整形外科学

基本情報

感覚・運動能医学講座 整形外科学

代表者 中村 博亮教授

当教室は、1948年に初代教授水野祥太郎のもと開講され、20094月より現在の6代目教授中村博亮にその伝統が受け継がれています。約70年の歴史を有する当講座の同門会員は640人に及びます。整形外科学は頚部から下の運動器(筋、骨格、神経系)に起こる全ての機能障害を扱う学問であり、その中には関節外科・脊椎外科・骨軟部腫瘍外科・上肢外科・リウマチ外科・スポーツ整形外科・小児整形外科・外傷外科・リハビリテーションなどの各専門分野があります。当教室では、全ての分野の専門家が在籍しており、患者さんへの最適な治療の選択、若手医師の自律性を促す指導、チーム一丸となった治療方針の構築が可能です。
また、当教室では英語教育も活発なことも特徴で、毎週抄読会では英語の聞き取り訓練が行われ、英語での症例検討会を通して、国際学会などでの質疑応答がスムーズに行える環境づくりに取り組んでいます。また、海外からの医学留学生も積極的に受け入れ、近年の国際化社会に対応できる環境が整っています。
大学院生を中心に基礎研究も積極的に行っており、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた末梢神経再生、骨形成蛋白(BMP)を用いた骨再生や半月板再生、骨髄間葉系細胞を用いた関節軟骨修復、工学部と連携して生体親和性のある骨補填材料の開発、プラズマ照射による骨・腱板の再生、脂肪幹細胞を用いた骨・軟骨再生など、臨床応用に向けた世界最先端の研究をしています。
大きな変革の時期を迎えた新専門医制度に即した後期研修制度「クリニカルフェローシップ制度」を設けることにより、専攻医の先生方は安心して後期研修に臨んでいただき、円滑な専門医取得を目指すことを可能にしています。
旧弊にとらわれない医局改革を行い、若手医師がactiveに活躍できる環境づくりを念頭に置き、更なる発展を目指し、診療・教育・研究にまい進する魅力的な教室です。

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場所
学舎 9階
連絡先
TEL:06-6645-3851 MAIL:gr-med-seikei@omu.ac.jp

 

教育方針

学部教育

医学教育の基本は懇切丁寧さだと考え、M4臓器別講義では、多岐に及ぶ整形外科各論に関して、各領域の専門家の充実した講義を実践して、学生諸氏の理解が容易になるように配慮しています。また、M5BSLでは、手術見学と実技実習の時間を多くとり、整形外科の臨床現場を肌で感じ取れるように配慮しています。さらに、医学教育後の臨床教育に円滑に進み、学生諸君の輝ける夢が現実になるように、医局としてサポートして参ります。

 

臨床教育(研修医の育成)

  • 新専門医制度に則した研修制度「クリニカルフェローシップ制度」を採用しています。
    幅広い整形外科診療分野をまんべんなく研修できるように、大学病院と関連病院との間で密接な研修ネットワークを構築し、各分野において診療症例数の多い施設を順次ローテーションすることで、偏りなく、効率の良い研修が可能です。最近5年の平均入局者が約15人という実績からも後期研修制度の充実度に自信を持っています。

研究指導

臨床現場では常に「なぜ?」という疑問を持つことが大切です。疑問に対して十分な文献的検索を行ったうえでも疑問が明らかにならない場合にはその疑問を研究テーマとして取り上げ、臨床に即した研究を行うよう指導しています。また、一定の臨床研修を受けた後には大学院に進学し、生じた疑問を解明する研究に専念し、世界最先端の研究を行うことにより運動機能障害をより理想的な形で改善してくことを目標にしていきます。

研究について

基礎研究では、整形外科で最も重要な課題の一つである骨軟骨代謝、骨軟骨再生、生体材料やiPS細胞を用いた再生医療についての研究を行っています。また各グループでもそれぞれの研究課題を設け臨床に即した研究を行っています。

脊椎グループ
  • 骨粗鬆症性椎体骨折の予防、治療法の検討
  • 変性側弯症、リウマチ患者における脊椎疾患の病態解明 など
関節グループ
  • 新たな人工関節の開発
  • 人工関節周囲の骨密度低下の病態解明・予防方法の開発 など
リウマチグループ
  • 関節リウマチ患者における転倒・骨折の前向きコホート研究
  • 関節リウマチ患者における関節超音波検査の有用性 など
肩・肘グループ
  • 間葉系前駆細胞の褐色化による骨格筋内脂肪浸潤・筋萎縮の治療法の開発

