SSSRCだより

2022年6月1日

SSSRCだより 2022年6月号

無題

ワイヤレス電力伝送ミッション

こんにちは.修士1年のもっさです.

今回は,3月号でも書かれていた「軌道上のワイヤレス電力伝送実証」について簡単に紹介しよう思います.

「軌道上のワイヤレス電力伝送実証」は,次期衛星(仮称:OPUSAT-III)で実施を検討しているミッションの一つであり,近年,スマートフォンの充電器等で話題の“ワイヤレス給電”を宇宙空間で行おうというものです.

ここで中心となるワイヤレス給電は,名前の通り,ワイヤ(線)を使わずに電力を送信する手法のことで,下記画像のように,2枚のコイル間で電力の送受信を行います.物理的な線の接続が不要なため,置くだけで充電できるスマホの充電器を皮切りに,電気自動車の充電やセンサへの給電など様々な用途で開発が進められています.

 

 図2022-06-1

ワイヤレス電力伝送イメージ図

 

詳しい原理は複雑なので興味がある方は是非,以下の書籍などを参考してください.

特にトランジスタ技術6月号には網羅的に書いてあり,オススメです.

 

 

さて,このように話題となっているワイヤレス給電ですが,これを宇宙空間で行うことにどのような利点があるのでしょうか?

私たちは以下のような恩恵が得られると考えています.

 

  • 配線が絡まる心配が少ない
    →配線が不要なので,動く部分に使っても配線が絡まったり,断線してしまう可能性が低い.「ひろがり」衛星も展開パドルを採用しており,今後,展開構造物に機器を搭載する需要が増え,その際にワイヤレス給電が重要になると考えています.
  • 配線が劣化しにくい
    →宇宙空間上で衛星は強い日光や宇宙放射線に晒されます.このような環境に配線がむき出しであると,急速に劣化する恐れがあります.ワイヤレス給電を用いれば,配線を機体内に隠すことができます.

 

現在はミッションの実現可能性を評価したり詳しい仕様を検討するために,ワイヤレス給電用の簡単な回路を作成して実験を行っています.少々昔の動画になりますが,「グリーンエレクロトニクス」を基に作成したワイヤレス給電回路の実験の様子をご覧ください.

https://www.youtube.com/shorts/F6ZiVjORHPc

 

工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 修士1年 山本隼也

ロケットプロジェクトに入ってから今まで。

 

この4月からロケットプロジェクトに所属した2回生の松下と申します.

4月に人生で初めてモデルロケットを作って、打ち上げました.

ただ、普通のモデルロケットを作るのは個人的に面白くなかったので、初めてモデルロケットを作るにも関わらず、いきなり2段式に挑戦しました.

結果は成功で、とても嬉しかったです。正直成功するとは思わなかったので、驚きと喜びが入り混じって笑いが止まりませんでした.

 

 図2022-06-3

そして現在,ロケットプロジェクトでは団体初のハイブリッドロケットを来春に打ち上げるために日々活動をしております.

ハイブリッドロケットを打ち上げるには“GSE”と呼ばれる燃料をロケットに充填するための地上設備が必要で,2週間ほど前にそのGSEの組み立てを行い,いよいよロケットづくりが本格化してきたなぁという印象です.

また7月には福岡でエンジンの燃焼試験も行う予定で,ますますロケットを打ち上げる実感が湧いています.

ロケットプロジェクトの自称“新星”としてこれからも新しい風を吹かせていけるように頑張っていきます.

 図2022-06-2

航空宇宙工学課程2回生 松下昂由

 

 

通信系の活動

 こんにちは学部3年の中西です.今回は通信系の活動内容について書いていこうと思います.OPUSAT-Ⅲに向けたものとして以下のような取り組みを行っています.

・無線機の実証

・アンテナの設計

・暗号化

・周波数調整

無線機の実証では使用する無線機を選定し、変調方式などを決定.その後,実際に通信できるか実験をしていく流れになります.

アンテナの設計では衛星に載せるアンテナの形を決定し,解析ソフトを使って解析を行った後、実際に試験を行っていきます.周波数によって長さが変わり,形状もさまざまのものが存在し,形状によって指向性(向きによる受信のしやすさ)が異なるので構造系,姿勢系との調整が必要でもあります.

暗号化とは衛星にアップリンク(地上から電波を送る)時に悪意のある人に衛星を乗っ取られないようにコマンドを暗号化するというものです.アマチュア無線では暗号の送受信が禁止されているのですが衛星にアップリンクするときは例外的に認められています.

周波数調整とは外国の地上局との干渉が起こらないようにするために総務省に申請して国際的に周波数を割り当てしてもらうことです.総務省への申請はアマチュア無線界隈がやってみたいことをミッションに入れると通りやすいので,これに対するミッションも検討中ではあります.

これ以外にも地上局の整備などやるべきとことは多々ありますが頑張っていきたいと思います.

図2022-06-4

地上局アンテナ

機械工学課程3回生 中西浩太