診療実績

2016年~2021年の実績

手術件数

2021年総手術件数 47例※(うち5例は生検のための手術)
2020年総手術件数 41例※(うち3例は生検のための手術)
2019年総手術件数 50例※(うち6例は生検のための手術)
2018年総手術件数 29例※(うち3例は生検のための手術)
2017年総手術件数 39例※(うち5例は生検のための手術)
2016年総手術件数 20例(うち3例は生検のための手術)

※当科関連病院の手術に大学のスタッフとして参加した手術(*)も含みます。
(*)… 2016年~2017年 5件
2018年 4件
2019年 4件
2020年 6件
2021年 7件

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年度毎の手術件症例数

新規・再発の内訳

2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
新規 41例 30例 41例 21例 7例
再発 6例 11例 9例 4例 13例
症例名 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
GBM
膠芽腫(Glioblastoma:G4)
20例 21例 22例 10例 17例 10例
DA
星細胞腫(Diffuse astrocytoma:G2)
5例 5例 8例 3例 12例 4例
乏突起膠腫(Oligodendroglioma:G2) 7例 2例 1例 4例
AA
退形成星細胞腫(Anaplastic astrocytoma:G3)
5例 9例 6例 3例 7例 2例
AO
退形成乏突起神経膠腫(Anaplastic oligodendrogliomas:G3)
4例 0例 8例 5例 0例 2例
PA
毛様細胞性星細胞腫(Pilocytic astrocytoma:G1)
2例 1例 0例 1例 1例 1例
DNT
胚芽異形成性神経上皮腫(Dysembryoplastic neuroepithelial tumor:G1)
0例 0例 1例 0例 1例 0例
SEGA
胚芽異形成性神経上皮腫 (Subependymal giant cell astrocytoma:G1)
0例 0例 0例 1例 1例 0例
Diffuse midline glioma 0例 0例 2例 1例
星芽腫(Astroblastoma) 0例 0例 0例 1例
Anaplastic PXA
退形成性多形黄色細胞腫(pleomorphic xanthoastrocytoma)
1例 0例 2例
神経節膠腫(ganglioglioma) 1例 2例
長いてんかん病歴を伴う良性神経膠腫
(Long-term epilepsy associated tumor:LEAT)
2例 1例
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2021年手術症例の内訳

特殊な手術の事例

2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
覚醒下手術 11例 9例 16例 10例 16例 6例
BCNU wafer留置 0例 0例 0例 1例 7例

膠芽腫(IDH野生型)の当院での治療成績について

2017年3月から2024年4月までの間に当院で治療をおこなった初発かつ未治療のIDH野生型神経膠腫連続72例を対象に解析を行いました。播種例や出血発症例、生検例、造影MRIが撮影できない例、diffuse midline gliomaを除いた51例中10例がIDH野生型ではあるもののNOS(これまでの分類では退形成性星細胞腫などと呼ばれていたもの)の症例でした。
膠芽腫の診断がついた41例について、治療成績を比べた所、腫瘍本体の造影剤がもれる領域の摘出率は、覚醒下手術を行った患者様で98.7%で、全身麻酔で手術を行った患者様の88.2%の摘出率と比較し、統計学的に有意に高い結果でした(図1左)。また現在では腫瘍の周りの脳を含めて摘出した方が(脳は機能があるので腫瘍の周囲の脳をとることはリスクがありますが・・・)治療効果が高いとする発表もあり、腫瘍を含む周囲のT2/FLAIR高信号域の摘出率も検討しましたが、覚醒下手術を行った患者様で40.5%と全身麻酔で手術を行った患者様で42.7%と統計学的には有意差を認めませんでした(図1右)。

 

図1

 

気になる予後ですが、全生存期間の中央値は覚醒下手術を行った患者様で24.9か月、全身麻酔で手術を行った患者様で24.7か月と有意差を認めませんでした(図2)。ただ当院での解析には腫瘍が多発している患者様も含まれていますので(通常の臨床試験には腫瘍が多発している患者様が解析に含まれていることは多くないと考えます)、まずまず良い結果と考えます。

 

図2
サンプル画像
図3
サンプル画像

 

では気になる覚醒下手術を行うメリットですが、手術前から術後6か月のADL(自分のことがどの程度自分でできるか)が覚醒下手術を行った患者様で有意に高く、術後6か月後まで高いADLを維持できていました。したがって術前にADLが保たれており、年齢も若い膠芽腫の患者様では、覚醒下手術の適応になることがあり、術後に高い腫瘍摘出率と術前の高いADLをそのまま維持できる可能性があると言えます。

また上でも述べたとおり、現在では造影剤がもれる腫瘍本体の摘出率だけではなく、造影剤がもれる腫瘍本体の残存腫瘍体積及び腫瘍周囲のT2/FLAIR高信号域の残存体積により予後が変化することが知られています。当院ではClass2(造影される腫瘍の全摘出が得られかつ周囲のT2/FLAIR高信号域の残存体積が5ml以上あるいは造影される腫瘍の残存体積が1ml以下)の患者様が41人中26人で約7割弱の方で得られ、全生存期間の中央値は25.5か月でした。またClass3(造影される腫瘍の残存体積が1mlより多い例)の患者様では全生存期間の中央値は21.6か月でした。

2005年に発表され現在の膠芽腫治療の基本となった安全かつ最大限の腫瘍摘出後の放射線化学療法ですが、その論文での全生存期間の中央値が14.6か月ですので、少しずつ治療成績が改善してきていると思います。しかしながら、膠芽腫はまだまだ再発も多く余命が短い病気ですので、当院では積極的に術中の光線力学療法、術後の電磁場治療(Novo-TTF)やオンコパネル検査などを用いて何とかより長く患者様に生きていただくために工夫しています。また患者様の希望に合わせて一緒に治療を考えていきますので、神経膠腫でお困りの方は当科にいつでも相談してください。

治療結果(退院時mRS)

2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
不変または改善 41例 39例 39例 21例 18例
悪化 6例 2例 11例 4例 2例
※2021年に退院時mRSが術前と比較し悪化した症例の腫瘍の主座は、視床1例、脳梁1例、補足運動野1例、腫瘍が広範に浸潤する従来のgliomatosis cerebri3例でした。
※2020年に退院時mRSが術前と比較し悪化した症例の腫瘍の主座は、中心前回1例、島回1例でした。
※2019年に退院時mRSが術前と比較し悪化した症例の腫瘍の主座は、視床3例、補足運動野3例、両側前頭葉3例、島回1例、左頭頂葉1例でした。
※2019年に術前のmSRが0-2であった患者さん38例のうち32例が退院時もmRS0-2とADLは自立しており、6例に悪化を認めました。
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出典:脳卒中治療ガイドライン2009

遺伝子解析の実績

当科では、2011年6月から関西中枢神経腫瘍分子診断ネットワークに症例登録を行い、神経膠腫(グリオーマ)の診断と治療に役立つ遺伝子について遺伝子解析を行っています。

  • MGMTメチル化
  • IDH1/2
  • TP53
  • TERT
  • H3F3A
  • HIST1H3B
  • その他、必要に応じて