柔軟性を大切にしながら、目の前の研究を一つひとつ積み重ねてほしいです。 理学研究科物理学 | 教授岩崎昌子 研究テーマを教えてください。 大型加速器実験による素粒子物理学の研究 研究の内容を教えてください。 大型加速器を用いた実験で素粒子物理学を研究しています。素粒子物理学は、私たちの世界(=宇宙)が何で作られているのか、それらの間にどんな力が働いているのかを探求します。宇宙の誕生時は大きなエネルギーの塊で、ビッグバンが起こり、重い粒子や反物質が存在していましたが、冷却が進んだ現在の宇宙からは消滅しました。大型加速器で、人工的に宇宙誕生時の高エネルギー状態を再現し、「ミニビッグバン」を作り出すことで、重い粒子や反物質を作り出し、未知の粒子や宇宙の成り立ちの解明に挑んでいます。 今後達成したい研究目標や、現在の研究を社会にどう貢献させていきたいかなど、教えてください。 素粒子実験は宇宙の起源を解明する最先端の基礎科学ですが、その成果は社会にも広く還元されています。インターネットや超伝導、計算技術の発展や、加速器を用いたがん治療など医療技術の進化にも寄与しています。素粒子物理学の探求と基盤技術の発展、両面から社会貢献できれば嬉しいです。 その目標を達成するために、研究時間の確保などの日々行っている工夫や、取り組んでいる活動などを教えてください。 近年、自身の研究時間の確保は容易ではありませんが、素粒子実験は多様な専門性を持つ研究者による共同実験であり、強固なチームワークが成功の鍵となります。そのため、共同実験者との円滑なコミュニケーションの構築や連携を重視しています。また、学生を研究チームの一員として迎え、最前線の技術に触れられる機会を積極的に提供することで、次世代の人材育成に寄与したいと考えています。 時には研究が止まることや、思うような研究成果が出ないときもあるかと思いますが、そのようなときにどうやって乗り越えるかを教えてください。 自分の力で何とかできることと、そうでないことがあると思いますが、まずは目の前の課題やその時々にできることに取り組み、研究を積み重ねていきたいと考えています。その時点での最善のアプローチができているかを評価し、軌道修正を行いながら、乗り越えていきたいと思っています。 研究者としてのキャリアを諦めようと考えたことはありますか。もしあれば、そのとき何を思い、考えて、やはり継続していこうという決断に至ったのかを教えてください。 キャリアを諦めようと考えたことはありませんが、研究を続けるために、仕事内容や環境を変えた機会が何度かありました。出産後は、なるべく出張が少ない実験に変更しました。また、夫が西日本に単身赴任した際は、子供がまだ小さかったこともあり、ネットワークを使えば自宅から仕事ができる、加速器制御の仕事に変更しました。さらに、家族で一緒に暮らすため、西日本での職探しを行いました。 研究者としての道を歩んでいる若手研究者へメッセージ 研究の道は長く、ライフイベントなどで予期せぬ出来事も起こるので、柔軟性が大切だと思います。私の場合も出産や家族の環境変化など、さまざまなきっかけで研究環境や仕事の内容が変わりました。「これしかない」と決めずに、状況に応じて柔軟に動いてみると、新しい楽しさを発見したり、それらの経験が思わぬところで結びつくことがあります。目の前の一つひとつの研究を大切に積み重ね、続けてほしいと思います。