ひろがり Project

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2021年3月 運用開始!!
衛星局コールサイン:JL3ZKS

運用情報はこちら

2022年4月16日 ひろがり運用終了しました!!!応援ありがとうございました!!!

超小型人工衛星"ひろがり"

  "ひろがり" は、2U (10 ✕ 10 ✕ 20 cm) サイズの CubeSat です。バスシステムは前号機の OPUSAT の設計を基に開発しています。本プロジェクトでは学生による超小型人工衛星開発に適した新しいシステムモデリング手法と開発体制を導入しています。

"ひろがり"室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センターと共同で開発を行っています。 2020年10月までに、大阪府立大学の学生49名、室蘭工業大学の学生9名がこのプロジェクトに参加し、開発を行いました。

宇宙での姿

宇宙での姿

ひろがり FMモデル

ひろがり FMモデル

ひろがりの仕様 ひろがりの仕様
ひろがり 宇宙での様子

"ひろがり"の2つのメインミッション

 "ひろがり"には達成すべき2つのメインミッションがあります。

  1. アマチュア無線帯における高速通信技術実証
  2. 軌道上形状計測システムの実証

2021年1月29日:記者会見資料

①:アマチュア無線帯における高速通信技術実証 ~アマチュア無線の幅を"ひろげる"!~

 これまで打ち上げられた多くの超小型衛星は UHF・VHF で 1200 bps、9600 bps の通信速度を利用していました。ひろがりでは、従来から用いられている 1200 bps、9600 bps の通信に加えて、より高速な13600 bps GMSK19200 bps 4FSKを採用します。 また、従来のアマチュア無線衛星では主にAX.25 プロトコルが用いられており、パケットロスが生じた際に地球局からの再送要求が必要となり、衛星運用のコストを大きくする要因になっていました.ひろがりでは誤り訂正能力を持つリードソロモン符号化・畳み込み処理を用いたプロトコルを実証します。それぞれのプロトコルについて通信実験を行い、超小型衛星の運用に適しているプロトコルを評価します。そして、これらの通信方式について有用性を評価する通信実験を行います。 この通信技術の有用性が示されれば、アマチュア無線帯を用いる衛星で、より高効率な通信が可能となります。 実験結果、実証した衛星内の通信システムと地球局システムの設計は Web 上で公開し、世界中のアマチュア無線家がこの高速通信技術を利用できるようにし、アマチュア無線衛星の通信技術の向上を目指します。

実証予定の通信方式

②:軌道上計測システムの実証 ~展開構造物を"ひろげる"~

 近年、より高度なミッションを行うために、人工衛星には太陽電池パネルやパラボラアンテナなど大面積構造物搭載の必要性が増しています。この大面積構造物には輸送手段の制約上、高い収納性が求められます。また、無重力・真空・急激な温度変化・放射線など厳しい宇宙環境下で、大面積構造物の形状が要求を満たしているかどうかを計測する必要があります。 そこで、「ひろがり」ではミウラ折りを発展させた二次元展開構造物を搭載し、宇宙空間でこれを展開します。また、二次元格子を利用した光学的な表面形状計測システムを搭載し、有用性を実証します。本衛星ではこの展開構造物と計測手法との両方を世界で初めて宇宙空間で実証します。

ミッションフロー

① ミウラ折り二次元展開構造のパネルを展開

② ミウラ折り二次元展開構造のパネル形状を計測

③ ミウラ折り二次元展開構造のパネル形状の時刻歴変化を計測

展開構造

 展開構造には厚板二次元展開構造を用います.ミウラ折りとは厚みの無視できる折り紙工学を利用したコンパクトな二次元収納展開方法のひとつであり,折り畳んだ構造物を対角方向に引くと全体が縦横に同期展開する利点があります.このミウラ折りの技術を厚みの無視できない実在の平板に応用したのが厚板二次元展開構造であり,厚みを考慮した折り紙工学の研究は世界的に注目されている課題です.私たちはすでに折り線部分の定式化に成功しており,本プロジェクトでこの展開構造の収納・展開性能を実証します.

miura_deployment 厚板二次元展開構造の展開の様子

計測手法

 計測には二次元格子を利用した光学的な表面形状計測手法を用います.この計測手法は非接触に物体表面の三次元形状を得ることができ,計測時間が短く機器構成が簡単でありかつ高精度であるなどの特徴があります.対象物の表面に貼付または描画した二次元格子を2台のカメラで撮影し,格子模様のゆがみ方を解析することにより対象物表面の三次元形状が計算されます. c8856789ec11ab8b1013037cef6929f9-e1528467450752

表面形状計測概要

より詳細な内容につきましては,ミッション部開発紹介ページ(室蘭工業大学宇宙期構造工学研究室)をご覧ください.

