あえて異分野の世界に飛び込んで視野を広げよう
普段から意識して、自分の専門とは異なる分野に足を踏み入れてみるよう心がけています。といっても、何も難しいことをするわけではありません。休みの日に、研究とはまったく関係なくおもしろそうだと思ったイベントに出かけて行きます。陶芸や吹きガラス、そば打ち、茶摘みなど、これまでいろいろな体験型のイベントに参加しました。
体験型のイベントでは、実際に手を動かすことで、その道の先生がどのように考え、その考えがどのような技法や身体の動かし方に結びついているのかを追体験できます。こうした体験はその技が身につくだけでなく視野も広がりますし、特に私は、自分の考え方と先生の考え方の似ているところや異なるところを対比させるように眺めてみて、意識的に体験を知識化するようにしています。
先生にもよく質問します。研究では疑問を持つことが大切ですが、体験型イベントで疑問点を探して質問することは、いわば疑問に気づくためのセンサーを研ぎ澄ます役割があるといえるかもしれません。また、いい質問をするための鍛錬にもなります。
そして、イベントに出かけて新しい体験をする最大の利点は、自分の考え方の癖や、それまで気づいていなかった自分の思い込み、また物事を考える上で自分が前提としている知識が何なのかがわかるようになることです。異分野の研究者と会話していると、ときどき話がかみ合っていないと感じることがありますが、それは相手が前提としている知識とこちらが前提としている知識が違うためです。自分の前提知識がわかれば、会話の全体が見えやすくなり、相手の考えていることも引き出しやすくなるはず。その結果、これまでとは違った考え方で発想できるようになるのではないでしょうか。
そもそも、こうした会話の食い違いは、工学者同士でも見られます。共通のテーマで話し合っているはずなのに、なぜか意見がかみ合わない。そういった場面で、お互いが話の前提としている条件が違っていることに気づき、それ以降話がスムーズに進んだということがありました。その経験がきっかけで、視点は多く持っていた方がいいと考えるようになり、積極的に異分野の世界に飛び込んでいます。
私の場合、異分野体験は休日の趣味の一つとして生活に取り入れています。遊び感覚で参加しているので気分転換にもなりますし、そこから研究のヒントも得られたらいいなと思っています。
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「もう一度自分の力で立ち上がりたい」ー挑戦する思いに寄り添う運動学習支援ロボットとはプロフィール

工学研究科 機械系専攻 助教
工学研究科 機械系専攻 助教
博士(工学)。株式会社国際電気通信基礎技術研究所脳情報研究所ブレインロボットインタフェース研究室専任研究員を経て、同客員研究員(継続中)。大阪市立大学大学院工学研究科・工学部機械物理系専攻・機械工学科助教を経て、現職。人の運動の理解および運動学習支援ロボット、リハビリテーションシステムの研究に取り組んでいる。
※所属は掲載当時