OMUSAT-III メインミッション
OMUSAT-Ⅲ メインミッション「格子投影法を用いた軌道上での形状計測」
ミッション概要
先代機の「ひろがり」では展開構造物ミッションを行いました.当衛星ではこの経験を活かし,膜を軌道上で展開させ,膜の3次元形状計測を行うことを目的としたミッションを行います.ここで,カメラ1台とプロジェクタ1台のみを用いる格子投影法と呼ばれる手法を採用し,軌道上初の3次元形状計測に挑戦します.撮影された画像データは地上局にダウンリンクされ地上にて画像解析を行うことを予定しています.
背景
近年,宇宙における柔軟構造物の利用の期待が高まっています.その背景に柔軟構造物は剛性が低く収納性が高いため,巨大な構造物でも打ち上げ時の収納サイズを小さくすることができるという利点があります.また,展開後に小さな外力で容易に形状を変更することができる他,柔軟構造物は質量が小さいといったことから,打ち上げ時のコストを抑えることができるといった利点もあります.このため,柔軟構造物は,ソーラーセイルであったり,宇宙太陽光発電システムSSPS(Space Solar Power System),メッシュアンテナといった宇宙開発への利用が期待されてきました.
そして,これら柔軟構造物を宇宙で利用する上で,軌道上で柔軟構造物の形状を計測することが期待されていますが,これまで実際に柔軟構造物の形状計測を行った事例は少ないため,本衛星を用いた被計測物の軌道上計測を目標としました.
格子投影法の利点
格子投影法最大の利点は以下の表にあるように,空間分解能がほかの手法に比べて高いことにあります.格子投影法の空間分解能(どれだけ細かくみれるかを示す能力)はカメラの画素ごとであり,この空間分解能が高いことで膜のしわなどといった小さな形状変化も計測できることが期待されています.また,カメラが1台のみで撮影できるため,撮影時にカメラを同期させてタイミングを合わせて撮影するしなくても良いことや、1台のみでいいためスペースが限られる宇宙空間でも利用しやすいことなどが利点として挙げられます.
格子投影法の理論
【地上での操作】
あらかじめ,キャリブレーションを地上にて行います.図1-1,1-2に示す基準面1と基準面2の座標を導出をして,計測空間(基準面1と基準面2に挟まれた空間)を作成します.
【軌道上での操作】
図2のように上記の地上でのキャリブレーションにより作成されたこの計測空間に,計測物を設置することで軌道上で形状を計測できます.
現在の進捗
カメラとプロジェクタのみ(図3)を用いた膜の形状計測は成功しました!
図4は解析結果です.図のカラー部分が計測範囲の膜の凹凸の様子を示しています.
現在は,実機の同じ形状のものを3Dプリンタで印刷し,カメラとプロジェクタを取り付けて3次元形状計測に挑戦中!!!以下の写真が実験中の様子です.
謝辞
本研究を進めるにあたり多大なご指導,ご助言をいただいた大阪公立大学 大学院工学研究科-岩佐貴史教授に厚くお礼申し上げます.岩佐貴史教授には,格子投影法における理論に関して丁寧かつ熱心なご指導を賜りました.ここに深く感謝いたします.