アマチュア無線ミッション

 アマチュア無線での交流を”ひろげる”べく,2つのアマチュア無線サービスを提供します. 

メッセージボックスサービス

 アマチュア無線家はひろがりに対してアップリンクを行うことができます.アマチュア無線家は任意の文字列が含まれているコマンドを送ると,ひろがりはその文字列を保持します.また,コマンドをアップリンクすることによって保持された文字列をダウンリンクさせることができます.アップリンクはAFSK/FM 1200bps AX.25プロトコルで行います.ダウンリンクテレメトリはコマンドによってAFSK/FM 1200bps,GMSK/FM 9600bps,GMSK/FM 13600bpsの3つの変調方式の中から指定でき,プロトコルはAx.25プロトコルを用いて行います.

アマチュア無線家が受信設備を簡単に構築できるように,SDRを用いた受信設備構成の図を以下に公開します.括弧で名前を記載しているものは一般に公開・販売されているソフトウェアやハードウェアですので,ご自身でインストール,ご用意していただきますようお願いいたします.また,図内右下の自作ソフトウェア(RS/RS &Convolution Decoder)は,アマチュア無線ミッションサイトにて公開しております. なお衛星追尾には,仰角ローテータERC5Aと方位ローテータRC5A-3 を使用しています.

gndsta-system

受信構成図

アマチュア無線家がアップリンクできる時間帯は,決定次第,当HPならびにTwitterにてお知らせいたします.

メッセージの一般募集

 衛星を使って世界中に発信したいメッセージをアマチュア無線家ではない人から募集します.募集したメッセージの中から選出したメッセージを私たちがアップリンクし,世界中のアマチュア無線家がそのメッセージをダウンリンクします.メッセージを受信したアマチュア無線家からコメントをもらい,インターネット上でそのコメントを公開します.このことによってアマチュア無線に興味を持ってくれる人とアマチュア無線家のつながりを作り,アマチュア無線に親しみを持ってもらおうと考えています.本メッセージ募集は2021年5月をもって終了いたしました.たくさんのご応募ありがとうございました!アマチュア無線ミッションの実施日程につきましては,運用情報ページTwitterにてお知らせいたします.

OPUSAT-KITの利用

 ひろがりでは、軌道上での動作が確認された、OPUSAT の設計を基に開発されたOPUSAT-KIT バスシステムを利用します。OPUSAT-KIT のバスシステムは衛星全体の内,高さ 7 cm 程度の範囲を占有します.ひろがり を高さ 20 cm の衛星とし,残りのスペースに構造物の収納・展開システムと計測システムを搭載します.

ミッションシステムとバスシステム

サクセスクライテリア

以下のサクセスクライテリアを満たすことを目指します。

サクセスクライテリア

運用フロー

“ひろがり”の予想軌道寿命は約5.5ヶ月です。以下の流れでミッションサクセスを目指します。

運用フロー

クリティカルフェーズ

 衛星が放出機構から放出された後、33分間待機します。その後、アンテナを自動的に展開し、 電波の放射を開始します。地球局では衛星からのHKテレメトリの受信を試み、オブジェクト特定を行います。

チェックアウトフェーズ

衛星から常にダウンリンクされている HK データ(健全性データ)から、

  • バッテリの温度
  • 電圧
  • 電流
  • 衛星の異常の有無

を確認し、衛星の健全性を確認します。その後、地球局からのアップリンクを試み、

  • より詳細な電力供給状況
  • 衛星各部の温度情報
  • ヒータによる熱制御の状況
  • 姿勢情報

など、衛星のより詳細な状態を確認し、ミッション遂行可能か確認します。

定常運用フェーズ

以下の項目を実行し、ミッションサクセスを目指します。

  • パドル展開
  • ミウラ折り構造物展開
  • 展開構造物形状確認
  • 高速通信実証
  • アマチュア無線サービス提供

後期運用フェーズ

時間が許す限り、以下の項目を実行します。

  • アマチュア無線サービス提供
  • 展開構造物形状変化確認

プロジェクトの流れ

開発スケジュール

開発状況

 2020年10月16日に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターにてフライトモデルの引き渡しが完了しました。2021年2月21日には、米国東部バージニア州にあるNASAのワロップス飛行施設にて打ち上げられ、翌日22日に国際宇宙ステーション(ISS)に運び込まれました。そして、2021年3月14日に国際宇宙ステーション(ISS)より小型衛星放出機構J-SSODによって、ISSの「きぼう」日本実験棟から放出されました。その後約1年間の運用を経て、2022年4月16日に大気圏に突入し、運用を終了いたしました。

JAXAへ引渡しの様子

FM熱真空試験

FM振動試験

衛星外観(展開時)

衛星外観(未展開時)

外観検査