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アートが生む市民活動-芸術が社会を変えるとき-

私の研究分野は文化政策学です。もともと、私は愛知県の職員でした。僻地高校の事務や病院の経理、教育委員会など県の職員としてさまざまな業務に携わっていました。転機は2010年、愛知で開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の担当になったことです。長者町繊維街という商店街で行われた企画の一つが、私を研究の道に導きました。

戦後、長者町繊維街は問屋街として栄えていたものの、当時はシャッター街となっていました。そこで、2人組のアーティストユニットKOSUGE1-16が「戦争で焼失した山車(だし)を復元し、町の人々が曳く」という企画を打ち出したのです。当初、町の人々は山車を曳きなれておらず、事故の危険もあることから、曳き手を余所から雇うことを提案しました。しかし、アーティストは「長者町の人が力を合わせる、それが作品の意図だ」と説き、議論を重ねることで、芸術祭で山車が復活しました。そしてアーティストも想定していなかったことが起きました。この企画は芸術祭の一つの催しとして実施されただけではなく、その地域の祭りとして毎年開催されるようになり、地域づくりにつながるイベントへと成長しました。まさに「山車が人々を支える関係」になったのです。

当時、芸術祭を開催することで市民活動が起きるのか?ということが、アート関係者や文化政策研究者の大きな関心事になっていたのですが、まさにそれを象徴するような出来事が目の前で繰り広げられました。自分が目にした、アートが媒介となり人がつながり、地域が変容する様子を論文という形で残したいと思い、東京藝術大学への進学を決意しました。世界的にも、従来の「目に見えるモノ」を中心に据える美術観から「人と人との関係性」に美を見出す潮流が広がりはじめた頃で、私自身が現代アートにのめり込むきっかけにもなりました。

日本文化政策学会が立ち上がったのが2007年、研究としての蓄積もこれからという若い領域横断的な学問です。私は主に法学、政治学などからアプローチし、アートが地域社会に当たる影響や、アートを支える社会の仕組み、芸術の自由などに関心を持って研究をしています。一方で、日々若い研究者の方が増え、時代が研究者を生むような側面がある面白く、かつ勢いがある学術領域だと思います。私は勤めを続けながら東京藝術大学に通い、博士論文を執筆し、現場の経験に理論の光を当てることができたと感じました。そして2015年、ご縁があって大阪公立大学の前身である大阪市立大学で働くことになり、現在に至ります。社会人大学院の講義も担当していますが、NPO関係者、公務員、会社員、アートコーディネーター、研究・教育機関の関係者など多様なバックグランドを持つ方々が在籍しています。お話を伺うと、我々研究者よりも実際に現場で何が起きているかをご存じです。現場の知見と理論を組み合わせることで、より深い学びにつながるのではないかと考えています。

プロフィール

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都市経営研究科 都市経営専攻 教授

吉田 隆之

都市経営研究科 都市経営専攻 教授

学術(博士)。 京都大学法学部卒業・修了後、愛知県庁に勤務。同職勤務中に東京芸術大学 音楽研究科 音楽文化学専攻芸術環境創造分野  博士課程修了、京都大学大学院 公共政策教育部公共政策専攻修了。2015年大阪市立大学大学院創造都市研究科都市経済・地域政策分野 准教授、2022大阪公立大学大学院都市経営研究科都市経営専攻 准教授を経て、2025年より現職。専門分野は都市文化政策、アートプロジェクト。ソーシャルアートコーディネーターの人材育成に携わる。

研究者詳細

※所属は掲載当時

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