  • リバース型人工関節置換術の新しい3次元評価方法の開発 など
手外科グループ
  • iPS細胞移植を併用したハイブリッド型人工神経の開発
  • bFGFドラッグデリバリーシステムを併用した人工神経の開発 など
スポーツグループ
  • 自己血清由来マテリアルを用いた半月板、軟骨再生研究
  • 早期変形性膝関節症に対する血清COMPによる治療効果判定の開発 など
腫瘍グループ
  • 軟部腫瘍に対する超音波画像診断の有用性
  • 単純性骨嚢腫(SBC)の病態解明 など

教室を代表する業績

  • 30th SECEC-ESSSE Congress Best Poster Prize
  • 2022年度日本手外科学会JSSH-アメリカ手外科学会ASSH Exchange Traveling Fellow
  • The Best Doctors in Japan 2022-2023
  • 第55回 日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学術集会 Hottest Topic Award
  • 第60回 日本癌治療学会学術集会 優秀演題賞
  • 海外日本人研究者ネットワーク論文賞(UJA論文賞)特別賞
  • 第60回 日本癌治療学会学術集会 Young Oncologist Award
  • 第31回 日本リウマチ学会近畿支部学術集会 一般演題優秀賞
  • 2022年度、2023年度World Best Hospitals 整形外科部門選出
  • 2022 Knee Society Award (Chitranjan S. Ranawat Award) (アジア人として2人目、日本人として初受賞)
  • 46th The International Society for the Study of the Lumbar Spine Prize
  • 5th SICOT/SIROT Annual International Conference: 1st Best Award for Poster Presentation
  • 20th International Society of Limb Salvage (ISOLS) General Meeting: 3rd Best Award for Poster Presentation
  • 2022 The John N. Insall Travelling Fellowship
  • American Orthopaedic Association- Japanese Orthopaedic Association Traveling Fellowship
  • 日本脊椎脊髄病学会 台湾整形外科学会トラベリングフェロー
  • 62回日本手外科学会学術集会 ベストペーパーアワード
  • 11回 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 学会賞(関節鏡賞)
  • 2021日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学/日本整形外科スポーツ医学会学術集会ベスト口演賞
  • 第22回骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 第135回中部日本整形外科災害外科学術集会 学会奨励賞
  • 第39回 日本整形外科学会・骨・軟部腫瘍学術集会 優秀ポスター賞
  • 2021 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 Outstanding Young Investigator Award

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主な研究内容

現在の主な研究テーマ

生体吸収性材料を用いた人工神経による末梢神経の再生医療

iPS細胞から神経前駆細胞を文化誘導し、人工神経に組み合わせる(ハイブリッド)ことで神経再生が促進されます。またiPS細胞は皮膚の細胞から樹立可能であり、正常神経を犠牲にしなくて済みます。さらにこの人工神経は神経再生を促進する成長因子(線維が細胞増殖因子(FGF)など)をドラッグデリバリーシステムとともに新たに付加することも可能です。これにより神経再生をさらに促進させることが可能になりました。

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間葉系前駆細胞の褐色化による骨格筋内脂肪浸潤・筋萎縮の治療法の開発

腱板断裂後に腱板筋の脂肪浸潤・筋萎縮が進行すると、手術後の再断裂率が上昇するという問題があります。我々は腱板筋の脂肪浸潤・筋萎縮に対する治療法として、骨格筋間間葉系前駆細胞の褐色化(褐色脂肪細胞様の“ベージュ脂肪細胞への分化誘導”)に着目し、この褐色化を効果的に誘導できる物質・投与方法に関する研究を行っています。現在、骨粗鬆症薬として知られる副甲状腺ホルモンが脂肪浸潤・筋萎縮の抑制効果を有することを明らかにし、臨床応用を目指して検証を続けています。

