヶ月半しかありませんが,自分たちの立てたミッションが成功するように頑張ります!

structure design of cansat a

A 班の CanSat CAD モデル

今塩屋 佳志 CanSat A 班 プロジェクトマネージャ 工学域 電気電子系学類 1 年

B 班

 B 班の CanSat のミッションはずばり,空中での姿勢制御です!と言いたいのですが,これがあまりにも高度かつ複雑なため,変更せざるを得ませんでした.そこで,ミッションを「CanSat の指定した面を上に向ける」に変更しました.我々 のCanSat はサイコロの形をしています.CanSat を地上で自律的に転がして,ある面を上に向けるのです.ミッションが決定し,製作が始まりましたが,問題はまだあります.我々B班のメンバーは,TAを除き,全員 2017 年に入学したのです.つまり,全員が衛星開発,ロケット設計に関してずぶの素人なわけです.なので,開発はスムーズに進んでいる,とは言えません.が,今は期日までに完成させることを目標にして,みんなが作っています.

structure design of cansat b B 班の CanSat 構体

大村 海雲 CanSat B 班 プロジェクトマネージャ 工学域 電気電子系学類 1 年

C 班

 C 班は CanSat 投下直後上空から地上の撮影対象を撮影し,着陸後指定ポイントまで走行,ポイント到着後また別の撮影対象を撮影し,その後撮影した画像をPCに自動転送するというミッションを行います.CanSat には GPS モジュールや赤外線センサ,地磁気センサなどを搭載し,着陸後は障害物を避けながら最短距離で指定ポイントに到着することを目指します.またカメラモジュールを下向きと横向きの 2 つ搭載することで,上空からの撮影と地上での撮影の両方を可能にしています.これまで一番苦労したことは,電子回路などについての基礎知識が足りなかったため,何ができて何ができないかの判断が難しかったことです.ミッションを決定する際も,自分たちが CanSat でどのレベルのミッションを実現できるのかが判断できず,ミッション決定にかなり時間がかかってしまいました.現状スケジュールがかなり厳しいですが,なんとか気球試験ではエクストラサクセスまで成功させたいです.

栢割 脩平 CanSat C 班 プロジェクトマネージャ 現代システム科学域 マネジメント学類 1 年

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