関節リウマチ患者における超音波検査の有用性についての研究

関節リウマチという疾患は、しっかりと治療を行わないと関節が壊れてしまいます。幸い、関節リウマチにおける治療薬は飛躍的に向上してきており、様々な治療薬の登場によって関節破壊はかなり抑えられるようになってきました。しかし、一見リウマチが落ち着いているように見えても関節が壊れてくることが起こることがあります。患者さんの関節を少しでも守るため、我々の施設では超音波(エコー)検査を積極的に行い、関節破壊を起こす原因となるリウマチによる滑膜炎の存在を可視化し、それらをいかに抑制できるかについての研究を多数おこなっています。

骨腫瘍の病的骨折のリスク評価

骨腫瘍を切除する際には骨に窓を開け、そこから腫瘍を掻爬する必要があります。特に荷重骨である大腿骨ではその開窓の程度によっては骨の脆弱性をきたし病的骨折のリスクが高くなります。どの程度で病的骨折のリスクが上昇するのかを家兎モデルを使用して実験的に病的骨折のリスク評価を行っています。また、CTDataを用いて有限要素解析を行うことで、ヒト骨腫瘍においても病的骨折のリスク評価を行っています。

半月板損傷の病態と治療、再生医療

半月板は様々な外傷で損傷します。形も様々であり、一様な治療法は確立されていません。
当院では半月板損傷の様々な病態に対して、MRIを駆使し、術前評価を行っております。また術中にはfibrin clotを移植し、半月板治癒を促進させています。さらに実際にどの程度fibrin clotが半月板治癒に有効なのか、動物実験を行って、その有効性を検証しています。

人工関節周囲の骨密度低下の病態解明・予防方法の開発

人工関節周囲の骨密度は経時的に低下し、人工関節の長期耐用性に影響を及ぼすことが知られています。人工関節周囲の骨密度低下に影響を与える様々な因子を解明し、一流の英文誌に公表しています。また、オランダのRadboud University Medical Centerと共同研究を行い、人工関節周囲の骨密度変化を予想できるコンピュータモデルを作成し、人工関節周囲の骨密度低下を抑制する新しい人工関節の開発を行っています。

新たな腰部脊柱管狭窄症の治療開発に向けた黄色靭帯肥厚メカニズムの解明

腰部脊柱管狭窄症は加齢とともに生じる脊椎の代表的な疾患です。狭窄の主な原因の一つが黄色靭帯の肥厚ですが、現時点では手術以外の根本的な治療法はありません。そこで薬剤などにより黄色靭帯肥厚を菲薄化させる新たな治療法の開発を目指して、動物モデルなどを用いて黄色靭帯肥厚メカニズムに関する研究を行なっています。肥厚に関与する遺伝子や物質を複数同定し、その機能を解明して学術誌に報告しています。

臨床への取り組み

脊椎脊髄外科、関節外科、スポーツ整形外科、骨軟部腫瘍外科、リウマチ外科、足の外科、肩関節外科、手外科、小児整形外科、リハビリテーション科とほぼすべての整形外科専門領域をカバーし、最新の治療法を積極的に取り入れています。脊椎外科では顕微鏡、内視鏡下手術から脊椎固定手術まで、関節外科では小皮節手術、ナビゲーション・手術支援ロボットを併用しての人工膝関節・人工股関節を、肩関節外科では関節鏡手術からリバース型人工関節まで、スポーツ整形外科では関節鏡視下手術などの低侵襲手術を得意としています。リウマチ外科では積極的に生物製剤を導入し、最新の治療を行っています。成人の足部疾患の手術にも対応します。手外科では、微小血管吻合技 術や腱移行術を用いた高度な再建手術を行っています。骨軟部腫瘍外科では手術に加え、抗癌剤治療を併用して、悪性腫瘍であっても患肢温存を目指しています。小児整形外科では新生児から思春期までのあらゆる病態に対応しています。

スタッフ

教授 中村 博亮
特任教授 橋本 祐介、岡野 匡志
准教授 寺井 秀富、岡田 充弘、箕田 行秀、豊田 宏光
講師

池渕 充彦、溝川 滋一、加藤 相勲、大田 陽一、

鈴木 亨暢、洲鎌 亮、間中 智哉、高橋 真治

病院講師

細見 僚、大戎 直人、真本 健司、玉井 孝司、山田 祐太郎、

高田 尚輝、西野 壱哉、大西 裕真、小島 孝仁、福山 建太朗 

参考写真

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集合写真

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学生実習風景

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カンファレンス風景